Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例53

全自動分包機に同じ大きさの規格単位違いを充填しそうになった

ヒヤリした!ハットした!

全自動分包機のシグマート錠 5mgのカセットに、シグマート錠 2.5mgを誤って補充しそうになった。

<処方>90歳代の女性。病院の循環器内科。処方オーダリング。

シグマート錠 2.5mg 3錠 1日3回 毎食後 14日分
メチコバール錠 500μg 3錠 1日3回 毎食後 14日分

*他に1日1回朝食後および1日1回昼食後の薬剤が処方され、一包化していた。

<効能効果>

●シグマート錠 2.5mg・5mg<ニコランジル>
狭心症

どうした?どうなった?

この薬局では、一包化調剤の頻度の高い50品目は全自動分包機のカセットに充填している。一方、50品目以外の薬剤は調剤の度にPTPシートから取り出して、一包化調剤を行っている。シグマート錠 5mgは使用頻度が高いのでカセットに入っているが、シグマート錠 2.5mgは入っていない。
今回、シグマート錠 2.5mgを誤って一包化してしまったため、再使用しようとシグマート錠 2.5mgをばらしたが、全自動分包機のシグマート錠 5mgのカセットに補充しそうになった。しかし、補充に立ち会っていた別の薬剤師がミスに気がつき、混入には至らなかった。

なぜ?

シグマート錠 2.5mgは全自動分包機のカセットに入れる対象にはなっていないことを認識していなかった。
今回のケースのように再補充する際には、ラベルの確認に加え、実際に入っている薬剤の刻印をチェックすることにしていたが、正確なチェックができていなかった。すなわち、シグマート錠 2.5mgと5mg錠とを比較すると、刻印は異なる(5mg錠には“5”の刻印はあるが、2.5mg錠には“2.5”の刻印はない)が、錠剤が小さく判別が難しかった(しかし、5mg錠には割線が入っているが、2.5mg錠には割線は入っていない)。また、規格の異なる医薬品は、大きさや色や形状が異なっていることが当然であると思いこんでいたが、シグマート錠 2.5mgと5mg錠の直径(5mm)と厚み(2mm)は全く同一であった。

ホットした!

全自動分包機のカセットに入れる薬剤は、それぞれ規格と錠剤の大きさを確認しておく。
誤って一包化した薬剤を再利用する際には、刻印を確認して慎重に行い、十分な監査を実施する。
全自動分包機では、誤調剤を防ぐために大きさが異なる薬剤はカセットを通過できない仕組みになっているが、今回のケースのように大きさ(直径、厚さ)が全く同一であれば、このエラーは防げない。また、混入すると発覚し難いため、十分な注意が必要である。

もう一言

類似例を以下に示す。

事例:20歳代の男性への処方を調剤しているとき、自動分包機にヒダントール錠 25mgを充填するところ、誤ってヒダントールF配合錠を充填してしまった。機械のエラー音により気づき、充填し直した。薬局に在庫している薬剤の規格等を把握していないことが原因である。ダブルチェックを行う等、注意深くチェックする必要がある。なお、ヒダントールの錠剤には以下の5剤がある。

ヒダントール錠 25mg :直径7.0mm、厚さ3.0mm
ヒダントール錠 100mg:直径9.0mm、厚さ3.4mm
ヒダントールD配合錠 :直径9.1mm、厚さ3.8mm
ヒダントールE配合錠 :直径9.1mm、厚さ3.8mm
ヒダントールF配合錠 :直径9.1mm、厚さ3.8mm

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2017年9月25日

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