Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例08

リスペリドン内用液をお茶漬けに入れて服用していた

ヒヤリした!ハットした!

服薬状況を家族にインタビューしたところ、リスパダール内用液には苦みがあるためご飯にかけ、さらに患者の好物である御茶漬けにして飲ませているとのことだった。お茶との混合により混濁とともに含量が低下する可能性があり不適切な行為である。

<処方1>60歳代の女性。病院の内科。処方オーダリング。

リスパダール内用液 1mg/mL
2mL 1日 2回 朝夕食後 14日分

<リスパダール内用液 1mg/mLの効能効果>

  • 統合失調症

どうした?どうなった?

患者には前回からリスパダール内用液 1mg/mL<リスペリドン>が処方されていた。今回は2回目の来局であったので、処方せんを持参した家族に服用できているかどうかをインタビューしたところ、苦みがあるため患者の好物である御茶漬けにして飲ませているとのことだった。

なぜ?

初回の投薬担当者が、好きな飲み物に混ぜて服用するように服薬指導したとのことであるが、その際に避けるべき飲料について詳しい説明をしていなかったと考えられた(または避けなければならないことに認識がなかった可能性がある)。

ホットした!

今回の件で、飲食物と薬の併用に関する知識が薬剤師によって一定していなかった事が判明したため、リスペリドンと茶葉抽出飲料との配合変化に関する情報を共有することとした。

もう一言

リスパダール内用液1mg/mLは食事の影響は受けないが、「茶葉抽出飲料(紅茶、ウーロン茶、日本茶など)およびコーラ」との併用で、含量が低下することが知られている。例えば、「午後の紅茶」(ストレートティー)との混合直後で、混濁とともに含量が21%に低下、「紅茶」(ティーバッグ、70~80度に加温)では55%に低下、「烏龍茶」で23%に低下、「おーいお茶」(緑茶、ペットボトル)で87%に低下した。茶葉抽出飲料の中では、日本茶の混合直後におけるリスペリドンの含量低下は他の茶葉抽出飲料に比べて軽度であるが、御茶漬けに入れるのは避ける必要がある。ただし、本剤を通常の茶類で服用した場合、どの程度の配合変化の問題が発生するか不明である。また、含量低下のメカニズム、治療効果への影響、有害作用発生の可能性などについては全く不明である。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2016年1月6日

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