Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例04

ベイスンOD錠のPTPシートが21錠から10錠に変更となったが、別物と思い両方を服薬

ヒヤリした!ハットした!

患者は、自宅残薬のベイスンOD錠<ボグリボース>と今回処方されたベイスンOD錠を1錠ずつ、合計2錠を1日3回服用していた。

<処方1>70歳代の女性。病院の内科。オーダー/印字出力。

ベイスンOD錠 0.3mg
1錠 1日 3回 毎食直前 60日分
オイグルコン錠 2.5mg
1錠 1日 1回 朝食後 60日分

<効能効果>ベイスンOD錠

  • ●糖尿病の食後過血糖の改善
    (ただし、食事療法・運動療法を行っている患者で十分な効果が得られない場合、又は食事療法・運動療法に加えて経口血糖降下剤若しくはインスリン製剤を使用している患者で十分な効果が得られない場合に限る)
  • ●耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制(OD錠0.2のみ)
    (ただし、食事療法・運動療法を十分に行っても改善されない場合に限る)

どうした?どうなった?

患者は、ベイスンOD錠を服用しており、前回までは 21錠のPTPシートを交付していた。今回、薬局の都合によりベイスンOD錠0.3mgを21錠PTPシートから 10 錠PTPシートに変更した。薬剤師は、患者に交付する際に、シートが変更になったことやシートの違いを説明した。

しかし、交付してから2カ月経過したところで、患者が「これはとても薬が似ている気がするが、“新しい食後のほうの薬”は何の薬?」と尋ねてきた。詳細を尋ねると、患者は2カ月間、自宅に残っていた21錠PTPシートのベイスンOD錠を食直前に服用し、新しい10錠PTPシートのベイスンOD錠を毎食後に服用していた。

10錠シートを入れた薬袋には毎食直前と記載されていたが、患者は薬袋を読んでいなかった。また、もともと服薬コンプライアンスが悪く、21錠シートのベイスンOD錠の残薬がたくさん残っていた。

なぜ?

薬剤師は、PTPシートが変更になった時点できちんと説明したつもりであったが、残薬まで確認しておらず、患者が重複して服用するとは思っていなかった。

21錠と10錠のPTPシートは大きさがずいぶん違うため、患者が別の薬だと勘違いする危険性も高かったが、薬剤師はその点に気づかず、十分に説明していなかった。

ホットした!

同じ薬であっても包装が変更(今回は21錠から10錠のPTPシートへ変更)になった場合には、変更前と後の薬剤写真と、変更になったことを説明するメモを患者に渡しておくなどの工夫が必要である。

包装変更や採用品変更になった場合には、変更前の薬が自宅に残っていないかをチェックする必要がある。両方を誤服薬する可能性を考えて、自宅残薬を整理・回収することも考える。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2015年10月8日

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