Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例166

ウルティブロ吸入後のうがいは必要?

ヒヤリした!ハットした!

ウルティブロ<グリコピロニウム臭化物/インダカテロールマレイン酸塩>を吸入後にうがいが必要かを患者から尋ねられたが、薬剤師は把握していなかったため説明に手間取ってしまった。

<処方1>80歳代の男性。総合病院の呼吸器外科。

ウルティブロ吸入用カプセル 56カプセル 1日1回 1回1カプセル吸入

<効能効果>

●ウルティブロ吸入用カプセル<グリコピロニウム臭化物/インダカテロールマレイン酸塩>
慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解(長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)

どうした?どうなった?

ウルティブロ吸入用カプセルを継続使用中の患者である(当薬局で調剤・交付しているのは本患者だけであり、薬剤師はウルティブロ吸入用カプセルにあまり馴染みがない)。薬剤師は患者に、本剤の使用感などについて確認した。

薬剤師:「口の中が気になることはありますか?」
患者:「看護師から吸入後にうがいをするよう言われています。その方がいいのでしょう?」

患者から吸入後のうがいについて質問されたが、薬剤師はウルティブロ吸入用カプセルの指導箋に、吸入後うがいをする旨の記載があるか把握しておらず説明に手間取ってしまった。
その後、薬剤師は患者と共に、ウルティブロの指導箋にはうがいをする旨の記載が無いことを確認したが、口渇の副作用が知られていること、うがいはその対策として行った方が良いことを説明し、患者は納得した。

なぜ?

ウルティブロにはステロイドが含有されていないため、吸入後のうがいの必要性がなく、患者指導箋に「うがいをするように」との記載がないと思われる。

病院の看護師は、他のステロイド含有の吸入薬の情報を述べたものと考えられる。即ち、(1)本剤にはステロイドが含有されているためうがいは必須である、或いは(2)うがいは吸入薬を使用後の一般的な行為である、と思い込んでいた可能性がある。

薬剤師は、本剤にはステロイド剤は含有されていないが、抗コリン作用があるため口渇がありうるだろうと漠然と考えており、情報の掘り下げを怠っていた。

ホットした!

取り扱うことが少ない薬剤でも患者指導箋を熟読する。服薬指導上の要点を把握するだけでなく、添付文書や患者指導箋に書かれていない事でも注意すべき点が無いか確認する。

もう一言

ステロイド剤を含有する慢性閉塞性肺疾患治療薬には以下がある。

  • ・アドエア250ディスカス・同125エアゾール<フルチカゾンプロピオン酸エステル・サルメテロールキシナホ酸塩>
  • ・レルベア100エリプタ<フルチカゾンフランカルボン酸エステル・ビランテロールトリフェニル酢酸塩>
  • ・テリルジー100エリプタ<フルチカゾンフランカルボン酸エステル・ビランテロールトリフェニル酢酸塩・ウメクリジニウム臭化物>
  • ・シムビコートタービュヘイラー<ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩>
  • ・ビレーズトリエアロスフィア<ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩・グリコピロニウム臭化物>

これらの薬剤では、『口腔カンジダ症又は発声障害の予防のため、本剤吸入後にうがいを実施するよう患者を指導すること。ただし、うがいが困難な患者には、うがいではなく口腔内をすすぐよう指導すること。』の注意が喚起されている。

[参考資料]

アドエア250ディスカス・同125エアゾール 医薬品インタビューフォーム
(グラクソ・スミスクライン株式会社 2021年2月改訂)

レルベア100エリプタ 医薬品インタビューフォーム
(グラクソ・スミスクライン株式会社 2022年2月改訂)

テリルジー100エリプタ 添付文書
(グラクソ・スミスクライン株式会社 2020年11月改訂)

シムビコートタービュヘイラー 添付文書
(アストラゼネカ株式会社 2020年1月改訂)

ビレーズトリエアロスフィア 添付文書
(アストラゼネカ株式会社 2022年3月改訂)

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2022年7月14日

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