Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例30

薬袋に隔日投与と記載せずルプラック錠を毎日服用

ヒヤリした!ハットした!

患者は、隔日投与のルプラック錠<トラセミド>を毎日服用していた。

<処方1>65歳の男性。病院の循環器科。オーダー/印字出力。

Rp.1) ラニラピッド錠 0.1mg
ワーファリン錠 0.5mg
ワーファリン錠 1mg
アーチスト錠 2.5mg
1錠 1日1回朝食後 65日分
1錠 1日1回朝食後 65日分
3錠 1日1回朝食後 65日分
1錠 1日1回朝食後 65日分
Rp.2) 隔日
ルプラック錠 4mg
1錠 1日1回朝食後 33日分

他の処方薬省略…

<効能効果>ルプラック錠 4 mg(トラセミド)

心性浮腫、腎性浮腫、肝性浮腫

どうした?どうなった?

今回から初めてルプラック錠(処方せんには隔日投与と記載)が処方となった。患者は、薬剤師から口頭で隔日に服薬するように説明を受けていたため、初めの頃は隔日に服用していた。

ある時、患者が薬袋を見ると「朝食後 1 日 1 回」と記載されていたため、それからは毎日服用するようになった。次の受診日を待たずにルプラック錠がなくなり、受診したため発覚した。

患者から、「薬袋に1日おきに」と記載しておいて欲しかったとのクレームを受けた。

なぜ?

調剤した薬剤師は、薬袋に「隔日に」或いは「1日おきに」という記載をせず、「朝食後 1 日 1 回 33 日分」としか記載しなかった。鑑査した薬剤師も記載不十分をチェックできず、投薬した薬剤師も口頭で隔日に服用することを伝えたものの、薬袋に「隔日に」或いは「1日おきに」という記載を追加することを怠った。

ホットした!

口頭だけでは、時間が経つと患者の記憶が曖昧になるため(特に長期処方の場合)、正しい服用方法を薬袋に適正に記載する必要がある。隔日投与は特殊な投与法であり、患者にはその理由、意義などを詳細に説明する必要がある。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2016年10月4日

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