Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例41

すぐ学校に行けるようになるインフルエンザの薬に変えてほしい

ヒヤリした!ハットした!

来局した患者の母親がリレンザを見て、「すぐ学校に行けるようになる薬に変えてほしい。」と言われた。

<処方1>15歳の女性。内科診療所。印字出力/処方オーダ。2月14日。

バナン錠 100mg 2錠 1日2回 朝夕食後 3日分
チスタニン糖衣錠 100mg 3錠 1日3回 毎食後 3日分
リレンザ 20BL 1日2回 1回2吸入

<効能・効果、用法・用量>

●リレンザ(ザナミビル水和物)

A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防

1.治療に用いる場合
通常、成人及び小児には、ザナミビルとして1回10mg(5mgブリスターを2ブリスター)を、1日2回、5日間、専用の吸入器を用いて吸入する。
2.予防に用いる場合
通常、成人及び小児には、ザナミビルとして1回10mg(5mgブリスターを2ブリスター)を、1日1回、10日間、専用の吸入器を用いて吸入する。

●イナビル吸入粉末剤20mg(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)

A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防

1.治療に用いる場合
成人:ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。
小児:10歳未満の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを単回吸入投与する。10歳以上の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。
2.予防に用いる場合
成人:ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。また、20mgを1日1回、2日間吸入投与することもできる。
小児:10歳未満の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを単回吸入投与する。10歳以上の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。また、20mgを1日1回、2日間吸入投与することもできる。

どうした?どうなった?

この家庭では2月12日よりインフルエンザウイルスの家庭内感染が続いており、最初に患者の父に“リレンザ”が処方され当該薬局で調剤した。翌日に、休日・夜間在宅医によって、妹に院内で“イナビル吸入粉末剤20mg”が処方され、さらに翌2月14日に、当該患者に上記内容が処方された。
当該薬局で患者の父にリレンザの吸入指導を行った際、熱が下がってもリレンザは5日間最後までしっかり吸入するように指導していた。一方、休日・夜間在宅医の診察を受けた患者の妹は、1回吸入後、服薬はこれで終わりといわれ、また、すぐに熱が下がるので心配ない旨の説明を受けていた。

なぜ?

以上の経緯から、患者の母はインフルエンザが治癒するのにリレンザは5日間かかり、イナビルは1日間ですむと勘違いした。また、インフルエンザによる出席停止は、集団生活における感染予防のために行われていることをあまり重要視しておらず、イナビルによる治療によって解熱すれば、すぐに登校してもかまわないと誤解していた。

ホットした!

従来のインフルエンザ治療では、出席停止期間≒療養期間≒服薬期間という認識であったが、イナビルの場合はこれが当てはまらない。イナビルは1回で服薬が終わり、インフルエンザが完治すると患者が誤解する可能性があることを認識すべきであり、出席停止の期間や療養の仕方などについて、どのような説明を受けているか確認し、必要に応じて説明を加える必要がある。

もう一言

インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)発症における「登校(園)基準」

学校保健安全法では、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで。幼児においては、発症した後5日を経過し、かつ解熱した後3日を経過するまで」が出席停止の目安とされている。抗ウイルス薬によって早期に解熱した場合も感染力は残るため、発症5日を経過するまでは欠席が望ましく、咳嗽や鼻汁が続き、感染力が強いと考えられる場合は、さらに長期に及ぶ場合もある。ただし、病状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認められた場合は、その限りではない。

「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」、日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会、2015年7月改訂版

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2017年3月30日

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