Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例74

麻薬と非麻薬があるコデインリン酸塩の注意点

ヒヤリした!ハットした!

処方されたコデインリン酸塩錠20mg「第一三共」<コデインリン酸塩水和物>は劇薬、麻薬、処方箋医薬品であるが、処方箋に麻薬施用者の免許証番号、患者住所の記載がなかった。

<処方1>60歳代の男性。Aクリニック。疑義照会前。

コデインリン酸塩錠20mg「第一三共」 3錠 1日3回 毎食後 5日分
アレグラ錠60mg 2錠 1日2回 朝夕食後 5日分

<処方2>疑義照会後

コデインリン酸塩酸1%「第一三共」6g 1日3回 毎食後 5日分
アレグラ錠60mg 2錠 1日2回 朝夕食後 5日分

<効能効果・用法用量>

●コデインリン酸塩錠20mg「第一三共」
各種呼吸器疾患における鎮咳・鎮静
疼痛時における鎮痛
激しい下痢症状の改善

通常、成人には、コデインリン酸塩水和物として、1回20mg(1錠)、1日60mg(3錠)を経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

●コデインリン酸塩酸1%「第一三共」
各種呼吸器疾患における鎮咳・鎮静
疼痛時における鎮痛
激しい下痢症状の改善

通常、成人には、1回2g、1日6gを経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

どうした?どうなった?

患者は咳、皮膚疾患に伴うそう痒などでAクリニックを受診し、処方1の処方箋を持って当薬局に訪れた。患者に処方内容について確認したところ、ひどい咳嗽はあるが、麻薬を処方されたことについて説明を受けていないとのことであった。更に、患者は自分に処方された薬が麻薬であると聞いて驚いていた。
医師に疑義照会した結果、処方2に変更となった。

なぜ?

医師はコデインリン酸塩酸散1%を処方するつもりで、誤って同一有効成分のコデインリン酸塩錠20mgを処方してしまったと考えられる。その背景には、医師は、この患者は粉薬の服用が不得意であると認識していたことも要因の一つであろう。

ホットした!

局方品(日本薬局方収載医薬品)であるコデインリン酸塩酸散1%は非麻薬だが、コデインリン酸塩錠20mg、コデインリン酸塩散10%、コデインリン酸塩水和物原末などは麻薬扱いとなることを十分注意して、処方箋チェックを行う。

もう一言

本邦では、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)および麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令(平成二年政令第二百三十八号)において、『麻薬』が指定されている。その中で、「千分中十分以下のコデイン、ジヒドロコデイン又はこれらの塩類を含有する物であって、これら以外の麻薬の該当する物を含有しないもの」(すなわち、濃度が1%以下のコデイン、ジヒドロコデイン)は『家庭麻薬』と定義されており、法律上の麻薬ではない。

都道府県知事から免許を受けた麻薬施用者のみが『麻薬』を記載した処方箋を交付することができ、通常の処方箋記載事項の他に、麻薬施用者の免許証番号、患者住所などを記載する必要がある。『家庭麻薬』は法律上の麻薬ではないため、通常の処方箋の記載でよい。

以下に、コデインリン酸塩水和物およびジヒドロコデインリン酸塩の一覧を示す。

一般名 販売名 剤形・規格 濃度 麻薬・非麻薬
コデインリン酸塩水和物 コデインリン酸塩水和物「タケダ」原末
コデインリン酸塩水和物「第一三共」原末
原末 100% 麻薬
コデインリン酸塩散10%「タケダ」
コデインリン酸塩散10%「第一三共」
散10% 10% 麻薬
コデインリン酸塩錠20mg「タケダ」
コデインリン酸塩錠20mg「第一三共」
錠20mg 13% 33% 麻薬
コデインリン酸塩散1%「タケダ」
コデインリン酸塩散1%「第一三共」
コデインリン酸塩散1%「イセイ」
コデインリン酸塩散1%「シオエ」
コデインリン酸塩散1%「タカタ」
コデインリン酸塩散1%「マルイシ」
リン酸コデイン散1%「イワキ」
リン酸コデイン散1%「コトブキ」
リン酸コデイン散1%〈ハチ〉
リン酸コデイン散1%「フソー」
リン酸コデイン散1%「ホエイ」
リン酸コデイン散1%「メタル」
リン酸コデイン散1%「日医工」
散1% 1% 非麻薬
コデインリン酸塩錠5mg「シオエ」
リン酸コデイン錠5mg「ファイザー」
錠5mg 1% 非麻薬
ジヒドロコデインリン酸塩 ジヒドロコデインリン酸塩「タケダ」原末
ジヒドロコデインリン酸塩「第一三共」原末
原末 100% 麻薬
ジヒドロコデインリン酸塩散10%「タケダ」
ジヒドロコデインリン酸塩散10%「第一三共」
散10% 10% 麻薬
ジヒドロコデインリン酸塩散1%「タケダ」
ジヒドロコデインリン酸塩散1%「第一三共」
ジヒドロコデインリン酸塩散1%「イセイ」
ジヒドロコデインリン酸塩散1%「シオエ」
ジヒドロコデインリン酸塩散1%「タカタ」
ジヒドロコデインリン酸塩散1%「マルイシ」
リン酸ジヒドロコデイン散1%〈ハチ〉
リン酸ジヒドロコデイン散1%「フソー」
リン酸ジヒドロコデイン散1%「ホエイ」
リン酸ジヒドロコデイン散1%「メタル」
リン酸ジヒドロコデイン散1%「日医工」
散1% 1% 非麻薬

※医薬品の効能・効果、用法・用量、使用上の注意等の詳細につきましては、各製品の最新の添付文書をご参照ください。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2018年8月10日

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