Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例119

クリニックのスタッフがワーファリン錠の用量と錠数を混同

ヒヤリした!ハットした!

今回の処方箋はこれまでとは異なり、ワーファリン<ワルファリンカリウム>の錠数が1.5錠から1.75錠になっていた。そのため、初期鑑査を担当した薬剤師は、用量が1.75mgから1.875mgに増量されたと判断したが、実際は1.75錠ではなく、1.75mgの誤記載であることが判明した。

<処方1>60歳代の男性。腎クリニック。処方オーダリング。

(内) ワーファリン錠1mg 1錠
ワーファリン錠0.5mg 1.5錠訂正印 1.75錠
分1 夕食後 ×14日分
他5剤

*透析患者である。

*「1.75錠」は手書きで記載されていた。

<効能効果>

●ワーファリン錠0.5mg・錠1mg・錠5mg<ワルファリンカリウム>
血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、緩徐に進行する脳血栓症等)の治療及び予防

どうした?どうなった?

前回までの処方ではワーファリンが1.75mg(1mg錠×1錠と、0.5mg錠×1.5錠)であったが、今回は処方箋が手書きで修正されており、ワーファリンが1.875mg(1mg錠×1錠と、0.5mg錠×1.75錠)に増量されていた。

初期鑑査を担当した薬剤師は、これまでの経験から、ワーファリンを0.125mg刻みで微調整することに多少の違和感があったが、訂正印もあり間違いではないだろうと判断した。
調剤を担当した薬剤師は、半端の0.75錠を調剤するために粉砕するか、多少不均等でも1/4錠に分割するかを迷い、念のため病院に確認したところ、実は前回と同じ処方であることが判明した。

なぜ?

腎クリニックのスタッフが、前回の処方箋<処方2>に記載されていたワーファリンの全量1.75mgという記載を、ワーファリン錠0.5mgが1.5錠から1.75錠に変更されたと見誤って、処方箋を修正してしまった。

<処方2>

(内) ワーファリン錠1mg 1錠
ワーファリン錠0.5mg 1.5錠 1.75mg
分1 夕食後 ×14日分
他5剤

*1.75mgとの記載は手書きである。

<処方3>

(内) ワーファリン錠1mg 1錠
ワーファリン錠0.5mg 1.5錠
分1 夕食後 ×14日分
他5剤

*腎クリニックのスタッフは、前回の処方内容が記載されたカルテ<処方3>を印刷し、前回分の処方箋<処方2>と見比べ、<処方1>を作成してしまった。

ホットした!

ワーファリンは、0.25mg、0.5mg、1mg、1.25mg、1.5mg・・・・などの分量が、0.5mg錠、1mg錠、5mg錠の規格単位を、0.25錠、0.5錠、1錠、1.25錠、1.5錠、2錠・・・・などの組み合わせで処方設計される。したがって、用量、錠数の数字部分が同じであることが処方ミスにつながってしまう。これは処方作成だけでなく、調剤の場面でも混乱して誤入力、誤調剤されてしまうことがある。
ワーファリン錠の各規格単位が処方されたら、下記の表でまず対応量を把握し、処方内容に従って、分量を計算する。

処方錠数 0.25錠 0.5錠 1錠 2錠
規格単位
ワーファリン錠0.5mg 0.125mg 0.25mg 0.5mg 1mg
ワーファリン錠1mg 0.25mg 0.5mg 1mg 2mg
ワーファリン錠5mg 1.25mg 2.5mg 5mg 10mg

これは医師の処方作成時、薬剤師による処方チェック時、調剤時に活用する。

もう一言

ワーファリン錠に関する薬剤師によるインシデント事例を以下に示す。

事例:50歳代の男性。「ワーファリン錠5mg1錠、ワーファリン錠0.5mg0.5錠」が処方された。ワーファリンを5.25mgで分包することになるが、薬剤師はワーファリン錠1mg1錠、ワーファリン錠0.5mg0.5錠の1.25mgで分包してしまった。鑑査時に気付き正しい量で再調剤となった。原因は、ワーファリン錠5mgは滅多に処方されないことにあり、よく処方される1mg錠を誤って集薬してしまった。また、用量、錠数の数字には、0.5、1、1.25、5、5.25などがあり、混乱してしまった可能性がある。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2020年7月20日

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