Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例186

アロプリノール錠の服薬状況の認識不足

ヒヤリした!ハットした!

アロプリノール錠を服用中の患者が、1日2回(朝夕食後)だとどうしても飲み忘れてしまうし、半錠/回だと分包紙がかさばって保管に困るので嫌だと薬剤師に訴えた。

<処方1>60歳台の男性。クリニックの内科。(変更前)

アロプリノール錠100mg「トーワ」 1錠1日2回 朝夕食後56日分
ピタバスタチンCa錠2mg「日医工」 1錠1日1回 夕食後56日分
ウルソデオキシコール酸錠100mg「ZE」 3錠1日3回 毎食後28日分

*ウルソデオキシコール酸錠は残薬があり、日数調整のため28日分となっている。

<処方2>(変更後)

アロプリノール錠100mg「トーワ」 1錠1日1回 朝食後56日分
ピタバスタチンCa錠2mg「日医工」 1錠1日1回 夕食後56日分
ウルソデオキシコール酸錠100mg「ZE」 3錠1日3回 毎食後28日分

*アロプリノールの用法用量は『通常、成人は1日量として200~300mgを2~3回に分けて食後に経口投与する。年齢、症状により適宜増減する。』であり、重要な基本的注意として『血中尿酸値を測定しながら投与し、治療初期1週間は1日100mg投与が望ましい。』とされている。

<効能効果>

●アロプリノール錠100mg「トーワ」<アロプリノール>
下記の場合における高尿酸血症の是正
痛風、高尿酸血症をともなう高血圧症

どうした?どうなった?

患者は、前回の受診時に尿酸値が7.2mg/dLと高値だったため、アロプリノール錠が少量から開始となった(通常の用法用量より少ない)。薬局では、アロプリノール錠100mgを半錠にして分包し、投薬した。
患者は、これまで昼食後に飲み忘れ(特に外出先で)が多く、ウルソデオキシコール酸錠の残薬ができ、日数調整を繰り返していた。そのため、薬剤師は、来局のたびに全ての薬について服用状況を確認するようにしていた。

薬剤師が前回新たに処方されていたアロプリノール錠の服薬状況を尋ねたところ、アロプリノール錠が1日2回服用のため、服用回数が多くて困るとの訴えがあった(夕食後のウルソデオキシコール酸錠もこれまで時々服薬を忘れてしまうことを確認していた)。さらに、話の中で、患者は分包の袋がかさばり、保管する場所がなくて大変であると話していた。また、残薬も発生しているとのことであった。

患者の訴えを医師に伝え、用法を減らしてもらえないか疑義照会したところ、朝食後1錠に変更となった<処方2>。<処方2>は本剤の規定の用法用量から逸脱しているが、服薬不遵守回避のために致し方ないと判断され、しばらく様子をみることとなった。

その後、昼食後のウルソデオキシコール酸錠の飲み忘れは以前のように若干見られるものの、アロプリノール錠の飲み忘れはなく、薬の管理もできていて、検査値も低下傾向になり、服用も継続している。

なぜ?

医師は、1日3回の薬(ウルソデオキシコール酸錠)の飲み忘れは把握していたが、アロプリノール錠の服薬状況は把握していなかった。さらに、医師、薬剤師ともに、分包紙がかさばって、患者が上手に管理できていなかったことについて認識していなかった。
患者は診察の際に飲み忘れや管理のしにくさなどを医師に言いづらく、今回、初めて薬局の薬剤師に相談したと考えられる。

ホットした!

日数調整がないと(今回のアロプリノール錠の場合)、残薬がないと思いがちであるが、特定の薬(今回はウルソデオキシコール酸錠)をいつも飲み忘れる患者においては、ほかの薬の飲み忘れの可能性があることを認識する必要がある。

また患者によっては、服薬トラブルに関して医師や薬剤師に言い出しにくいというケースも考えられる。薬剤師は、患者の服薬不遵守、服薬トラブル(自宅における患者自身の薬剤管理などを含む)を服薬指導の中で見つけ出していくことが必要である。

もう一言

一包化が関係した患者にトラブルが発生した事例を以下に示す。

一包化とPTPシート調剤が混在したため重複服用してしまった患者

<処方1>70歳台の女性。病院の内科。

ノルバスクOD錠5mg 2錠 1日1回 朝食後28日分
アーチスト錠10mg 1錠 1日1回 朝食後28日分
以上一包化

<処方2>同じ病院の外科。

タケプロンOD錠30mg 1Cap 1日1回 朝食後21日分
セルベックスカプセル50mg 3Cap 1日3回 毎食後28日分
ガナトン錠50mg 3錠 1日3回 毎食後28日分
以上一包化

*患者は、各科別に一包化を希望していた。

今回、タケプロンOD錠の処方日数が前回から合わせると8週を超えるため、タケプロンOD錠のみ21日分を処方された。
この患者について、処方箋を応需した薬局では、以前から内科、外科とも一包化し、内科は一本線、外科は二本線を引いて各科の区別をしていた。

診療の際に、医師は患者とヘルパー(いつも介助している方ではなく新しい方だった)の両者に対して、タケプロンOD錠は21日分、セルベックスカプセルとガナトン錠は28日分になることなどを説明した。

薬局では、患者とヘルパー両者の希望を受け、21日分のみ一包化し、残りの7日分のセルベックスカプセルとガナトン錠は、PTPシートのまま投薬した。
患者は、PTPシートで渡したセルベックスカプセルとガナトン錠を、一包化した処方薬と一緒に(結果的には重複・倍量)服用していたことが、後日いつも介助している別のヘルパーからの報告で発覚した。幸い、患者に有害事象は起きていない。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2023年5月11日

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