Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例86

ドパコール配合錠をドパゾール錠で誤処方したと勘違い

ヒヤリした!ハットした!

薬剤師は、ネオドパストン配合錠L100のジェネリック医薬品であるドパコール配合錠L100<レボドパ・カルビドパ水和物>の存在を知らず、ドパゾール錠200mg<レボドパ錠>を調剤・投薬してしまっていたと勘違いした。医師に報告したところ、厳しい注意を受けたが、実際は正しく調剤が行われていた。

<処方>70歳代後半の女性。病院の神経内科。オーダリング/印字出力。

ドパコール配合錠L100 3錠 1日3回 毎食後 56日分
他3種類

<効能効果>

●ネオドパストン配合錠L100・L250<レボドパ・カルビドパ>
●ドパコール配合錠L50・L100・L250<レボドパ・カルビドパ>
パーキンソン病、パーキンソン症候群

●ドパゾール錠200mg<レボドパ>
パーキンソン病・パーキンソン症候群に伴う下記の諸症状の治療及び予防
寡動~無動、筋強剛、振戦、日常生活動作障害、仮面様顔貌、歩行障害、言語障害、姿勢異常、突進現象、膏様顔、書字障害、精神症状、唾液分泌過剰

どうした?どうなった?

患者の希望により1年以上前から、ネオドパストン配合錠L100<レボドパ・カルビドパ水和物>の代わりに、ジェネリック医薬品であるドパコール配合錠L100を交付していた。

ある時、投薬担当の薬剤師は、瞬時にドパコールをレボドパ単剤のドパゾール錠200mg<レボドパ>だと勘違いして、ネオドパストン配合錠からの代替としては正しくないと判断してしまった。

薬局内で相談後、医師に「これまでレボドパとして力価が1/5量相当のジェネリックで交付していました」と報告し、厳しい注意を受けた。
しかし、実際には等力価のジェネリック医薬品への代替で交付しており、ドパコール配合錠とドパゾール錠が別物であることに気づいた薬剤師は、医師に訂正とお詫びを行った。

なぜ?

投薬担当の薬剤師は、レボドパ単剤のドパゾール錠の存在は認知していたが、ネオドパストン配合錠のジェネリック医薬品であるドパコール配合錠の存在を知らなかった。そのため、ドパコールを見て、薬名類似からドパゾールだと勘違いしてしまった。

一方、相談を受けた薬剤師は、レボドパ単剤と配合剤での力価換算のことや、逆にドパゾール錠の存在を知らなかったために、投薬担当の薬剤師の言っている内容があまり理解できていなかった。そのため、2人の薬剤師の間で十分な確認がなされないまま、医師に電話してしまった。

ホットした!

類似薬名が存在することを十分に認識して、一文字ずつ薬剤名を突き合わせ、正確な情報で調剤業務を行う。自分の知識は不十分であると常に意識し、思い込みで処方箋を読まないことである。
比較的汎用医薬品であるレボドパ関連の薬剤については、現在市販されている医薬品をリストアップして覚える。

もう一言

「ドパコール」と「ドパゾール」の類似度
薬名の類似度を数値的に表す指標として、東京大学大学院薬学系研究科・育薬学講座などでは「m2-vwhtfrag」を開発している。この指標によると、「ドパコール」と「ドパゾール」の類似度(m2-vwhtfrag)は1.37と計算される。この値が0.456よりも大きいと、薬名類似により医薬品の取り違えが生じる可能性が高いと予測される。

(「ルクライ」薬名類似度検索システム)

※医薬品の効能・効果、用法・用量、使用上の注意等の詳細につきましては、各製品の最新の添付文書をご参照ください。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2019年2月25日

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