
リズミック錠とメジコン錠の併用は問題あるか?
低血圧症のためリズミック錠<アメジニウムメチル硫酸塩>を服用中の患者が、定期受診の際に医師にせき症状を相談したところ、メジコン錠<デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物>が追加処方となった。
薬剤師はリズミック錠にはMAO阻害作用があると認識しており、中枢のセロトニン濃度を上昇させるメジコン錠との併用によりセロトニン症候群の可能性が高まると考えた。しかし、リズミック錠にMAO阻害活性はあるものの、臨床用量投与後の血中濃度はIC50値よりもかなり低いことが分かり、臨床的にはあまり意味がないことが明らかとなった。
<処方>70歳代の女性。内科クリニック。
| 1.マーズレンS配合顆粒 | 1g |
|---|---|
| オパルモン錠5μg | 2錠 |
| ユベラNカプセル100mg | 2Cap1日2回朝夕食後14日分 |
| 2.プルゼニド錠12mg | 2錠1日1回就寝前14日分 |
| 3.リズミック錠10mg | 1錠1日1回朝食後14日分 |
| 4.メジコン錠15mg | 3錠 |
| カロナール錠200 | 3錠1日3回毎食後5日分 |
<効能効果>
●リズミック錠10mg<アメジニウムメチル硫酸塩>
本態性低血圧、起立性低血圧、透析施行時の血圧低下の改善
●メジコン錠15mg・散10%<デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物>
・下記疾患に伴う咳嗽:感冒、急性気管支炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺炎、肺結核、上気道炎(咽喉頭炎、鼻カタル)
・気管支造影術および気管支鏡検査時の咳嗽
患者はかかりつけの医院に通院しており、他院への通院はない。<処方>の1.、2.、3.が定期処方であり、当薬局をかかりつけ薬局とし、薬を受け取っている。今回、定期受診の際に医師にせき症状を相談し、4.が追加となった。
薬剤師はリズミック錠にはMAO阻害作用があると認識しており、メジコン錠とは併用注意になる可能性があると判断した。即ち、メジコン錠は中枢のセロトニン濃度を上昇させるが、リズミック錠との併用によりセロトニン濃度がさらに高くなり、セロトニン症候群の可能性が高まると考えた。
そこで、添付文書を確認したところ、メジコン錠の添付文書の相互作用欄では、選択的MAO-B阻害剤が併用注意となっている。しかし、リズミック錠の添付文書には記載がない。薬剤師は、医師に対してメジコン錠の他薬への変更を依頼するべきかどうか悩んだ。
急ぎ関連文献を調べてみると、「アメジニウムは、脳、肝いずれの臓器由来のMAOに対してもほぼ同程度の阻害作用を示し、臓器の相違による阻害作用の相違は認められなかった。一方で、脳、肝いずれの組織由来のMAOにおいてもMAO-A基質としてセロトニンを用いた場合のアメジニウムの濃度—阻害曲線からのIC50は、脳で4.1μM、肝で1.8μM、MAO-B基質としてベンジラミンを用いた場合のIC50は脳で1.3mM、肝で0.75mMと2オーダー以上親和性が高いことが示された。従って、アメジニウムが、MAO-Aを選択的に阻害することが確認された。」[文献1]とあった。
アメジニウムの臨床用量投与後の血中濃度は0.1μM以下と低く、またその脳内移行性も極めて低い[文献2]と考えられることから、臨床でのアメジニウムによる中枢でのMAO阻害の可能性は低いと考察された。医師には、以上の知見を報告し、メジコン錠はそのまま処方、交付することになった。
薬剤師は、アメジニウムによるMAO阻害作用に関する知識があり、メジコン錠の添付文書の薬物相互作用欄(併用注意)には選択的MAO-B阻害剤の記載があることから、問題が生じる可能性があると感じた。一方で、リズミック錠の添付文書には併用注意の記載がないことが気になり、医師に疑義照会すべきがどうか悩んだ。
薬理作用(主作用としてだけでなく副作用としても)としてMAO阻害作用を示す薬剤は少なくない。エフピーOD錠<セレギリン塩酸塩>のように主作用として脳内MAO-B活性を不可逆かつ選択的に阻害する薬剤の場合には作用は顕著であるが、副作用としてMAO阻害作用を示す薬剤の場合には臨床的に意味がないものも存在する。今回のアメジニウム(MAO阻害活性が弱く、親和性が治療濃度よりも低い)もそれに該当すると考えられる。MAO阻害活性を評価する場合には、阻害活性(Ki値やIC50値)と臨床濃度との比較が重要である。
別の例として、トラマールOD錠<トラマドール塩酸塩>とトレリーフOD錠<ゾニサミド>のMAO阻害作用に関する薬物間相互作用についても考えてみよう。
トラマールOD錠の添付文書には、併用禁忌の薬剤として「モノアミン酸化酵素阻害剤」と記載されている。一方、トレリーフOD錠の添付文書には、作用機序の項に、「ラット及びサル線条体ミトコンドリア・シナプトソーム膜標本中のMAO活性を阻害し、その阻害作用は比較的MAOのB型に選択性を示す」との記載があるものの、相互作用欄には記載はない。
ゾニサミドのMAO阻害活性を評価するには阻害能(Ki値やIC50値)と臨床濃度(血中非結合型濃度として0.25μM)との比較が必要である。しかし、現時点では前者の報告値が得られなかったので詳細な考察ができない。
[引用文献]
1)古川清ら:メチル硫酸アメジニウムの末梢ならびに中枢モノアミン系に及ぼす作用、薬理と治療、16(4):1443-1453(1988)
2)TrautMら:Pharmacokineticsofameziniuminratanddog.Arzneimittelforschung,31(9a):1594-1604(1981)
[国試対策問題]
問題:70歳代女性。低血圧症に対してアメジニウムメチル硫酸塩錠を継続服用している。今回、せき症状に対してデキストロメトルファン臭化水素酸塩錠が追加処方された。薬剤師は、アメジニウムにMAO阻害活性があること、またデキストロメトルファンの添付文書の相互作用欄に選択的MAO-B阻害剤との併用注意に関する記載があることから、相互作用の可能性を考えた。一方で、アメジニウムの添付文書には当該相互作用に関する記載はなかった。薬剤師がこの薬物相互作用の臨床的意義を評価する際の考え方として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 アメジニウムの添付文書に相互作用の記載がないため、薬理作用や文献情報を確認することなく問題ないと判断する。
2 invitroでMAO阻害活性が報告されている場合、臨床用量での血中濃度に関わらず、併用を避けるべきと判断する。
3 MAO阻害活性を示す濃度と、臨床用量投与後に到達する血中濃度を比較して、相互作用の臨床的意義を評価する。
4 添付文書の記載だけで判断に迷う場合には、インタビューフォームや文献などの情報を確認し、必要に応じて医師に情報提供する。
5 片方の薬剤の添付文書に相互作用の記載がなければ、もう一方の薬剤の添付文書に併用注意の記載があっても、副作用症状の確認や患者への注意喚起は不要である。
【正答】3、4
1 誤:添付文書に相互作用の記載がない場合でも、薬理作用や患者背景から相互作用が疑われる場合は、文献やインタビューフォームなどを確認する必要がある。
2 誤:invitroで阻害活性が報告されていても、その濃度が臨床用量で到達する血中濃度とかけ離れていれば、臨床上の影響は小さい可能性があり、invitroでの阻害活性のみを根拠に直ちに併用を避けるべきとは判断できない。
3 正:相互作用の臨床的意義を判断するには、IC50値やKi値などの阻害活性を示す濃度と、臨床用量投与後の血中濃度を比較することが重要である。
4 正:添付文書の記載だけで判断が難しい場合は、インタビューフォームや文献などを確認し、必要に応じて医師へ情報提供する。
5 誤:片方の添付文書に記載がない場合でも、もう一方に併用注意の記載がある場合や薬理作用からリスクが疑われる場合は、情報収集を行い、必要に応じて副作用症状の確認や患者への注意喚起を行う。
*本稿では、全国各地において収集したヒヤリ・ハット・ホット事例について、要因を明確化し、詳細に解析した結果を紹介します。事例の素材を提供していただいた全国の薬剤師の皆様に感謝申し上げます。

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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