Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例71

患者がメモした残薬の「錠数」を「日数」と勘違い

ヒヤリした!ハットした!

病院の看護師は患者から渡された残薬の錠数のメモを、日数だと判断して医師に伝えた。医師は残薬が多数あると認識したため、今回は処方しなかった。しかし、実際は錠数であり、薬が大幅に足りないことになってしまった。

<処方>60歳代の女性。病院の内科。処方オーダリング。

定期薬は78日分が処方されている。

*前回まで処方されていたボグリボースOD錠0.2mg「サワイ」、プラザキサカプセル110mgが処方されていない。

<効能効果>

●ボグリボースOD錠0.2mg「サワイ」<ボグリボース>
○糖尿病の食後過血糖の改善
(ただし、食事療法・運動療法を行っている患者で十分な効果が得られない場合、又は食事療法・運動療法に加えて経口血糖降下剤若しくはインスリン製剤を使用している患者で十分な効果が得られない場合に限る)
○耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制[OD錠0.2mgのみ]
(ただし、食事療法・運動療法を十分に行っても改善されない場合に限る)

●プラザキサカプセル110mg<ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩>
非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制

どうした?どうなった?

薬剤師は、今回の処方と前回の薬歴と比べ、ボグリボースOD錠0.2mg、プラザキサカプセル110mgが処方されていないことに疑問を持った。投薬時に、患者に自宅の残量を確認したところ、「残薬があると伝えたけど、なんだか足りない気がする。数量を書いた紙は病院に置いてきてしまった」とのこと。
薬剤師が病院に電話して確認したところ、対応した看護師は「《ボグリボースが80、プラザキサが90》と書いたメモをもらいました」と述べた。数字に単位は記載されていないことで、日数なのか錠数なのかはわからないが、看護師は日数と判断したとのこと。
薬剤師が患者本人に確認したところ、「錠数を書いて渡した。そんなすごい日数を余らせるわけないじゃない!」と述べた。その旨を病院に伝えたところ、「日数だと判断し、処方を削除していました。不足分を処方追加します」と回答があり、以下が処方追加された。

ボグリボースOD錠0.2mg 3錠 1日3回 毎食直前 52日分
プラザキサカプセル110mg 2Cap 1日2回 朝夕食後 33日分

患者から「自分では錠数で当たり前と思っていたけど、日数で書く人もいるんですね。家が遠いので、足りなくなってまた受診するのも大変なので、確認してもらえてとても助かりました。ありがとう」とお礼の言葉をいただいた。

なぜ?

患者が持参したメモに単位の記載がなく、患者と看護師の双方の認識(患者は錠数のつもり、看護師は日数と判断)に食い違いが起きてしまった。

ホットした!

患者に、今後、残薬のメモを作成する場合には、数字の後ろに錠、カプセルと記載するようにお願いした。
医療者(医師、看護師、薬剤師などの病院関係者、薬局薬剤師)は、数字のみのメモを渡された場合には、錠数なのか、カプセル数なのかを聴取する必要がある。

もう一言

類似例があるので以下に示す。

事例:80歳代の男性。サアミオン錠5mgを1日2回服用している。今回、他薬は70日分が処方されていたが、サアミオン錠は処方されていなかった。患者は、サアミオン錠5mgの残薬が80錠あるとのメモを持参して受診していた。メモを見た医師は残薬が80日分あると勘違いし、今回処方の70日分より10日分も余計にあるので、新たなる処方は必要ないと判断してしまった。
*患者のメモに「錠」と記載されていたかどうかは不明である。

※医薬品の効能・効果、用法・用量、使用上の注意等の詳細につきましては、各製品の最新の添付文書をご参照ください。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2018年7月3日

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