Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例31

二種類のツムラの漢方薬が混ざっているのに気づかず誤調剤

ヒヤリした!ハットした!

精神・神経内科よりツムラ柴胡桂枝乾姜湯[サイコケイシカンキョウトウ]が処方された。しかし、薬剤師は、一部をツムラ清心蓮子飲[セイシンレンシイン]で誤調剤してしまった。

<処方1>50歳代の女性。病院の精神・神経内科。オーダー/印字出力。

ツムラ柴胡桂枝乾姜湯エキス顆粒(医療用) 3包 1日3回 14日分

<効能効果>

ツムラ柴胡桂枝乾姜湯エキス顆粒
体力が弱く、冷え症、貧血気味で、動悸、息切れがあり、神経過敏のものの次の諸症:更年期障害、血の道症、神経症、不眠症

ツムラ清心蓮子飲エキス顆粒
全身倦怠感があり、口や舌が乾き、尿が出しぶるものの次の諸症:残尿感、頻尿、排尿痛

どうした?どうなった?

柴胡桂枝乾姜湯(ツムラ11)の42包を調剤しなければならないところ、数包だけ清心蓮子飲(ツムラ111)が混じっていた。調剤者はそれに気付かず、そのまま鑑査者に渡してしまった。鑑査者が間違いに気がつき、調剤者に指摘して確認したところ、柴胡桂枝乾姜湯(ツムラ 11)が置いてある場所に清心蓮子飲(ツムラ 111)の個装箱が置かれていた。

なぜ?

ツムラの製品には42包入りの小個装箱と189包入りの大個装箱がある。この薬局では、どちらも大個装箱(189包入り)を購入しており、色が同じで番号も似ているため、充填時に間違えて置いていたと考えられる。

調剤者は、元々は柴胡桂枝乾姜湯(ツムラ11)が置かれている場所なので、他の薬の箱が置かれているとは思わず、個装箱の名前を確認せずに色のみを見て調剤してしまった。

ホットした!

漢方薬は、末尾の数字が同じものは個装箱や分包の色も同じであることを頭に入れておき、調剤時はもちろん、棚に戻す際にも注意する。

調剤棚への充填や、棚に薬を戻す場合には指差呼称を心がけ、可能な限り、他の薬剤師と2人で確認する。

調剤時、鑑査時には、色だけでなく必ず数字を確認する癖をつける。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2016年11月1日

バックナンバー

希望に合った求人を紹介します

リクナビ薬剤師の転職お役立ち情報

プライバシーマーク

リクナビ薬剤師を運営する株式会社リクルートメディカルキャリアは、プライバシーマークを取得しており、お客さまの個人情報を適切に管理し、目的に沿って正しく利用します。