Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例142

セレスタミンにプレドニン追加でステロイドが重複

ヒヤリした!ハットした!

湿疹に対して、前回セレスタミン配合錠<ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩>が処方されていたが、今回、更にプレドニン錠<プレドニゾロン>が追加され、ステロイドが重複していた。

<処方1>10歳代の女子生徒。(体重48kg)。病院の小児科。前回。

セレスタミン配合錠 3錠 1日3回 毎食後3日分

*ベタメタゾン0.25mg、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩2mgを含有している。

<処方2>今回(変更前)。

セレスタミン配合錠 3錠 1日3回 毎食後3日分
プレドニン錠5mg 8錠 1日3回 毎食後(3-3-2)3日分

<処方3>今回(変更後)。

ポララミン錠2mg 3錠 1日3回 毎食後3日分
プレドニン錠5mg 8錠 1日3回 毎食後(3-3-2)3日分

<効能効果>

●セレスタミン配合錠<ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩>
・蕁麻疹(慢性例を除く)、湿疹・皮膚炎群の急性期及び急性増悪期、薬疹、アレルギー性鼻炎
●プレドニン錠5mg<プレドニゾロン>
・内科・小児科領域、外科領域、整形外科領域、産婦人科領域、泌尿器科領域、皮膚科領域、眼科領域、耳鼻咽喉科領域における種々疾患
●ポララミン錠2mg<d-クロルフェニラミンマレイン酸塩>
・蕁麻疹、血管運動性浮腫、枯草熱、皮膚疾患に伴う瘙痒(湿疹・皮膚炎、皮膚瘙痒症、薬疹)、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、感冒等上気道炎に伴うくしゃみ・鼻汁・咳嗽

どうした?どうなった?

患者には前回、全身の湿疹のためにセレスタミン配合錠<処方1>が処方されていた(今回と同じ病院であるが、医師は異なる)。しかし、あまり症状が改善しないため、今回セレスタミン配合錠にプレドニン錠が処方追加された<処方2>。

セレスタミン配合錠にはベタメタゾンが配合されており、ステロイドが重複するため医師に直接疑義照会したところ、『それではプレドニンを中止してください。』と回答があった。

患者の症状があまり改善していないことから、処方予定であったプレドニン錠を全て中止するのは適切ではないように思えた。そこで、医師には、セレスタミン配合錠にはリンデロン錠と同じ成分のステロイドが配合されており、プレドニゾロン換算では5~7.5mg相当になることを伝え、セレスタミン配合錠からステロイドを除いたポララミン錠での代替を提案した。すると、セレスタミン配合錠はポララミン錠2mgに変更されて、プレドニンは40mg/日のまま処方されることになった<処方3>。

なぜ?

医師はセレスタミン配合錠にステロイドが配合されていることを失念していた。薬名が○○○○ミンであったために、クロルフェニラミン系統のヒスタミンH1-遮断薬だと思い込んでいた可能性もある。

ホットした!

今回のような疑義照会を行う場合、単にステロイドの重複を伝えるだけではなく、異なるステロイドが含有されていた場合には、プレドニン換算などで力価を比較しやすいように伝えることが必要である。また、疑義照会を行う前に、代替薬の提案も検討しておく。

もう一言

ステロイド内服薬としては、大きく分けて3種類が使用可能である(表)。

表.経口投与で用いる各種ステロイドの投与量と相当量

種類 抗炎症作用
(糖質コル
チコイド活性)
Na貯留効果
(鉱質コル
チコイド活性)
相当量
(mg)
通常の
1日量
(mg)
血中濃度
半減期
(時間)
生物学的
半減期
(時間)
〈短時間作用型〉
コルチゾール
(ヒドロコルチゾン)
1 1 20 10-120 1.5-2 8-12
コルチゾン 0.8 0.8 25 12.5-150 0.5 8-12
〈中間作用型〉
プレドニゾロン 4 0.6 5 5-60 2.1-3.5 18-36
メチルプレドニゾロン 5 0.5 4 4-48 >3.5 18-36
トリアムシノロン 5 0 4 4-48 2->5 18-36
〈長時間作用型〉
デキサメタゾン 20-30 0 0.75 0.5-8 3-4.5 36-54
ベタメタゾン 20-30 0 0.6 0.5-8 3-5 36-54

vanderGoesMC,JacobsJWG.GlucocorticoidTherapy.In:Firestein&Kelley'sTextbookofRheumatology,11thed.Elsevier,2020.p988、各医薬品の添付文書をもとに作成

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2021年7月12日

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