Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例85

メイラックスとメレックスの名称で混乱?一般名処方の注意点

ヒヤリした!ハットした!

医師は「メイラックス錠(一般名:ロフラゼプ酸エチル)」を処方したつもりで、今回誤って「メレックス錠(一般名:メキサゾラム)」を処方してしまっていた。医師の意図としては、メイラックス錠1mgを処方する認識で相違なかったが、頭の中でメレックス錠1mgを想起したことで、その一般名であるメキサゾラム錠1mgを選択し、処方箋が発行されてしまった。

<処方>80歳代の男性。病院の循環器科。処方オーダリング。

【般】メキサゾラム錠1mg 2錠 1日2回 朝夕食後 28日分
他9種類

<効能効果>

●メレックス錠0.5mg・錠1mg・細粒0.1%<メキサゾラム>
○神経症における不安・緊張・抑うつ、易疲労性、強迫・恐怖・睡眠障害
○心身症(胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸症候群、高血圧症、心臓神経症、自律神経失調症)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・易疲労性・睡眠障害

●メイラックス錠1mg・錠2mg・細粒1%<ロフラゼプ酸エチル>
○神経症における不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
○心身症(胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸症候群、自律神経失調症)における不安・緊張・抑うつ・睡眠障害

どうした?どうなった?

患者はこれまで、「メイラックス錠1mg2錠1日2回朝夕食後」を継続服用していた。今回、初めて一般名で処方されたが、これまで服用していたメイラックス錠1mg<ロフラゼプ酸エチル>ではなく、メキサゾラム錠1mgが処方されていた。

両剤は薬効が類似しており、用法用量に問題はなかった(同じであった)が、商品名が類似していたため、誤処方したのではないかと薬剤師は考え、疑義照会を行った。結果、医師はこれまでと同じメイラックス錠を処方したつもりであったが、メレックス錠を誤選択してしまったことが発覚した。

なぜ?

一般名の「ロフラゼプ酸エチル」と「メキサゾラム」は全く異なるが、商品名の「イラックス」と「ックス」が類似しているため、誤処方が発生した。

処方箋発行元の病院のオーダリングシステムでは、一般名処方をする場合、商品名を選択すると自動的に一般名に変換される。医師は、これまでメレックス錠を処方した経験もあった。一般名処方しようとして商品名でオーダリングする際、メイラックス錠を選んだつもりが、商品名類似のためメレックス錠を選んでしまい、そのままメレックスの一般名処方であるメキサゾラムとなってしまった。当該病院のオーダリングシステムは、頭二文字入力であるので、通常なら「メイ」と「メレ」で間違いようがない。おそらく、頭の中でメイラックスがメレックスに切り替わってしまったと思われる。

ホットした!

一般名処方は、医師、薬剤師ともまだ慣れていないために、間違ってしまう可能性があることを常に念頭にいれる。
初めて一般名処方された場合には、薬歴やお薬手帳から前回処方薬との比較を必ず行う。

もう一言

「メイラックス」と「メレックス」の類似度
薬名の類似度を数値的に表す指標として、東京大学大学院薬学系研究科・育薬学講座などでは「m2-vwhtfrag」を開発している。この指標によると、「メイラックス」と「メレックス」の類似度(m2-vwhtfrag)は0.94と計算される。この値が0.456よりも大きいと、薬名類似により医薬品の取り違えが生じる可能性が高いと予測される。

(「ルクライ」薬名類似度検索システム)

※医薬品の効能・効果、用法・用量、使用上の注意等の詳細につきましては、各製品の最新の添付文書をご参照ください。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2019年2月12日

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