Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例130

特殊な用法のプレドニン以外の薬剤における患者の理解度の確認不足

ヒヤリした!ハットした!

患者は<処方>の薬を交付されたが、特殊な用法のプレドニン<プレドニゾロン>のみ服用して、バルトレックス<バラシクロビル>とロキソニン<ロキソプロフェン>は服用していなかった。

<処方>40歳の女性。病院の神経内科。処方オーダリング。10月2日。

バルトレックス錠500 2錠 1日2回 朝夕食後5日分
プレドニン錠5mg 6錠 1日2回 朝昼食後2日分

10月2・3日

プレドニン錠5mg 5錠 1日2回 朝昼食後(3-2-0)2日分

10月4・5日

プレドニン錠5mg 4錠 1日2回 朝昼食後3日分

10月6日~

ロキソニン錠60mg 3錠 1日3回 毎食後7日分

*バルトレックス錠は単純疱疹の治療のために処方されている。
*全ての薬剤は今回、初めての処方である。

<効能効果>

●バルトレックス錠500・顆粒50%<バラシクロビル塩酸塩>
単純疱疹、造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制、帯状疱疹、水痘、性器ヘルペスの再発抑制
●プレドニン錠5mg<プレドニゾロン>
診療科領域毎に多種類の効能がある(医療用添付文書参照)
●ロキソニン錠60mg・細粒10%<ロキソプロフェンナトリウム水和物>
(1)下記疾患並びに症状の消炎・鎮痛
関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、歯痛
(2)手術後、外傷後並びに抜歯後の鎮痛・消炎
(3)下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)

どうした?どうなった?

患者の特発性顔面神経麻痺、単純疱疹などに対して<処方>が処方された。投薬を担当した薬剤師は、漸減処方であるプレドニンについて、薬袋に服用日を記載し、日付通り服用して徐々に減量する飲み方であることを丁寧に説明した。更に、バルトレックスとロキソニンの用法用量を説明した。

その2日後(10月4日)の朝に患者から電話にて質問があった。
患者:「プレドニンは日付通りきちんと服用しているが、バルトレックスとロキソニンはいつ飲めばいいですか?」
薬剤師:「バルトレックスとロキソニンについて説明が不足しており、申し訳ございません。バルトレックスとロキソニンはまだ服用されていないということですね。今後の対応については医師と相談し、折り返しお電話致します。」
医師へ問い合わせた結果、バルトレックス錠は10月4日から5日間、ロキソニン錠は7日間服用することとなり、患者にその旨を連絡した。

なぜ?

患者は「日付通り服用する」という薬剤師の説明が頭に残っており、プレドニンとは別の薬袋に入っていて日付の説明がなかったバルトレックスとロキソニンには手をつけず、プレドニン錠だけを服用していた。そして服用開始から2日後に服用していない薬があることに気がついたようである。

投薬した薬剤師は、バルトレックスとロキソニンは特に服用日の指定がなかったため通常通り交付後から服用開始するものだと思っており、「いつから服用するのか」や「プレドニンと一緒に服用」といった明確な指導をしなかった。

これまで同様の服用方法の患者に対して、本事例と同様の服薬指導をしてきたが、誤って服用するケースは経験したことがなく、今回のような事例を想定できなかった。また、投薬の最後に何か不明な点はないか?と尋ねたが、患者からは特に質問はなかった。

ホットした!

特殊な服用方法の薬剤があるときには、その薬にのみ服薬指導が偏りがちだが、それ以外の薬剤も服用方法を正しく理解できているか確認する必要がある。

もう一言

最大7日間の処方になるため、下記のように10月の服薬スケジュール一覧を作って患者に注意喚起することも考えられる。

薬品名 10/2 10/3 10/4 10/5 10/6 10/7 10/8
バルトレックス 1-0-1 1-0-1 1-0-1 1-0-1 1-0-1 0-0-0 0-0-0
プレドニン 3-3-0 3-3-0 3-2-0 3-2-0 2-2-0 2-2-0 2-2-0
ロキソニン 1-1-1 1-1-1 1-1-1 1-1-1 1-1-1 1-1-1 1-1-1

※朝-昼-夕の錠数を記載(例:1-0-1ならば朝1錠、昼0錠、夜1錠)

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2021年1月29日

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