Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例96

視覚障害者に最適なうがい液へ疑義照会

ヒヤリした!ハットした!

視覚障害者にイソジンガーグル液7%<ポビドンヨード>が処方されたが、目盛りで量るのは困難との訴えを受け、アズノールうがい液4%<アズレンスルホン酸ナトリウム水和物>に変更となった。

<処方>40歳代の女性。整形外科。処方オーダリング。

PL配合顆粒 3g 1日3回 毎食後 5日分
ムコソレート錠15mg 3錠 1日3回 毎食後 5日分
クラリスロマイシン錠200mg 2錠 1日2回 朝夕食後 5日分
アレロック錠5 2錠 1日2回 朝食後、就寝前 28日分
イソジンガーグル液7% 30mL 1日4~5回 含嗽

<効能効果>

●イソジンガーグル液7%<ポビドンヨード>
咽頭炎、扁桃炎、口内炎、抜歯創を含む口腔創傷の感染予防、口腔内の消毒
●アズノールうがい液4%<アズレンスルホン酸ナトリウム水和物>
咽頭炎、扁桃炎、口内炎、急性歯肉炎、舌炎、口腔創傷

どうした?どうなった?

患者は視覚障害者であるが、普段、内服薬に関しては問題なく服用できている。今回、風邪のため、初めてうがい薬が処方された。

イソジンガーグル液7%は、1回につき1~2目盛り分を押し出し、水で希釈して使用するため、視覚障害者では使用が困難であると考えられた。患者に確認し、1回押し切り分を希釈して使用すればよいアズノールうがい液4%もあることを伝えたところ、アズノールの方が使いやすそうだということだった。

そこで、医師に疑義照会して、1回押し切りで使用できるアズノールうがい液に処方変更となった。

なぜ?

医師が使用方法まで考慮せずに処方したか、誰かに使用を補助してもらうことを前提に処方したものと思われる。

または、1回押し切りで使用できるアズノールうがい液の存在を知らなかった可能性もある(当該医師はこれまでアズノールうがい液を処方したことはなかったと思われる)。

ホットした!

今回は当該患者が視覚障害をもっていることを把握していたため、すぐに対応できたが、新患で代理の方が処方箋を持ってきた場合などは、気づかずに処方箋どおりに調剤し、交付してしまう可能性もある。

服薬指導時に患者の身体状況、生活環境なども含めた情報収集をすることが大切である。

もう一言

イソジンガーグル液7%およびアズノールうがい液4%は、ともに希釈してうがいに用いられる薬剤であるが、アズノールうがい液4%では1回押し切り分を希釈して使用することができ、視覚障害などにより目盛りや滴数を確認するのが難しい患者では利便性が高いと考えられる。以下に両薬剤の用法用量の記載を示す。

<イソジンガーグル液7%の用法用量>
用時15~30倍(2~4mLを約60mLの水)に希釈し、1日数回含嗽する。

<アズノールうがい液4%の用法用量>
1回4~6mg(1回押し切り分、又は5~7滴)を、適量(約100mL)の水又は微温湯に溶解し、1日数回含嗽する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2019年7月9日

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