Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例258

お薬手帳を親子で共有していた

ヒヤリした!ハットした!

5歳の女児のお薬手帳に、母親に交付された薬剤のシールが貼付されていた。

<処方1>5歳の女児。クリニックの小児科。

シングレア細粒4mg 1包 1日1回就寝前30日分

<効能効果>

●シングレア細粒4mg、同チュアブル錠5mg<モンテルカストナトリウム>
気管支喘息
●シングレア錠5mg・10mg、同OD錠10mg<モンテルカストナトリウム>
気管支喘息、アレルギー性鼻炎

どうした?どうなった?

初めて来局した患者(女児)と母親であった。女児には小児喘息のためシングレア細粒が処方されていた。
調剤した薬剤師が、調剤を開始する前にお薬手帳で併用薬を確認したところ、「フロモックス錠とムコスタ錠を5日間」という成人に対する処方と思われる内容のシールが貼付してあった(図1)。驚いて詳しく見たところ、女児の母親に処方された薬剤であった。お薬手帳は半分以上のページにシールが貼られている状態であり、最初のページから確認したところ、母親のシールは2回分が貼付されていた(もう1回の処方内容はロキソニン錠・ムコスタ錠・モーラステープであった)。
母親に確認したところ、母親自身はあまり病院にかからないのでお薬手帳を作成していないが、薬局に行くとシールだけくれるので、母親が自分で子どものお薬手帳に一緒に貼付していたとのことである。母親としては、子どもの薬とは明らかに処方内容が異なるため、お薬手帳を共用しても親子2人の薬を混同して混乱が起きることはないと考えていた。

図1.5歳児のお薬手帳

薬剤師は、お薬手帳は共用しないよう説明した。今回は、内容が5歳児に処方されることのない薬剤だと一見して分かったため、薬剤師は母親のものだと認識できた。しかし、例えば、医師がお薬手帳をざっとみて母親の薬だと気づかず、「フロモックスを服用したことがあるから大丈夫」(本来、小児にはフロモックス小児用細粒が処方されるはずであるが、医師は“フロモックス”しか見ていない)と判断して、フロモックス小児用細粒を処方する可能性もある。その場合、もし女児がセフェム系抗生物質にアレルギー歴があれば、副作用(薬疹など)が惹起する危険性もある。

なぜ?

母親がお薬手帳の意義と使用法をまったく認識していなかった。薬剤師は、お薬手帳の意義、正しい使用法などを患者・保護者に説明していなかった。
薬剤師はお薬手帳を毎回チェックしている。例えば、今回の処方薬との併用(組合せ)が問題となる他の薬を服用していないか?、過去に副作用歴があるのに同じ系統の薬が今回処方されていないか?などをチェックしている。母親は、お薬手帳というものは「薬剤師がシールをただ貼るだけの物」だと感じていた可能性がある。そのため、交付されたシールをただ自分でお薬手帳に貼付するだけであった。

ホットした!

患者(またはその家族)は、お薬手帳を医療機関や薬局に毎回持参して、医師や薬剤師に提示する。
薬剤師は、お薬手帳の意義と正しい使用法を患者に説明して、理解してもらう。以下の様な服薬指導が考えられる。
「我々薬剤師は、患者さんのお薬手帳を毎回チェックしています。何をチェックしているかといいますと、今回のお薬とほかの病院で出ているお薬とで、飲み合わせの問題がないかどうか、そして、以前にお薬を使って副作用があったのに、今回も同じ薬が出ていないかどうかなどを確認しているのです。ほかにも確認すべきことは沢山あります。ですから、お薬手帳は、病院や薬局へ行くときは必ず持参してください。そして、医師や薬剤師に必ずチェックしてもらうようにしてくださいね。お薬手帳はあなたの身を守るためにも重要ですよ」

もう一言

[モンテルカストの薬効薬理]
〈気管支喘息〉
モンテルカストは、システイニルロイコトリエンタイプ1受容体(CysLT1受容体)に選択的に結合し、炎症惹起メディエーターであるLTD4やLTE4による病態生理学的作用(気管支収縮、血管透過性の亢進、及び粘液分泌促進)を抑制する。この作用機序に基づき、モンテルカストは抗喘息作用として、喘息性炎症の種々の因子を改善する。
〈アレルギー性鼻炎〉
アレルギー性鼻炎では、抗原曝露後に、即時相及び遅発相のいずれにおいてもシステイニルロイコトリエンが鼻粘膜から放出される。その放出はアレルギー性鼻炎の症状発現と関連がある。また、システイニルロイコトリエンの鼻腔内投与は鼻腔通気抵抗を上昇させ、鼻閉症状を増悪させることが示されている。モンテルカストはロイコトリエン受容体の作用を遮断することにより、アレルギー性鼻炎症状の緩和に重要な役割を果たすことが示唆されている。

シングレア細粒4mgのインタビューフォームより

[国試対策問題]

問題:小児喘息で治療中の5歳女児が母親とともに来局した。薬剤師が女児のお薬手帳を確認したところ、母親に処方された成人用薬剤(抗菌薬、NSAIDs、胃粘膜保護薬など)のシールが貼付されていた。母親は「自分はあまり受診しないので、子どものお薬手帳に一緒に貼っています」と述べた。この母親に対する薬剤師の説明として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 家族であれば、同じお薬手帳を共用しても差し支えない。
2 処方内容が異なれば、親子で同じお薬手帳を使用しても問題ない。
3 お薬手帳は患者ごとに分けて管理し、本人ごとに記録する必要がある。
4 小児の薬剤情報が重要なので、保護者の薬は記録しなくてよい。
5 薬局が管理している薬歴と同じ内容なので、お薬手帳は持参しなくてもよい。

【正答】3
1 家族であっても、お薬手帳は患者個人ごとに管理する必要がある。
2 処方内容が異なっていても、医師・薬剤師が誤認する可能性があるため、共用は不適切である。
3 お薬手帳は患者本人の薬剤情報を一元管理するためのものであり、患者ごとに分けて管理することが原則である。
4 保護者の薬剤情報も本人にとって重要であり、別個のお薬手帳で適切に管理すべきである。
5 薬局の薬歴は当該薬局内の情報に限られるが、お薬手帳は複数医療機関・他薬局間で情報共有するため重要である。

*本稿では、全国各地において収集したヒヤリ・ハット・ホット事例について、要因を明確化し、詳細に解析した結果を紹介します。事例の素材を提供していただいた全国の薬剤師の皆様に感謝申し上げます。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2026年4月22日

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