Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例11

プレドニゾロンが6mgから10mgに増量、患者は9mgのみを誤服薬

ヒヤリした!ハットした!

関節リウマチの治療中の患者であった。当初プレドニゾロン6mg(5mg×1錠と1mg×1錠)<処方1>を服用していたが、疼痛が増したため受診予約日よりも早めに受診し、プレドニゾロン4mg(1mg×4錠)が増量された<処方2>。このような経緯で、医師は合計して「10mg」服用するように指示していたが、実際は患者に上手く伝わっておらず、患者は、5mg錠を1錠と、新たに処方された1mg錠を4錠の合わせて「9mg」を服用していたことが今回発覚した。

<処方1>60歳代の女性。病院の整形外科、オーダー/印字出力

ハイペン錠 200mg 2錠 1日 2回 朝夕食後 35日分
セルベックス細粒 10% 1g 1日 2回 朝夕食後 35日分
リウマトレックスカプセル 2mg 2Cap 1日 1回 朝食後 5日分(木曜日)
リウマトレックスカプセル 2mg 1Cap 1日 1回 夕食後 5日分(木曜日)
リウマトレックスカプセル 2mg 2Cap 1日 1回 朝食後 5日分(金曜日)
フォリアミン錠 5mg 1錠 1日 1回 朝食後 35日分
プレドニン錠 5mg 1錠 1日 1回 朝食後 35日分
プレドニゾロン錠 1mg 1錠 1日 1回 朝食後 35日分

※プレドニゾロン 1日量:6mg

<処方2(前回)>整形外科、オーダー/印字出力

プレドニゾロン錠 1mg 4錠 1日1回 夕食後 35日分

※プレドニゾロン 1日量:10mg(処方1に今回4mg追加により)

<処方3(今回)>整形外科、オーダー/印字出力

ハイペン錠 200mg 2錠 1日 2回 朝夕食後 35日分
セルベックス細粒 10% 1g 1日 2回 朝夕食後 35日分
リウマトレックスカプセル 2mg 2Cap 1日 1回 朝食後 5日分(木曜日)
リウマトレックスカプセル 2mg 1Cap 1日 1回 夕食後 5日分(木曜日)
リウマトレックスカプセル 2mg 2Cap 1日 1回 朝食後 5日分(金曜日)
フォリアミン錠 5mg 1錠 1日 1回 朝食後 35日分
プレドニン錠5mg 1錠 1日1回 朝食後 35日分
プレドニゾロン錠 1mg 3錠 1日1回 朝食後 35日分
プレドニゾロン錠 1mg 2錠 1日1回 夕食後 35日分 (*)

※プレドニゾロン 1日量:10mg
※最終的に(*)は「1錠1日1回」へ変更となった。

<効能効果>

  • プレドニン錠 5mg、プレドニゾロン錠 1mg
    以下の領域の疾患に使用される。
    1. 1. 内科・小児科領域:(1) 内分泌疾患、(2) リウマチ疾患、(3) 膠原病、(4) 川崎病の急性期(重症であり,冠動脈障害の発生の危険がある場合)、(5) 腎疾患、(6) 心疾患、(7) アレルギー性疾患、(8) 重症感染症、(9) 血液疾患、(10) 消化器疾患、(11) 重症消耗性疾患、(12) 肝疾患、(13) 肺疾患、(14) 結核性疾患(抗結核剤と併用する)、(15) 神経疾患、(16) 悪性腫瘍、(17) その他の内科的疾患
    2. 2. 外科領域
    3. 3. 整形外科領域
    4. 4. 産婦人科領域
    5. 5. 泌尿器科領域
    6. 6. 皮膚科領域
    7. 7. 眼科領域
    8. 8. 耳鼻咽喉科領域
  • 関節リウマチにおける関節局所の鎮痛

どうした?どうなった?

前回受診の際、患者の疼痛が悪化したという訴えにより、服用中のプレドニゾロン6mgにプレドニゾロン4mg(1mg×4錠)が追加処方となった(処方2)。患者はプレドニン錠5mgの服用はそのまま継続したが、追加となったプレドニゾロン錠1mgについては追加となった4錠のみ服用し、服用中であった1錠は中止してしまった。結果、医師が意図した10mgではなく、9mgのみを服用していた。

今回、患者は前回から服用している量(実際は、プレドニゾロン9mg)で改善効果があったことを医師に伝えたため、医師は10mgをきちんと服用しての結果と思い、処方意図のプレドニゾロン量10mgで処方せんを交付した。 投薬した薬剤師は医師に疑義照会を行い、患者は前回処方以降にプレドニゾロン9mgしか服用していなかったことを伝えた。結果、(*)のプレドニゾロン錠1mg 2錠 1日1回 夕食後の処方が1錠へと用量変更となり、前回から間違って服用していたのと同量の9mgの処方となった。

なぜ?

患者は、すでに服用していたプレドニン錠5mgはそのままで、プレドニゾロン錠1mgは、新たに処方された4mgに変更すると思い込んでしまった。そのため5mg + 4mg = 9mgとなってしまった。医師はプレドニゾロン錠1mgを増量するときに、具体的にどう服用するか説明しなかった。もし、「今服用している5mg錠の1錠と1mg錠の1錠に加えて、今回の1mg錠の4錠、即ち合計で5mg + 1mg + 4mg = 10mgを服用してください。」と説明していれば、飲み間違いはなかったかもしれない。 薬剤師も、上記の様な具体的な服用方法を患者に説明していなかった。説明していれば、患者の誤解が明らかになった可能性がある。また、薬剤師が推測した服薬量と患者の主張する服薬量が乖離している場合には、疑義照会して確認する必要がある。

ホットした!

薬歴より追加処方であることが推測された場合、患者に、服用方法及び前回との用量の変化について、医師から説明を受けているかを必ず確認しなければならない。更に、薬剤師が推測した服薬量との乖離がある場合には、必ず疑義照会して医師の処方意図を確認する。

もう一言

本事例は、医師の処方意図は10mg/日であったが、患者は実際には9mg/日しか服用していなかった。しかし、この量で改善効果が得られていることが判明し、今後は9mg/日で服用治療が続行されることになった。患者の服薬間違いが功を奏した形となった。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2016年2月5日

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