Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例133

ルミガン点眼液0.03% 夜の点眼不遵守の把握不足

ヒヤリした!ハットした!

患者は、ルミガン点眼液0.03%を必ず「夜」に点眼しなければならないと思っていたが、点眼できないことが何日もあり、不安であった。毎日の晩酌後に点眼をしようと考えていたが、すっかり忘れてそのまま寝てしまうことがほとんどであった。

<処方>60歳代の男性。病院の内科。処方オーダリング。

ルミガン点眼液0.03% 5mL 1回1滴 1日1回 夜 両眼に点眼

<効能効果>

●ルミガン点眼液0.03%<ビマトプロスト>
緑内障、高眼圧症

どうした?どうなった?

患者は高眼圧症で、数ヵ月前からルミガン点眼液0.03%を使用中であった。処方医は、ルミガン点眼による「霧視」の影響を軽減するために、使用時点を夜で処方することが多い。特に車の運転をする患者に対しては、このような配慮をしている。当該患者も通勤には自動車を使用している。

今回の来局時、初めて残薬を確認したところ、患者から以下の訴えがあった。

患者:「1日1回夜の使用とあるが、夜はうっかり点眼を忘れてそのまま寝てしまうので、点眼しない日が何日もある。」

薬剤師:「この点眼液は副作用軽減のため夜の点眼指示で処方されることが多いですが、朝の使用でも問題ないと思います。」

患者:「朝の方が点眼を忘れにくいかもしれない。」

薬剤師は、医師に疑義照会して、患者の使用状況を報告したところ、薬剤師の提案通り夜から朝へと点眼時点が変更となった。さらに、患者には、副作用軽減のために朝の洗顔前の点眼を勧めた。

なぜ?

<患者側の要因>
患者は、医師から薬の成分の影響で、本薬は夜に使用しないと問題があると説明されていたが、それが実施できないことに強い不安感をもっていた。
患者は毎日晩酌をしており、晩酌後に点眼をしようと考えていても、点眼のことはすっかり忘れてそのまま寝てしまうことがほとんどであった。

<医療者側の要因>
医師や薬剤師は、処方は「夜」に点眼になっているが、1日1回であれば、点眼時点を変更して、他の時間帯でも良いことをきちんと説明していなかった。即ち、医師や薬剤師は、夜の点眼の不遵守を早期に把握しておらず、点眼時点に関する上記の情報の提供が行えていなかった。
点眼薬が処方されてから数ヵ月間経過していたが、夜の点眼の不遵守の原因が「毎日晩酌をして、そのまま寝てしまう」ことによるという患者の生活形態を、医師や薬剤師が把握していなかった。

ホットした!

長期にわたって点眼薬を使用している患者であっても、「今の使用時点(服用時点)で問題ないですか?毎日使用できていますか?困ったことはありませんか?」など、定期的に使用法をチェックしながら服薬指導を行う様にする。

もう一言

本剤の点眼後、一時的に霧視があらわれることがあるため、症状が回復するまで機械類の操作や自動車等の運転には従事させないよう指導する必要がある。本剤による霧視の発現率は1.55%であったとの報告がある(インタビューフォームより)。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2021年3月08日

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