Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例02

エチゾラムの後発品の方が先発品より睡眠効果が強かった患者

ヒヤリした!ハットした!

患者から、後発品のエチゾラム錠0.5mg「AAA」では熟睡しすぎるとの訴えがあった。

<処方1>50歳代の女性。病院の内科。オーダー/印字出力。

エチゾラム錠 0.5mg
1錠 1日 1回 寝る前 28日分

*「AAA」は AAA社(仮名)の製品を意味する。

<処方2>

デパス錠 0.5mg
1錠 1日 1回 寝る前 28日分

<効能効果>デパス錠、エチゾラム錠

  • ●神経症における不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害
  • ●うつ病における不安・緊張・睡眠障害
  • ●心身症(高血圧症、胃・十二指腸潰瘍)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
  • ●統合失調症における睡眠障害
  • ●下記疾患における不安・緊張・抑うつおよび筋緊張
    頸椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛

どうした?どうなった?

患者はこれまで、不眠症に対して先発医薬品の「デパス錠 0.5mg」が処方され、特に問題なく服用していた。前回の来局時に、処方せんがデパス錠からエチゾラム錠 0.5 mg「AAA」に変更されていたため、患者へ後発医薬品の説明を行い、医師の指示による変更であることを伝えたところ、患者は一応は了承したようであった(処方1)。

1カ月後の今回の来局時に、患者は「医師には言ってないのだが、デパスに戻してほしい。熟睡しすぎて寝返りも打てない。同じ姿勢でずっと寝ていると、乳がんの手術後のため腕から脇がつっぱって痛い。」と訴えた。薬剤師は、後発医薬品の方が作用が強いと聞いて驚いた。

本件について医師に疑義照会をしたところ、以前に服用していたデパス錠に処方が変更された(処方2)。

なぜ?

当該薬剤師は、後発品は決して先発品と同等ではないと一応は考えており、一般的なイメージとして効き目が悪いという印象のみがあった。しかし、今回のケースの様に、後発品の中には効き過ぎる薬剤も存在することは全く予測していなかった。現時点では、原因は不明である。

ホットした!

薬剤師は、今後は後発品に変更になった患者へモニタリングする際に、効きが良すぎる場合もあることを念頭にいれる必要があり、それに伴い、副作用の発現とその増強にも注意しなくてはいけないと再認識した。

もう一言

先発品と後発品は、主薬は全く同じであるが、添加物が相違しているため、消化管内での動態(移動など)、小腸吸収において個人差が現れる場合があることが推測される。これはあくまでも個人差の問題であって、先発品と後発品が同等ではないということを意味している訳ではない。極端な例を挙げると、先発品の普通錠を何のトラブルもなく服用している患者が、先発品のOD錠(口腔内崩壊錠)に切り替えた時に、その味の悪さから吐いてしまったとしよう。後者では当然、治療効果が得られない。このOD錠を後発品と捉えれば、先発品と後発品間の違いが特定の個人に起こったと理解できる。先発品と後発品は同等であるが、個人差の問題は常に考えておく必要はある。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2015年9月3日

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