
OD錠が口の中で溶かすことは悪いこと!?
エックスフォージ配合OD錠<バルサルタン/アムロジピンベシル酸塩>を服用中の患者が、口の中で錠剤が溶けるのは悪いことだと思い込み、口に入れてから急いで飲み込むことがストレスとなっていた。
<処方1>60歳代の女性。内科クリニック。
| タクロリムス錠1mg | 1錠1日1回夕食後42日分 |
|---|---|
| タクロリムス錠1.5mg | 1錠1日1回夕食後42日分 |
| ケアラム錠25mg | 1錠1日1回朝食後42日分 |
| レバミピド錠100mg | 1錠1日1回朝食後42日分 |
| プレドニゾロン錠2.5mg | 2錠1日2回朝夕食後42日分 |
| エックスフォージ配合OD錠 | 1錠1日1回夕食後42日分 |
<効能効果>
●エックスフォージ配合OD錠・配合錠<バルサルタン/アムロジピンベシル酸塩>
高血圧症
患者はリウマチ、高血圧症等で近医を受診し、<処方1>を継続服用中である。以前はディオバン錠80mg(普通錠)<バルサルタン>を服用していたが、血圧上昇のため約半年前にエックスフォージ配合OD錠へ切り替えとなった。
今回の服薬指導時、患者から相談された。
患者:「エックスフォージOD錠が大きくて飲み込みづらいため、もう少し小さいのはないか?」
薬剤師:「(OD錠の特性を説明しながら)この薬は大きいですが、大きいまま飲み込まなくても大丈夫ですよ」
患者:「え!そうなの?錠剤が口の中で溶けるのは悪いことだと思っていました。口に入れたら急いで飲み込んでいました。結構ストレスになっていた」
薬剤師は、OD錠の特性を改めて説明し、エックスフォージ配合OD錠は口の中で溶かして小さくしてから服用してもらうこととなった。
その後、飲みやすさは改善し、問題なく継続服用できている。血圧の変動も起こっていない。
エックスフォージ配合OD錠は、直径:10.0mm、厚さ:5.5mmと比較的大きな錠剤である。エックスフォージ配合OD錠の服薬指導時において、OD錠の特性が患者に伝わっていなかった。
ディオバン錠80mg(普通錠)からエックスフォージ配合OD錠への切り替えだったため、配合剤についての説明が中心となってしまい、OD錠の特性まで言及できていなかったと思われる。なお、初回指導時の薬歴を確認したが、OD錠の特性についての説明の有無は記載されておらず、説明漏れの可能性もあった。
また、エックスフォージ配合OD錠の初回指導時には、便秘症状のための下剤、手首、足首、肩に使うための湿布が処方追加されており、変更に関すること以外にも説明事項が多かった。
患者とのコミュニケーションは比較的良好であるが、血圧が一日中高いことに関する診察時の相談の結果や、エックスフォージの服用時点を朝食後から夕食後へ切り替えるなど、毎回確認する事項があった。そのため、初回処方より6ヵ月後の今回に至るまでOD錠の服薬状況を把握するのが遅くなってしまった。
OD錠は薬剤師にとって当たり前の剤形でも、当該患者にとっては初めての剤形である。初回指導時から複数回にわたり説明を繰り返すことで、患者のアドヒアランスの低下を防ぐことができると感じた。新規の剤形が追加された場合は、薬歴に剤形説明の有無を記載し、次回指導時に服薬状況を必ず確認する。
本事例は、エックスフォージ配合OD錠が患者にとって大きく※、飲み込みづらかったかったことで発覚した。患者にとって飲み込みづらい錠剤の大きさには個人差があるが、処方変更で錠剤の大きさが変わった際には、飲み込みやすさも検討、確認し、患者アドヒアランスが低下しないよう努める。
※エックスフォージ配合OD錠の大きさ:直径10.0mm、厚さ5.5mm
ディオバン錠80mgの大きさ:直径:8.6mm、厚さ:3.7mm
患者の思い込みによる服薬トラブル、ヒヤリハットは、薬剤師からの事前説明で回避することが可能と考えられる。どのようなケースで患者が思い込みをしたか、過去のヒヤリハット事例を薬局内でも共有し、今後の服薬指導に役立てていく必要がある。
以下に剤形変更でコンプライアンスが低下した事例を示す。
コンプライアンス良好の患者が剤形変更によって飲み間違い、何が原因?
<処方1>80歳代の男性。病院の整形外科。
| リリカOD錠75mg | 1錠1日1回夕食後14日分 |
|---|
<処方2>病院の脳神経外科(処方1と同日)
| クロピドグレル錠25mg「SANIK」 | 2錠1日1回朝食後14日分 |
|---|
これまでコンプライアンスに問題のなかった患者が、リリカカプセル75mg<プレガバリン>からリリカOD錠75mgへ剤形変更したことで、飲み間違いを起こした。
患者は高齢ではあるが、コンプライアンスは問題なく、PTPシートでの調剤を希望していた。処方元病院の採用品が変わったため、<処方1>は前回処方からリリカカプセル75mgからリリカOD錠75mgへ変更になった。また、リリカが剤形変更となった同日、脳神経外科からのクロピドグレル錠「SANIK」が、75mgを1錠から25mgを2錠へ減量となった。
剤形変更後、次の来局時に服薬状況を確認したところ、飲み間違いが数回あったことが発覚した。リリカをカプセルから錠剤へ変更したことで飲み間違いがあったため、整形外科へ疑義照会し、リリカカプセル75mgへ戻すことになった。その後、リリカカプセル75mgで飲み間違いなく服用できている。
患者がもともと服用していたリリカカプセル75mgおよびクロピドグレル錠75mg「SANIK」のPTPシート外観を見ると前者は赤系、後者は青系でありたやすく区別ができる。両剤服用中、コンプライアンスは問題なかった。次に、飲み間違いを起こしたリリカOD錠75mgおよびクロピドグレル錠25mg「SANIK」のPTPシート外観は前者が赤系、後者が赤系であり、区別がつけにくかった。
さらに、リリカOD錠75mgとクロピドグレル錠25mg「SANIK」は、服用時点が異なるため薬袋は別々で調剤していた。リリカOD錠75mgには濃い色のラインが入っており、錠剤の大きさも違い、1回の服用錠数も異なるが、PTPシートはどちらも赤系の色である。
今回、リリカがカプセルから錠剤、クロピドグレルが青系から赤系のPTPシートに変わったことで飲み間違いが生じた。本事例の誤服用は、リリカの剤形変更とクロピドグレルの減量が同じ日に行われ、どちらも赤系のPTPシートの錠剤になってしまったことが要因の一つといえる。
当該患者はコンプライアンス良好であったため、飲み間違いのリスクは少ないという思い込みがあった。しかし、PTPシートの細かい部分や薬名までは確認せず、錠剤であることとシートの色合いで薬を判別し、服用していたと考えられる。高齢であることも考慮すべきであった。
[国試対策問題]
問題:60歳代女性。高血圧症に対してエックスフォージ配合OD錠を服用している。患者は「錠剤が大きくて飲みにくい。口の中で溶けるのは悪いことだと思い、急いで飲み込んでいた」と薬剤師に相談した。この患者への薬剤師の対応として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 OD錠は口腔内で溶かしてから服用できることを説明する。
2 口腔内で溶けると薬効が低下するため、水で速やかに飲み込むよう指導する。
3 患者が錠剤の大きさや服用方法に不安を感じていないか確認する。
4 配合剤であることを説明すれば、剤形に関する説明は不要である。
5 服薬時のストレスは治療効果に影響しないため、服用方法の確認は不要である。
【正答】1、3
1 正:OD錠は口腔内崩壊錠であり、口腔内で崩壊させてから服用できる剤形である。患者が「口の中で溶けるのは悪いこと」と誤解している場合、剤形の特徴を具体的に説明し、不安を軽減することが重要である。
2 誤:OD錠は、口腔内で崩壊するよう設計された剤形である。口腔内で崩壊させること自体が薬効低下につながるわけではないため、「必ず速やかに飲み込む」と指導するのは不適切である。
3 正:患者は、錠剤が大きく飲みにくいことがストレスになっていた。薬剤師は服薬方法だけでなく、飲み込みやすさ、患者の思い込み、不安、服薬時の負担を確認する必要がある。
4 誤:配合剤への変更時には、成分や薬効の説明に加えて、剤形の特徴や服用方法も説明する必要がある。特にOD錠が初めての患者では、口腔内で崩壊させてよいことを理解していない場合がある。
5 誤:服薬時のストレスはアドヒアランス低下につながる可能性がある。患者が負担を感じている場合は、服用方法を確認し、必要に応じて説明や処方提案を行うことが重要である。
*本稿では、全国各地において収集したヒヤリ・ハット・ホット事例について、要因を明確化し、詳細に解析した結果を紹介します。事例の素材を提供していただいた全国の薬剤師の皆様に感謝申し上げます。

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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