Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例115

デュロテップMTパッチ使用患者に防水保護シートを販売

ヒヤリした!ハットした!

デュロテップMTパッチを使用中の患者に、入浴中にパッチがはがれないようにするための防水保護シートを販売してしまった。

<処方>50歳代の男性。病院の内科。処方オーダリング。

デュロテップMTパッチ2.1mg 4枚 3日に1度貼り替え

<効能効果>

●デュロテップMTパッチ2.1mg/4.2mg/8.4mg/12.6mg/16.8mg<フェンタニル>
非オピオイド鎮痛剤及び弱オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記疾患における鎮痛(ただし、他のオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する場合に限る。)
中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛
中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛

どうした?どうなった?

病院の近くにある薬局のため、医療用衛生材料も販売している。
お風呂に入るとデュロテップMTパッチがはがれるので何か良い方法はないかと患者に聞かれ、パッチの上から貼る防水保護シートを販売してしまった。

その後、MTパッチを貼付したまま入浴してもよかったのかが心配になり、調べてみたところ、医療用添付文書で以下の注意喚起がなされていた。

[警告]
本剤貼付部位の温度が上昇するとフェンタニルの吸収量が増加し、過量投与になり、死に至るおそれがある。本剤貼付中は、外部熱源への接触、熱い温度での入浴等を避けること。発熱時には患者の状態を十分に観察し、副作用の発現に注意すること。

また、熱がこもって皮膚の温度が上昇する可能性があるので、一般的には防水フィルムなどは使用しない。

当該患者の処方せんも受けており、連絡先を把握していたことから、自宅へ電話連絡し、防水保護シートを使用しないこと、並びに代金を返金することを伝えた。その後、来局した患者にお詫びを述べるとともに返品対応・返金した。

なぜ?

薬剤師は、デュロテップMTパッチを取り扱ったことがほとんどなかった。従って、貼付部位の温度上昇によりフェンタニル吸収量が増加することを知らなかった。剥がれる事への対処のみが思い浮かび、十分な確認をせずに医療材料を販売してしまい、重要な注意喚起ができなかった。

ホットした!

医療用麻薬は、頻繁に調剤するわけではないので、つい注意事項を忘れがちだが、どのような状態の患者が来ても対処できるように日頃の学習が必要である。

もう一言

デュロテップMTパッチの医療用添付文書「適用上の注意」を参照。

デュロテップMTパッチの医療用添付文書 2019年9月改訂(下線部分)(第11版)
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00055312.pdf

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2020年5月22日

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