Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例106

ラコールNF配合経腸用液コーヒーフレーバーのカフェイン含有の認識不足

ヒヤリした!ハットした!

薬剤師は、ラコールNF配合経腸用液<たん白アミノ酸製剤>のコーヒーフレーバーには、単にコーヒー風味がついているのみだと思い込み、カフェインを含有しているとは思わなかった。

<処方>70歳代の女性。病院の内科。処方オーダリング。

ラコールNF配合経腸用液 1200mL 1日3回 28日分

*既往歴は胃癌、肺癌、大腸癌である。
*本患者は本剤を経口摂取することが可能である。

<効能効果>

●ラコールNF配合経腸用液<たん白アミノ酸製剤>
一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用する。

どうした?どうなった?

ラコールNF配合経腸用液が初めて処方された患者にフレーバーの希望を聞いたところ、「コーヒーは好きだが、カフェインは控えるように医師から言われている。」とのことだった(理由は不明であるが、おそらくコーヒー飲料などに含まれるカフェイン量を想定したものと思われる)。

薬剤師は、たん白アミノ酸製剤のフレーバーは風味づけ(香料)のみで、コーヒー(カフェインを含む)は含まれていないだろうと思ったが、念のために添付文書を確認したところ、コーヒーフレーバーのみカフェインが含有されていることが判明した。

患者はカフェインを絶対に摂取してはいけないという訳ではなく、また含有量がかなり少量であるためコーヒーフレーバーとバナナフレーバーを半分ずつ渡した。

なぜ?

本剤の性状は、微茶白色の乳液で、わずかに特有の香り(ミルク様、コーヒー様、バナナ様、コーン様、抹茶様)があり、味はわずかに甘い。

薬剤師は、フレーバー(香料)という言葉から、コーヒー成分(カフェインとして200mLパウチ中に約0.2mg含有)が入っているとは思わなかった。

ホットした!

フレーバーなど添加物の成分、特徴もしっかりと把握しておく必要がある。

もう一言

たん白アミノ酸製剤において、コーヒー味の香料、フレーバーなどの組成を表にまとめた。

表.コーヒー味の香料、フレーバーの組成一覧。

薬剤名 香料、フレーバー等の組成
ラコールNF配合経腸用液
(コーヒーフレーバー)
香料(エチルバニリン、バニリン、プロピレングリコール)
※カフェイン(約0.2mg/200mLパウチ)
エンシュア・リキッド
(コーヒー味)
香料(バニリン、プロピレングリコール)
エンシュアH
(コーヒー味)
香料(バニリン、エチルバニリン、プロピレングリコール)
アミノレバンEN配合散
(コーヒー味)
香料
エレンタール配合内用剤
エレンタールP乳幼児用配合内用剤
へパンED配合内用剤
(コーヒー味)
<フレーバー>
グラニュー糖、コーヒーエキスパウダー、香料、甘味料(ステビア)
※カフェイン(最大約83mg/包)

*通常、缶コーヒー(150-190mL)には80~190mgのカフェインが含まれる

(添付文書、インタビューフォーム、メーカーに問い合わせにより作成)

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2019年12月17日

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