Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例12

デュロテップ貼付中に岩盤浴に行こうとした患者

ヒヤリした!ハットした!

患者は、デュロテップMTパッチ(一般名:フェンタニル)を貼付したまま、岩盤浴に行くつもりだった。

<処方1>70歳代の男性。処方オーダリング。癌性疼痛。

デュロテップ MTパッチ2.1mg 4枚 3日に1度貼り替え

<効能効果>

  • 非オピオイド鎮痛剤及び弱オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記疾患における鎮痛
    (ただし、他のオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する場合に限る。)
    • ・中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛
    • ・中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛

どうした?どうなった?

患者は、友人から「岩盤浴は痛みを和らげる」と聞き、近々岩盤浴に行こうとしていた。服薬指導中にこのことが判明した。薬剤師は、貼付部位が熱源に接すると、薬剤の放出量が増え、作用が増強する可能性があることを話した。パッチを使用している間は、岩盤浴に行くのはやめるよう忠告した。

なぜ?

患者はパッチを貼っていることが、岩盤浴に行くことの障害になるとは思ってもいなかった。
薬剤師はデュロテップパッチを交付する際、使用法の注意を患者に説明していた。入浴を含めた、熱による吸収量の増加についても話したと考えられるが、その危険性を患者に伝えることができなかったのかもしれない。
岩盤浴とは、40度程度に熱せられた岩盤の上に20~30分程度、寝転んで体を温めるサウナの一種である。

ホットした!

デュロテップパッチなどのフェンタニル貼付剤は、熱による吸収量の増加に注意しなければならない。日常生活でも、入浴や電気毛布など、さほど熱くならない熱源でも気をつけるよう、指導を徹底したい。また、貼付中の激しい運動も避けるべきである。
フェンタニルはパッチから放出された後、いったん皮膚に貯留し徐々に血中に移行する。パッチをはがした後でも、貼付していた部位が温められると、血中への移行が加速する可能性がある。使用中は貼り替えの途中でも、同様の注意が必要である。

もう一言

デュロテップMTパッチを使用する患者に対して、暖房器具の使用時や入浴の際に注意することがあげられている。

●パッチを貼っている部位が直接、熱源部分に接しないようにご指導ください。

・こたつ  ・電気パッド  ・電気毛布  ・カイロ  ・赤外線灯・湯たんぽ ・加温ウォーターベッド など

●熱いお風呂に入ることは避けるようご指導ください。

汗をかくほどの熱いお風呂やサウナには入らないようご注意ください。なお、パッチを使用している最中でも、ぬるめのお風呂(40度程度)に入ったり、シャワーを浴びることができます。

本剤貼付部位の温度が上昇すると成分であるフェンタニルの吸収量が増加するため、過量投与になり、呼吸抑制等の重大な副作用が発現するおそれがあります。特に入浴に際しては、貼付部位を上腕部あるいは前胸部にするなどして、なるべくパッチを直接湯船につけないように入浴すること、貼付部位を避けてシャワーを浴びるよう指導してください。尚、剥がした後も皮膚に成分が残っていますので、剥離後も同様にご注意ください。

医師・薬剤師向け患者指導資料(ヤンセンファーマ株式会社)より

岩盤浴とは、40度程度に熱せられた岩盤の上に 20-30 分間程度、寝転んで体を温め、汗をかくサウナ形式の風呂の一種である。天然浴もあるが、お湯が要らないため、最近では都市部に人工岩盤浴の店舗を見受けることが多い。発汗作用により新陳代謝の活発化が図れるなどの効果があると言われているが、その効能の詳細は明らかではない。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2016年2月5日

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