Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例95

1回量と1日量を読み違えて誤調剤

ヒヤリした!ハットした!

1回量記載の処方であることに気づかず、42Capのところ14Capで調剤してしまった。

<処方1>60歳代の男性。病院の内科。

処方 Rp.01 アモリンカプセル125mg 2Cap
1日3回 毎食後 7日分
Rp.02 タケプロンOD錠15mg 1錠
1日1回 朝食後 28日分
Rp.03 アムロジンOD錠5mg 1錠
1日1回 朝食後 28日分
―以下余白―
備考 *この処方箋は内服を1回用量で表記しています。

※実際の処方箋形式にあわせて記載

<効能効果>

●アモリンカプセル125mg<アモキシシリン水和物>
<適応菌種>
本剤に感性のブドウ球菌属、他
<適応症>
表在性皮膚感染症、他
●タケプロンOD錠15mg<ランソプラゾール>
○胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群、非びらん性胃食道逆流症、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制
○下記におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
●アムロジンOD錠5mg<アムロジピンベシル酸塩>
高血圧症、狭心症

どうした?どうなった?

初めて応需する医療機関からの処方箋であった。調剤した薬剤師は、備考欄の「1回用量で表記」とのコメントを見落とし、6Cap×7日=42Capのところ2Cap×7日=14Capで誤調剤してしまった。
調剤薬鑑査をした薬剤師が調剤ミスに気づき、正しく再調剤した。

なぜ?

普段は1日量表記の処方箋を主に応需しており、調剤した薬剤師は1回量表記に全く慣れていなかった。
初めて応需する医療機関からの処方箋であり、調剤した薬剤師はその形式に慣れておらず、備考欄に記載されているコメントを見落としてしまった。
<処方1>の記載方法は混乱する形式であり、今回のような誤調剤を発生させる可能性が高いと思われる。

ホットした!

初めて応需する医療機関からの処方箋は、複数の薬剤師で特徴を読み取り、コメントなども見落とさず、より一層注意して調剤・鑑査・投薬する。
用法の記載ルールは標準化されているが([もう一言]参照)、医療現場では多様な記載ルールが併存しているのが現状であるため、十分に注意する必要がある。

もう一言

平成22年1月に厚生労働省医政局長、厚生労働省医薬食品局長から発出された「内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報告書の公表について」の資料によると、以下のような処方箋記載例が示されている。

例:フロモックス錠100mg、メジコン錠15mg、ムコソルバン錠15mgの各3錠を1日3回に分けて朝昼夕食後に服用するように処方する場合

(現状)

フロモックス(100) 3錠
メジコン(15) 3錠
ムコソルバン(15) 3錠
分3 毎食後 7日分

(移行期間:1回量と1日量の併記)

フロモックス錠100mg 1回1錠(1日3錠)
メジコン錠15mg 1回1錠(1日3錠)
ムコソルバン錠15mg 1回1錠(1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 7日分

(在るべき姿)

フロモックス錠100mg 1回1錠
メジコン錠15m 1回1錠
ムコソルバン錠15mg 1回1錠
1日3回 朝昼夕食後 7日分

<処方1>は(在るべき姿)に近い形式になっているが、極めてわかりにくく、誤解を生む状態となっている。従って、欄外に「内服を1回用量で表記しています」と記載するのではなく、<処方2>のように処方中に1回○○錠(カプセル)と記載するべきである。

<処方2>

処方 Rp.01 アモリンカプセル125mg 1回2Cap
1日3回 毎食後 7日分
Rp.02 タケプロンOD錠15mg 1回1錠
1日1回 朝食後 28日分
Rp.03 アムロジンOD錠5mg 1回1錠
1日1回 朝食後 28日分
―以下余白―
澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2019年7月9日

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