Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例67

ボナロン錠35mgの用量超過を招きかけた残薬の確認不足

ヒヤリした!ハットした!

患者は、週1回服用するタイプのボナロン錠35mg<アレンドロン酸ナトリウム水和物>を週2回、2日間に分けて飲もうとしていた。

<処方>80歳の女性。病院の整形外科。処方オーダリング。

ボナロン錠35mg 1錠 1日1回(週1回 土曜日) 起床時 4日分

<効能効果>

●ボナロン錠35mg (アレンドロン酸ナトリウム水和物)
  骨粗鬆症

どうした?どうなった?

患者は、ボナロン錠35mgを処方されて3年が経過していた。ボナロン錠35mgは毎週土曜日に服用していたが、飲み忘れが数カ月に1回程度あり、自宅に10錠程度が残っていた。
患者は、医師からボナロン錠35mgはとてもよい薬だと説明を受けていたため、手持ちの自宅残薬をもったいないので飲んでしまいたいと思っていた。そこで、ボナロン錠35mgを1週間に2回服用しようと思い、何曜日に服用すればよいのかを薬剤師に相談した。
相談された薬剤師は驚き、「ボナロン錠35mgは週に1回のみ服用するタイプの薬であり、用量を増やしてもそれに比例して効果が出る薬ではないこと」を丁寧に説明して、1週間に2回は服薬できないことを患者に納得してもらった。
薬剤師は、ボナロン錠35mgの残薬数を確認した後、次回以降の処方からボナロン錠35mgを抜いて、手持ちの残薬を服用することを医師に提案し、実際にそのようにすることとなった。今回の経緯についてはおくすり手帳にも記載した。

なぜ?

薬剤師は、患者が薬を正しく服用しているかどうかの確認、および残薬の確認ができていなかった。今回は幸いなことに、事前に患者からの質問があったため、不適正使用が回避できた。
飲み忘れたときの対応として、初回処方時に、1度に2錠は服用しないようにと伝えていた。しかし、週2回、2日間に分けて服用することは想定しておらず、週に何度も飲んではいけないことは説明していなかった。

ホットした!

・ボナロン錠35mgのように、週に1回だけ服用する薬は、服薬コンプライアンスの改善に繋がる場合もあれば、今回の事例のように服薬ノンコンプライアンスに陥る場合もある。患者の状況に応じて製剤を選択するとともに、普段から服用状況、残薬状況について確認する。
・初回だけではなく定期的に、飲み忘れたときの対応などを患者に説明、確認する。具体的には、飲み忘れへの対応としては、「1度に複数錠の服用禁止」だけでなく、「週に複数日の服用禁止」も説明する。

もう一言

◎アレンドロン酸ナトリウム水和物の過量投与による徴候・症状としては以下が報告されている。
 低カルシウム血症、低リン酸血症、並びに上部消化管障害(胃不調、胸やけ、食道炎、胃炎、又は潰瘍等)が発現することがある。

ボナロン錠35mgの医療用添付文書より

・骨粗鬆症の薬(ビスホスホネート系薬)には、服薬回数が毎日、週1回、月1回、年1回のタイプがある。また、錠剤以外にもゼリー剤、点滴または注射の選択肢がある。

商品名
(一般名)
毎日 週1回 4週に1回
(月1回)
年1回
ボナロン・フォサマック
(アレンドロン酸)
錠剤 錠剤
ゼリー剤
点滴剤
ボンビバ
(イバンドロン酸)
錠剤
注射剤
ダイドロネル
(エチドロン酸)
錠剤
リクラスト
(ゾレドロン酸)
点滴剤
ボノテオ/リカルボン
(ミノドロン酸)
錠剤 錠剤
アクトネル・ベネット
(リセドロン酸)
錠剤 錠剤 錠剤

-:なし

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骨粗鬆症治療薬の服薬指導 事例集

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2018年5月2日

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