Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例107

端数のPTPシートを組み合わせて調剤

ヒヤリした!ハットした!

ブロプレス錠4<カンデサルタンシレキセチル>の60錠を調剤するとき、10錠シート5枚(50錠分)、6錠分のシート1枚、4錠分のシート1枚で用意したところ、患者より「いつも端数のシートばかりもらう。10錠シートを6枚で欲しい」とクレームがあった。

<処方1>70歳代の男性。病院の内科。処方オーダリング。

ブロプレス錠4(4mg) 1錠 1日1回 朝食後 60日分

<効能効果>

・高血圧症
・腎実質性高血圧症
・下記の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害剤の投与が適切でない場合
慢性心不全(軽症~中等症)

どうした?どうなった?

薬剤師は使用期限が近い薬から調剤しようと思い、端数となっているPTPシートを組み合わせて調剤し、交付しようとしたところ、上記のクレームを受けた。
患者にはお詫びし、10錠シート×6枚で薬を渡した。
当該患者に対しては、今後も10錠シートで薬を交付するよう薬歴に記載した。

なぜ?

当薬局では、ブロプレス錠を調剤する頻度がそれほど高くないので、使用期限を気にしてしまった。
これまで、同様の調剤の仕方で薬を渡しても、クレームを受けたことがなかったため、特に患者には説明していなかった。

ホットした!

やむを得ず、端数となっている複数のPTPシートを組み合わせて調剤した場合、交付前に一言説明(「1シートあたりの個数が異なりますが、全体の個数は合っています。よろしいでしょうか?」など)を付け加える。
端数となったシートは一包化の処方があった場合や、下記のように端数が同じ数となった場合などに使用する。但し、使用頻度が低い薬剤である場合、そのまま不動在庫となり期限切れとなってしまう可能性もある。

<処方2>

ブロプレス錠4(4mg) 1錠 1日1回 朝食後 64日分

*10シート6枚と端数の4錠分を集薬する。

もう一言

PTPシートの端数を組み合わせて患者に交付すると、服薬ミスにつながる場合もある。以下に具体的な事例を示す。

薬剤を区別する患者ならではの工夫

患者は、デパス錠0.5mg<エチゾラム>とテシプール錠1mg<セチプチリンマレイン酸塩>のPTPシートが似ていると感じていたため、両者を区別するためにテシプールのPTPシートを縦にはさみで切って5錠×2枚にしていた。いつもは10錠シート1枚と4錠という組み合わせで交付していたが、端数のシートを組み合わせて手渡してしまったことがあった。それによって患者はデパスとテシプールが区別できず、デパスとテシプールを1錠ずつ、計2錠を服用すべきところ、デパスを2錠服用してしまった日があった。薬剤師は、薬剤に対して抱いている悩みや対処法について把握していなかった。

澤田康文著「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント・4」日経BP社(2011)より

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2020年1月15日

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