Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例45

ラキソベロン内用液を間違えて孫に点眼してしまった祖母

ヒヤリした!ハットした!

患児の祖母が、眼科から処方されていた「パタノール点眼液 0.1%」と間違って、「ラキソベロン内用液 0.75%」を患児に点眼してしまった。

<処方1>10歳の男児。内科クリニック。

ラキソベロン内用液 0.75% 10mL(1本) 1日1回 1回10滴

<効能効果>

●パタノール点眼液 0.1%(オロパタジン塩酸塩)
アレルギー性結膜炎

●ラキソベロン内用液 0.75%(ピコスルファートナトリウム水和物)

  • 1. 各種便秘症
  • 2. 術後排便補助
  • 3. 造影剤(硫酸バリウム)投与後の排便促進
  • 4. 手術前における腸管内容物の排除
  • 5. 大腸検査(X線・内視鏡)前処置における腸管内容物の排除

どうした?どうなった?

患児は便秘気味で、以前からラキソベロン内用液を何度か処方されていた。これまでは、患児の母親が本剤を取りに来ていた。従って、薬剤師はいつも母親に本剤の説明をしていた。
今回は、患児の祖母が本剤を受け取りに来た。薬の説明をして色々と話している時に、本剤を患児に点眼してしまったことが判明した。眼科から処方されているパタノール点眼液を患児に点眼する際に、容器の形が点眼剤と類似している本剤を誤って点眼してしまったとのことであった。幸いにも、すぐに眼科を受診し、大事には至らなかったとのことであった。

なぜ?

本剤が処方された初回に、点眼剤ではないことを母親に説明したが、他の家族(今回は祖母)が誤って患児に使用することは想定していなかった。
患児のお薬手帳の記載から、眼科からパタノール点眼液を処方されていることを把握していたが、「眼科からパタノール点眼液が処方されていますが、それと間違えないでくださいね。」というような、具体的な薬の名前を挙げた服薬指導ができていなかった。
この母親は、いつも説明を聞き流す傾向にあった。そのことを把握しておきながら、通常の注意喚起しかしていなかった。そのため、母親は祖母に点眼剤と似ているので気をつけるように伝達していなかった。
本剤の容器には「下剤」、「目には入れないこと」と赤字で書かれているが、祖母は高齢のため良く見えなかった。

ホットした!

患者(家族、代理人)の性格を考慮した服薬指導をする。言葉だけでなく、容器の表示を差しながら説明することも必要である。
薬歴をよく確認し、間違えそうな薬剤が交付されている場合には、十分に注意喚起する。

もう一言

●患者指導箋
ラキソベロン内用液の飲み方についての患者指導箋を、製薬メーカーが作成している。それには、赤地に白抜きで「このお薬は、下剤です。」、赤字で「ご注意:目には入れないこと」と記載されている。
詳しくは、ラキソベロン内用液のお薬の飲み方(成人小児用)L1(帝人ファー間株式会社)を確認すること。

ラキソベロン内用液のお薬の飲み方(成人小児用)L1(帝人ファー間株式会社)

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2017年6月12日

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