Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例137

パーキンソン病治療薬による病的賭博の副作用を発見

ヒヤリした!ハットした!

お薬手帳に記載された併用薬のビ・シフロール錠0.5mg<プラミペキソール塩酸塩水和物>がレキップCR錠2mg<ロピニロール塩酸塩>に変更されていた。その理由は、ビ・シフロール錠による病的賭博の副作用が発現したためであった。

[お薬手帳の記載]70歳代の女性。

<処方1>病院内科

ビ・シフロール錠0.5mg 3錠 1日3回毎食後

<処方2>

レキップCR錠2mg 1錠 1日1回朝食後

(整形外科の処方は、ロキソニンテープのみ)

<効能効果>

●ビ・シフロール錠<プラミペキソール塩酸塩水和物>
1.パーキンソン病
2.中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群(下肢静止不能症候群)

どうした?どうなった?

患者は、いつものように整形外科の処方箋を持って来局した。パーキンソン病で他院を受診しており併用薬があるため、いつも併用薬をチェックし、薬歴に記録している。
併用薬を確認すると、ビ・シフロール錠(処方1)からレキップCR錠(処方2)に変更されていた。患者に理由を尋ねると、「なぜか妙に元気になってお金をいっぱい使ってしまい、変更になった。」とのことであった。
患者は自身でも疑問を抱きインターネットで調べた際、ビ・シフロール錠による副作用であることがわかり、それを医師に相談したところレキップCR錠に変更となった。

なぜ?

プラミペキソールによる病的賭博の副作用が発現したと思われる。

ホットした!

パーキンソン病治療薬のドパミンD2アゴニスト作用によって病的賭博の副作用が発現する可能性は知っていたが、実際に発現した患者に遭遇したのは初めてだった。
本事例では、最初に患者本人が気付き、その後医師によって副作用が確認されたが、本副作用はどこの薬局でも気付ける可能性がある。したがって、患者インタビューにおけるチェック項目として認識する必要がある。

例を以下に示す。

薬剤師:「このお薬が始まってから、急に衝動買いが増えたとか、ギャンブルにはまってやめられないなどの症状はありませんか?」

患者本人は気付かないことが多く、周りのサポートが必要であることから、患者家族にも注意喚起しておくことも重要である。

もう一言

*ビ・シフロール錠の重要な基本的注意とその理由及び処置方法よりより抜粋

・レボドパ又はドパミン受容体作動薬の投与により、病的賭博(個人的生活の崩壊等の社会的に不利な結果を招くにもかかわらず、持続的にギャンブルを繰り返す状態)、病的性欲亢進、強迫性購買、暴食等の衝動制御障害が報告されているので、このような症状が発現した場合には、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。また、患者及び家族等にこのような衝動制御障害の症状について説明すること。
・2006年に欧州医薬品安全性監視作業部会は、すべてのレボドパ及びドパミン受容体作動薬(ドパミン作動薬)に対し、病的賭博、性欲亢進及び性欲過剰のリスクについて欧州製品概要に記載し注意喚起を行うように勧告した。

[文献]
ビ・シフロール錠0.125mg、ビ・シフロール錠0.5mgの医薬品インタビューフォーム
2020年10月(改訂第 18 版)、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社より

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2021年5月24日

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