Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例69

便秘薬に納豆菌が含有!ワーファリン服用患者が併用しそうに!

ヒヤリした!ハットした!

ワーファリン錠1mg<ワルファリンカリウム>を服用中の患者から市販の便秘薬と併用してよいかと尋ねられて、薬剤師は大丈夫だと回答した。しかし、実はその便秘薬には納豆菌が含まれていた。

<処方>70歳代の女性。内科クリニック。処方オーダリング。

ワーファリン錠1mg 2錠 1日1回 朝食後 28日分 他

<効能効果>

●ワーファリン錠1mg<ワルファリンカリウム>
血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、緩徐に進行する脳血栓症等)の治療及び予防

どうした?どうなった?

患者は、心房細動のためワーファリンを服用していた。最近、便秘傾向となり、ドラッグストアで便秘薬「ザ・ガードコーワ整腸錠α3+」(第3類医薬品)を購入した。しかし、ワーファリンを服用しているため、医師か薬剤師に聞いてから服用しようと考え、まだ服用していなかった。<処方>の薬を受け取りに薬局に訪れた際、患者は薬剤師に、「市販の便秘薬を飲んでよいか?」と尋ねた。
薬剤師は、便秘薬の商品名を尋ねたが、患者は忘れてしまっていて不明であった。しかし薬剤師は、一般的に便秘薬なら併用可能と思い込み、「併用して大丈夫でしょう」と患者に回答した。
その後、薬剤師は何となく気になり、患者宅に電話をして商品名を確認した。すると、患者が購入した市販の便秘薬は「ザ・ガードコーワ整腸錠α3+」であり、納豆菌を含有していることが判明した。患者にはザ・ガードコーワ整腸錠α3+はワーファリンと飲み合わせに問題がある可能性があるため、服用を避けるよう伝えた。また、十分な確認なしに「併用して大丈夫」と回答したことを謝罪した。

なぜ?

薬剤師は、市販の便秘薬に納豆菌が含まれている商品があることを把握していなかった。
また、商品名が不明であるにもかかわらず、市販の便秘薬と言われて塩類下剤だと思い込み、正確な商品名の確認を怠った。

ホットした!

・市販薬は配合剤が圧倒的に多い。また、同じブランド名でも、製品によって成分が異なることもある。市販薬については、商品名を確実に把握して成分を確認する。
・ワーファリン服用中の患者には、納豆菌含有の市販薬を避けるように情報提供する。

もう一言

●ザ・ガードコーワ整腸錠α3+について
本剤には9錠(成人1日量)中に、納豆菌末10mg、ラクトミン(乳酸菌)30mg、ビフィズス菌30mg、ジメチルポリシロキサン84.6mg、センブリ末30mg、ケイヒ末30mg、ウイキョウ末30mg、メチルメチオニンスルホニウムクロリド30mg、沈降炭酸カルシウム300mg、水酸化マグネシウム300mg、パントテン酸カルシウム22.5mgが含まれている。
添付文書上の使用上の注意として、「相談すること」の項目に以下が記載されている。
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください
(1)医師の治療を受けている人。
(2)薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人。
(3)次の診断を受けた人。腎臓病、甲状腺機能障害
(4)抗凝血剤「ワルファリン」を服用している人

●納豆菌について
納豆中のビタミンK含有量はホウレン草やキャベツに比べ特に多いわけではないにもかかわらず、ワルファリンの作用に拮抗するのは、納豆菌が腸内でビタミンKを産生するためと推察されている。一般に細菌は腸内でビタミンKを合成するとされているが、納豆菌は細菌のなかでも特にビタミンK合成能力が強いBacillus subtilisに属している。
青﨑正彦、岩出和徳、越前宏俊 監修「Warfarin適正使用情報」第3版、2006年12月発行、エーザイ株式会社

ワルファリンを服用中の患者における血液凝固能に対して、納豆菌末がどの程度の影響を与えるか具体的に知られていない。しかし、ワルファリンを服用中の患者の場合、納豆菌を含有するOTC薬などの服用は、たとえビタミンKを含有しないものでも避けることが望ましいだろう。

納豆菌を含有する代表的なOTC薬を以下に示す。

製品名 分類 販売会社 納豆菌 1日量中の含量
コバガード 第3類医薬品 小林製薬 糖化菌(納豆菌)(バチルススブチリスBN株) 120mg
ザ・ガードコーワ整腸錠α3 第3類医薬品 興和 納豆菌末 10mg
新コンチーム錠 第3類医薬品 日邦薬品工業 納豆菌末 100mg
パンラクミンプラス 第3類医薬品 第一三共ヘルスケア 納豆菌末 10mg
フェカルミンゴールド錠 第3類医薬品 エバース・ジャパン 納豆菌末 10mg
フェカルミンスリーE顆粒 指定医薬部外品 エバース・ジャパン 納豆菌末 50mg
澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2018年6月13日

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