Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例75

規格単位変更を医師に提案 患者の窓口負担金を減額

ヒヤリした!ハットした!

処方箋では、スプリセル錠<ダサチニブ>20mgが1日1回5錠で記載されていたが、別の規格単位製剤の50mg錠を1日1回2錠にすると薬価が安くなることが判明し、医師に問い合わせて処方変更となった。

<処方1>30歳代の男性。病院の血液内科。処方オーダリング。

スプリセル錠20mg 5錠 1日1回 朝食後 90日分

<効能効果・用法用量>

●スプリセル錠20mg・50mg
1.慢性骨髄性白血病
(1)慢性期
通常、成人にはダサチニブとして1日1回100mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回140mgまで増量できる。
(2)移行期又は急性期
通常、成人にはダサチニブとして1回70mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1回90mgを1日2回まで増量できる。
2.再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病
通常、成人にはダサチニブとして1回70mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1回90mgを1日2回まで増量できる。
*効能/効果に応じた規格単位選択の規定はない。

どうした?どうなった?

処方箋(処方1)は薬局近くの病院の血液内科からのものだったが、これまでに当薬局でスプリセル錠20mgを調剤したことは殆どなく、在庫していなかった。
調剤した薬剤師は、通常の在庫不足時の対応として、スプリセル錠20mgを注文しようとした。その際、添付文書にて包装単位を確認したところ、20mg錠の他に50mg錠が存在することに気づいた。患者負担を考慮し安い方がいいのではと考え、薬価を調べた。

スプリセル錠の薬価(平成30年4月改定)は、20mg錠が4,008.7円、50mg錠が9,477.5円となっている。今回の処方の場合、1日あたりの薬剤料は、20mg錠を使用した場合で2,004点、50mg錠を使用した場合は1,895点となり、109点の差がでる。これは3割負担の場合、90日分処方であることから、109点×90日分×0.3で約3万円の窓口負担の差が出ることとなる。

患者には規格の違いにより窓口負担額に差が出ることを説明して了承を得たのち、服用錠数の減少、窓口負担額の減少の観点から、医師に規格変更を申し出た。
薬剤師の提案通り、50mg錠1回2錠に処方変更となった(処方2)。

<処方2>

スプリセル錠50mg 2錠 1日1回 朝食後 90日分

なぜ?

医師は、院内採用が20mg錠だったため、あまり考えず処方したとのことであった。また、20mg錠の他に50mg錠があること、規格の違いによる薬価の差が問題になるケースがあることをあまり認識していなかったと考えられる。

ホットした!

複数規格ある医薬品では、同一服用量で比較した場合、薬剤料に差がある場合があることを認識しておく。とりわけ薬価が高い医薬品ではその差額も大きくなることがある点に注意する。

もう一言

一方で、規格単位による効能/効果が相違している薬剤に注意する必要がある。下記に、サムスカ錠とリクシアナ錠の例を示す。

例1:サムスカ錠

効能・効果 錠7.5mg 錠15mg 錠30mg 顆粒1%
心不全における体液貯留
肝硬変における体液貯留
常染色体優性多発性のう胞腎

○:効能あり、-:効能なし

例2:リクシアナ錠

効能・効果 錠15mg 錠30mg 錠60mg
非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制 ○※
静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制 ○※
下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制

○:効能あり、-:効能なし、※ワルファリンへの切り替え時

※医薬品の効能・効果、用法・用量、使用上の注意等の詳細につきましては、各製品の最新の添付文書をご参照ください。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2018年8月29日

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