Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例33

スーグラ錠が製剤変更になって服用できなくなった患者

ヒヤリした!ハットした!

患者がスーグラ錠を元の錠剤に戻してほしいと訴えた。

<処方1>70歳の男性。病院の内科。オーダー/印字出力。

スーグラ錠 50mg 1錠 1日1回 朝食後 14日分
ディオバン OD錠 40mg 1錠 1日1回 朝食後 14日分

<効能効果>

スーグラ錠 25mg・50mg(イプラグリフロジン L-プロリン)2型糖尿病

どうした?どうなった?

スーグラ錠が製剤変更になったので、その旨を患者の代理人(義理の娘)に良く説明した。その翌日、薬局に出勤すると、当該患者が薬局の前で待っており、「たぶん同じ薬だと思うけれど、自分は神経質なので、前の錠剤に戻して欲しい。」と訴えた。しかし、近々、錠剤がすべて新しい薬に変更になるので、元に戻せないことを説明した。また、効き目は全く変わりがないことも説明したところ、患者はしぶしぶ納得したようだった(その後、きちんと服用できているかどうかは不明である)。

なぜ?

製剤変更時に、代理人にしか直接説明していなかった。したがって、患者がどのような反応を示すかをキャッチできず、患者の不安を予測できなかった。

また、スーグラ錠の錠剤自体の大きさが小さく変わり、錠剤の印字が識別コードから製品名と含量の両面表示となった。患者の目から見れば「全く別物」としか写らず、不安を抱くのではないかという危険性を予測できなかった。

ホットした!

錠剤や包装変更時の患者への説明では、「今回から変更になりました。」と簡単に済ませるのではなく、カウンターで現物を見せて、患者の反応を見ながら必要に応じた説明を加えるようにする。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2016年11月28日

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