Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例170

疑義照会にて薬名類似による処方ミスと発覚

ヒヤリした!ハットした!

医師が、ストロメクトール錠3mg<イベルメクチン>を処方するところ、薬名が類似したストロカイン錠5mg<オキセサゼイン>を間違って処方してしまった。薬剤師は当初、用法用量の間違いか、適応外使用の可能性があると考え、薬名類似による処方間違いであるとは思い及ばなかった。

<処方1>70歳代の男性。病院の皮膚科。

ストロカイン錠5mg 1回5錠 空腹時1回分 11月2日に内服
オイラックスクリーム10%60g 1日1回塗布(首から下の皮膚症状ある所)

<効能効果>

●ストロカイン錠5mg<オキセサゼイン>
下記疾患に伴う疼痛・酸症状・噯気・悪心・嘔吐・胃部不快感・便意逼迫
食道炎、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、過敏性大腸症(イリタブルコロン)
●ストロメクトール錠3mg<イベルメクチン>
腸管糞線虫症、疥癬

どうした?どうなった?

患者には、皮膚科より「ストロカイン錠5mg」が頓服で処方されていた。ストロカイン錠は「通常成人1日3~8錠(オキセサゼインとして1日15~40mg)を3~4回に分割経口投与する。」という用法用量なので、薬剤師は何か特殊な適応外の処方なのかと思い、患者に尋ねた。

薬剤師:「医師からこの薬の飲み方に関して説明を受けていますか?」

患者:「1週間前にも、同じ薬を同様に服用した。」

患者にお薬手帳を見せてもらうと、1週間前には「ストロカイン錠5mg」ではなく「ストロメクトール錠3mg」が処方されていた。薬剤師は、疑義照会(病院事務職員経由で医師に連絡)にて、前回はストロメクトール錠であったことを伝えたところ、ストロカイン錠からストロメクトール錠に変更となった。

なぜ?

ストロメクトール錠とストロカイン錠は、同じ3文字「ストロ」から始まる医薬品名のため、医師が処方箋を作成する際に選び間違えた可能性がある。

薬剤師は、薬名類似による別の薬の処方間違いであるとは思わなかった。処方箋の当該薬のみを見て、医薬品名は正しく、別の疾患に対する適応外使用だと思い込んでしまった。同一処方箋で鎮痒薬である「オイラックスクリーム10%」も処方されていたことを考えると、これまでの薬歴を確認するなどして、明らかな処方間違いだと気づくべきだった。

ホットした!

今回は、患者が前回処方の事も明確に記憶していたため疑義照会に至ったが、患者が正しく状況を把握しているとは限らない。薬剤師は、少しでも疑問を感じることがあればまず薬歴を確認し、不明な点は患者に尋ねる。その後、必要に応じて疑義照会に至ることが重要である。

もう一言

医薬品名の類似に関して、「ストロメクトール」と「ストロカイン」の薬名類似度指標「m2-vwhtfrag」(医薬品の薬名がどの程度似ているのかを定量的に評価するための指標)は1.01であり、取り違えがおこる可能性がある(m2-vwhtfragの値が0.456以上であると薬名類似による処方間違い、取り違えが生じる可能性があると考えられる)。

[参考]
ルクライ 薬名類似度検索システム
(NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター)

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2022年9月15日

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