Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例16

カプセルを取り出すと勢い余って床に落ちてしまう

ヒヤリした!ハットした!

この患者は、アルファロールカプセル(一般名:アルファカルシドール)をPTPシートからうまく取り出せず、よくカプセルを床に落としてしまっていた。床に転がったカプセルを見つけられなかったため、服用できないことがしばしばあった。

<処方1>50歳代の女性。病院の内科。処方オーダリング。

①ボルタレン錠 25mg
 ムコスタ錠 100mg
3錠 1日3回 毎食後 14日分
3錠 1日3回 毎食後 14日分
②アルファロールカプセル 0.25μg 3Cap 1日1回 朝食後 14日分

<効能効果>

  • 下記疾患におけるビタミンD代謝異常に伴う諸症状(低カルシウム血症、テタニー、骨痛、骨病変等)の改善慢性腎不全、副甲状腺機能低下症、ビタミンD抵抗性クル病・骨軟化症
  • 骨粗鬆症

どうした?どうなった?

患者は毎食後、食卓で薬剤を服用していた。アルファロールカプセルだけはシートから取り出す際、押し出す加減によるのか、勢い余ってカプセルが床に転がり落ちることが何度かあったようだ。カプセルを見つけられないときは服薬を断念していた。

なぜ?

アルファロールカプセル0.25μgは、直径5.6mmの球形をした軟カプセルである。平らな机の上に置くと非常に転がりやすい。この患者は、手のこわばりなどがあるわけではない。シートから押し出しにくかったのか、手のひらで受けるも、勢い余ってカプセルがよく落ちてしまっていたようだ。

ホットした!

手にこわばりがない患者、高齢でない患者においても、アルファロールカプセルの取り扱いは注意を要する。患者・その介護者や医師と相談の上、以下のようなトラブル回避法を選択することが考えられる。

  • 小さなカップを用意しておき、カップの中に PTP の裏側を向けてカプセルを取り出す等、カプセルが床に転がり落ちにくい工夫をする。
  • PTP シートから取り出したカプセルを、ティッシュペーパーを 3 枚程度重ねた上に取り、転がりを防止する。
  • 一包化調剤で対応する。
  • アルファロール散 1μg/g(0.25μg/包、0.5μg/包、1μg/包、バラ)、アルファロール内用液 0.5μg/mL(バラ)に変更する。
  • 同じ成分で錠剤のワンアルファ錠 0.25μg・0.5μg・1μg、カルフィーナ錠 0.25μg・0.5μg・1μgなどへの処方変更を医師に提案する。

(ワンアルファ錠)
ワンアルファ錠は、アルファカルシドール製剤の先発医薬品の中で唯一の錠剤である。アルファカルシドールは脂溶性であり、また熱、光、湿気により容易に分解されてしまうため、その製剤化においては油(脂肪酸グリセリンエステル)に溶かさざるを得ず、従来は軟カプセル剤あるいは液剤として供給されてきた。そのため、油に起因すると思われる副作用(消化器症状など)や患者の服用コンプライアンスを配慮する必要があった。そのような背景の下に、油を含有しない錠剤が開発された。

もう一言

同じビタミンD製剤であるエディロールカプセル 0.5μg・0.75μg(エルデカルシトール)においても「転がり」のトラブルが発生している。

事例1:70歳代の女性。エディロールカプセルが処方されている患者に服用について尋ねてみた。すると、転がってしまうという回答が得られ、フローリング床と同じ色なので、見つけられなかったとのこと。

事例2:70歳代の女性。エディロールカプセル 0.75μgが処方されている患者:『この薬、取り出した時よく転がるのよね。転がった後掴みにくいし、年寄には意地悪な薬よね。』、薬剤師:「ティシュペーパー等ご用意頂き、注意しながら取り出してください。」としか返答できなかった。

事例3:80歳代の女性。エディロールカプセル0.75μg処方の患者。転がると絨毯の色と同じで見つからないとのこと。球状のカプセルのため、取り出し時に跳ねると転がってしまう。薬剤師は、跳ねない布などの上で取り出すようお願いしている。以前、別の患者は「落として転がしたら犬が食べそうになった。犬が食べても大丈夫なのか?」との問い合わせを受けたこともある。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2016年3月22日

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