Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例03

SG配合顆粒と思い手元にあった食品の乾燥剤を飲んでしまった

ヒヤリした!ハットした!

夜中に頭痛で目が覚めた際に、テーブルに置いていた乾燥剤(お菓子に入っていたもの)をSG配合顆粒と勘違いして誤飲してしまった。

<処方1>78歳の男性。病院の眼科。オーダー/印字出力。

ラックビー微粒 N
3g 1日 3回 毎食後 14日分
SG配合顆粒
3g 1日 3回 毎食後 14日分
レンドルミン錠 0.25mg
1錠 1日 1回 就寝前 14日分
デパス錠 0.5mg
1錠 1日 1回 就寝前 14日分

*SG配合顆粒:イソプロピルアンチピリン・アセトアミノフェン・アリルイソプロピルアセチル尿素・無水カフェイン配合剤

<効能効果>SG配合顆粒

  • ●感冒の解熱、耳痛、咽喉痛、月経痛、頭痛、歯痛、症候性神経痛、外傷痛

どうした?どうなった?

患者は比較的、理解力があった。片頭痛の発作に備え、いつ何時でもSG配合顆粒を服用できるように、ベッド横の食台に置いていた。どのような形態の乾燥剤であったのかは不明であるが、夜中に頭痛で目が覚めた際に、テーブルに置いていた乾燥剤(お菓子に入っていたもの)を間違って服用してしまった。口に入れた瞬間に、粒が違うことに気づき瞬時に吐き出した。

なぜ?

SG配合顆粒は透明の袋に白い顆粒が入っており、乾燥剤と外観、袋の手触りが似ており、誤飲したと考えられる。 就寝前に睡眠薬であるレンドルミン錠 0.25 mg、デパス錠 0.5 mg を服用しており、頭痛で目が覚めた際に、もうろう状態でSG配合顆粒と乾燥剤の区別がつきづらかったと思われる。食卓の上にSG配合顆粒と乾燥剤が整理されずに置かれており、薬が整理整頓されていなかったので、誤飲した可能性がある。

ホットした!

食卓の上にSG 配合顆粒(薬全般)を保管する際は、外観が類似した飲み間違い易そうな別物とは保管場所を変えるように指導を行うことも必要である。理解力がある患者でも、いつどこで薬を服用するのか、薬をどのように保管しているのか、併用薬剤で患者の判断力に影響を与える薬はなないかなど、服用する状況を思い浮かべて、飲み間違いが起きそうな場面を予測した上で、服薬指導を行うことが望ましい。患者の飲み間違いの可能性の場面を予測するためにも、患者の薬の保管方法などを日頃の患者インタビューの中で確認しておく必要もあると考えられる。

薬(吸湿性が高い薬剤等)の保管用として薬局から乾燥剤を提供する場合には、誤飲防止策として、散剤をイメージさせる図右のような乾燥剤ではなく、シート形状の乾燥剤を提供することが望ましい。また、患者が薬の自宅保管用として乾燥剤を使用することも想定されるが、その場合もシート形状の乾燥剤を薦めることが望ましい。

もう一言

アイフィス(https://www.dlmc.jp/iphiss/)には、視力の悪い患者が乾燥剤を服用した事例が掲載されているので参照されたい。(ヒヤリハット事例 その51:薬剤師の不十分な服薬指導のため、目の不自由な患者が乾燥剤を内服)

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2015年9月18日

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