Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例43

チモプトール点眼液で不整脈、今回、ザラカム配合点眼液が処方

ヒヤリした!ハットした!

過去に「チモプトール点眼液 0.25%」で“不整脈”を起こしたことがある患者に「ザラカム配合点眼液」が処方された。

<処方1>60歳の女性。病院の眼科。処方オーダリング。

ザラカム配合点眼液 5mL(1本) 1日1回 両眼

<効能効果>

●チモプトール点眼液(チモロールマレイン酸塩)
緑内障、高眼圧症
●ザラカム配合点眼液(ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩)
緑内障、高眼圧症

どうした?どうなった?

初めて当薬局に来局した患者である。眼科にかかり、ザラカム配合点眼液が処方されていた。初回質問票の既往歴の項目に、患者は“心臓病”と記入していた。
投薬時のインタビューで、心臓病のことについて詳しく話を聞いたところ、以前にチモプトール点眼液を使って“不整脈”を起こしていたことが判明した。
そこで、医師に疑義照会を行い、ザラカム配合点眼液はチモプトール点眼液と同一成分を含有する配合剤であること、当該患者にはチモプトール点眼液による不整脈の副作用歴があることを伝えた。医師は、心臓病について患者から聴取し、症状を勘案して処方したとのことだったが、チモプトール点眼液による副作用歴については把握していなかった。問い合わせの結果、タプロス点眼液<タフルプロスト>とエイゾプト懸濁性点眼液<ブリンゾラミド>に処方変更となった(処方2)。

<処方2>

タプロス点眼液 0.0015% 2.5mL(1本) 1日1回 両眼
エイゾプト懸濁性点眼液 1% 5mL(1本)  1日2回 両眼

なぜ?

医師は、既往歴・現病歴は確認していたが、過去の処方歴・副作用歴は確認していなかった。
医師は、ザラカム配合点眼液にチモロールが含有されていることを認識していなかった、あるいは、チモロールは点眼剤であっても全身作用に注意が必要であることを認識していなかった可能性がある。

ホットした!

医師は、β遮断薬の点眼剤を処方する場合には、禁忌・慎重投与の疾患のみならず、副作用歴(特に全身系副作用)の確認を徹底する。
薬剤師は、患者インタビューの際には、禁忌・慎重投与の疾患のみならず、副作用歴(特に全身系副作用)の確認を徹底する。

もう一言

チモロール点眼剤の全身作用
点眼した薬液の一部は、鼻涙管を通って嚥下され、消化管から吸収される可能性がある。そのため、チモロールなどのβ遮断薬の点眼剤では、β遮断作用による全身性の副作用があらわれるおそれがある。特に、気管支平滑筋収縮作用により、喘息発作の誘発・増悪がみられるおそれがあることから、「気管支喘息又はその既往歴、気管支痙攣、重篤な慢性閉塞性肺疾患」のある患者には禁忌である。また、陰性変時・変力作用により、症状を増悪させるおそれがあることから、「コントロール不十分な心不全、洞性徐脈、房室ブロック(II、III度)、心原性ショック」のある患者には禁忌、「肺高血圧による右心不全、うっ血性心不全」のある患者には慎重投与である。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2017年5月9日

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