Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例118

ノルスパンテープの貼付期間の説明不足

ヒヤリした!ハットした!

患者は、1週間貼り続けるべきであるノルスパンテープ<ブプレノルフィン>を貼付した次の日に剥がしていたため、十分な鎮痛効果が得られていなかったと思われる。

<処方1>70歳代の女性。病院の整形外科。処方オーダリング。
1月12日

ノルスパンテープ5mg 2枚 1月13日と1月20日に貼付

<処方2>
1月26日

ノルスパンテープ5mg 2枚 1月26日と2月2日に貼付

*1月26日には、本来であれば貼付しているはずであったが、貼付していなかったため上記のような処方になっている。

<効能効果>

●ノルスパンテープ5mg・10mg・20mg<ブプレノルフィン>
非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記疾患に伴う慢性疼痛における鎮痛
・変形性関節症
・腰痛症

どうした?どうなった?

患者は高齢で、いつも本人のみの来局だったが、服薬指導時の様子から、十分な理解力があると薬剤師は思っていた。
1月12日に初めてノルスパンテープが2週間分(2枚)処方された。患者は、ノルスパンテープを指定された日に貼付したが、1日で剥がしていた。
そのため、ノルスパンテープの十分な効果が得られていなかったと思われる。

本来は、1月12日の診察の翌日に1枚貼付し、7日後の20日にそれを剥がして直ぐにもう1枚を貼付する予定であり、次の診察日の26日には前回分を貼付しているはずであった。しかし、26日の診察の際にテープが貼付されておらず、医師がそのことに気づき、患者の不適正使用が発覚した。その後、患者は薬剤交付後に自宅で直ちに1枚貼付することになった。

なぜ?

ノルスパンテープの用法及び用量は「通常、成人に対し、前胸部、上背部、上腕外部又は側胸部に貼付し、7日毎に貼り替えて使用する。初回貼付用量はブプレノルフィンとして5mgとし、その後の貼付用量は患者の症状に応じて適宜増減するが、20mgを超えないこと。」となっている。

薬剤師は1度の貼付で1週間貼り続けておくように説明をしたつもりであったが、患者には正確に伝わっていなかった。「1週間に1度貼る」との説明では不十分であり、「1週間に1度貼り、それを1週間貼り続けておく」などと説明するべきであった。

また、薬袋には処方の指示通りに貼付日を記載したが、「7日毎に貼り替えて」とは記載していなかった。
患者は高齢であるため、家族にも上記の説明をするべきであった。
患者には貼り薬と言えば肩こりや筋肉痛に使う貼付剤のイメージしかなく、1日で剥がすものであると思いこんでいた。

ホットした!

「貼り薬は1日だけ貼付し、次の日は剥がす」と思い込んでいる患者がいることを認識する。「1週間に1度貼る」ではなく「1週間に1度貼り、それを1週間貼り続けておく」と説明する。

使用法を説明したあとに正確に理解しているかの念押しチェックを行う。
使用法を大きく記載した患者指導せん(貼付日とその後の状態が図示されたイラスト)を作成し、患者に交付する。

このような使用法の特殊な薬剤や、不適正使用が危険な薬剤に関しては、使用期間中に電話をするなどして適正に使用できているかのチェックを行うようにする(電話モニタリングによるフォローアップ)。

もう一言

健康成人(日本人)における単回貼付試験において血中濃度が測定されている。健康成人(27例)に本剤5~20mgを単回7日間貼付したときの血漿中ブプレノルフィン濃度は貼付開始約72時間で定常状態に達し、本剤貼付後168時間(本剤除去)まで安定した推移を示した(ノルスパンテープの医薬品添付文書より)。従って、初回貼付72時間後までにブプレノルフィンの血中濃度が徐々に上昇するため、鎮痛効果が得られるまで時間を要すると考えられることから、1日で剥がすことは不適当である。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2020年6月10日

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