Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例56

皮膚科からのバナン錠100mgをパナルジン錠100mgで誤集薬

ヒヤリした!ハットした!

皮膚科からバナン錠100mg<セフポドキシム プロキセチル>が処方されていたが、パナルジン錠100mg<チクロピジン塩酸塩>を誤集薬してしまった。

<処方>50歳代の女性。病院の皮膚科。処方オーダリング。

バナン錠100mg 2錠 1日2回 朝夕食後 3日分

<効能効果>

●バナン錠100mg<セフポドキシム プロキセチル>

〈適応菌種〉
セフポドキシムに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、淋菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、プロビデンシア属、インフルエンザ菌、ペプトストレプトコッカス属

〈適応症〉
表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、乳腺炎、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、尿道炎、バルトリン腺炎、中耳炎、副鼻腔炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎

●パナルジン錠100mg<チクロピジン塩酸塩>

  • ・血管手術および血液体外循環に伴う血栓・塞栓の治療ならびに血流障害の改善
  • ・慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛および冷感などの阻血性諸症状の改善
  • ・虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)に伴う血栓・塞栓の治療
  • ・クモ膜下出血術後の脳血管攣縮に伴う血流障害の改善

どうした?どうなった?

患者に皮膚科からバナン錠100mgが初めて処方され、処方せんには1剤のみ記載されていた。薬剤師は、パナルジン錠100mgと思い込み、6錠を誤集薬してしまった。

なぜ?

薬名類似による誤調剤である。「バナン」と「パナルジン」では「ハナ○○ン」の部分が類似しており、規格の100mgは同じである。薬剤師は、規格の100mgを見て「パナルジン」と思い込んで集薬してしまった可能性がある。
この薬局では、バナン錠100mgは10錠シート、パナルジン錠100mgは14錠シートが採用されており、その外観、シートサイズは似ていない。また、両剤の薬効は全く異なること、この薬局では薬剤を薬効別に配置しているので棚の場所も離れていることなど、その他の取り違えに繋がる要因はなかったと考えられる。
薬剤師は、これまでバナン錠を調剤した経験が少なかった。一方、パナルジン錠も最近は調剤することが少なくなっていたが、プラビックス錠が発売される前は頻繁に調剤していたので、薬名に馴染みがあった。

ホットした!

思い込みで調剤せず、調剤手順を遵守し、医薬品名・剤形・規格を1文字ずつ確認しながら自己鑑査をする。調剤時、処方された診療科の確認と処方内容の妥当性の確認(今回は皮膚科の処方であり、パナルジン錠が出る可能性は低い)を怠らない。
「調剤過誤防止システム」(医薬品などのバーコードを専用端末で読み込んで処方情報と照合し、別物調剤を防止するシステム)を採用する。

もう一言

「バナン」と「パナルジン」の類似度
薬名の類似度を数値的に表す指標として、東京大学大学院薬学系研究科・育薬学講座などでは「m2-vwhtfrag」を開発している。この指標によると、「バナン」と最も類似している薬名は「パナルジン」となり、類似度は1.38と計算される。m2-vwhtfrag値が0.456よりも大きいと、薬名類似により医薬品の取り違えが生じる可能性が高いと予測される。

「ルクライ」薬名類似度検索システム はこちらから。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2017年11月1日

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