Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例39

エレンタール配合内用剤、プラスチック容器包装の存在しか知らなかった

ヒヤリした!ハットした!

エレンタール配合内用剤の処方において、用量の単位(袋)を見落とし、間違ってアルミ袋包装ではなくプラスチックボトル包装の製剤を調剤してしまい、鑑査でも気づかなかった。

<処方1>90歳代の女性。病院の内科。処方オーダリング。

エレンタール配合内用剤 1袋 1日1回 42日分

*袋包装かボトル包装かの記載はない。

<効能効果>

●エレンタール配合内用剤(成分栄養剤、成分については添付文書参照)
本剤は、消化をほとんど必要としない成分で構成されたきわめて低残渣性・易吸収性の経腸的高カロリー栄養剤でエレメンタルダイエット又は成分栄養と呼ばれる。一般に、手術前・後の患者に対し、未消化態蛋白を含む経管栄養剤による栄養管理が困難な時用いることができるが、とくに下記の場合に使用する。

  1. (1)未消化態蛋白を含む経管栄養剤の適応困難時の術後栄養管理
  2. (2)腸内の清浄化を要する疾患の栄養管理
  3. (3)術直後の栄養管理
  4. (4)消化管異常病態下の栄養管理(縫合不全、短腸症候群、各種消化管瘻等)
  5. (5)消化管特殊疾患時の栄養管理(クローン氏病、潰瘍性大腸炎、消化不全症候群、膵疾患、蛋白漏出性腸症等)
  6. (6)高カロリー輸液の適応が困難となった時の栄養管理(広範囲熱傷等)

どうした?どうなった?

前述のように、エレンタール配合内用剤の包装形態を間違って調剤・鑑査してしまった。幸い、投薬時に気づき、正しい薬剤を患者に交付した。

なぜ?

調剤者は、エレンタール配合内用剤に2つの包装があることを把握していなかった(プラスチックボトル包装の存在しか認識していなかった)。鑑査者も、両者は包装形態のみが異なり、販売名が同一(エレンタール配合内用剤)であることの認識が不足していた。なお、処方箋にも袋包装かボトル包装かの記載がなかった。また、ボトル包装の処方頻度の方が多かったため、処方箋の包装単位の確認がおろそかになっていた。

ホットした!

エレンタール配合内用剤の包装にはアルミ袋包装(80 g/袋)とプラスチックボトル包装(80 g/本)があることを認識し、注意深く処方箋を確認する。薬剤交付時には、患者や代理人などと、いつもの(希望の)包装であるか確認する。

もう一言

エレンタール配合内用剤は1981年9月に販売開始され、当初は袋包装のみが発売されていたが、溶解調製の負担軽減と携帯性に優れた製品として、2004年11月にプラスチックボトル包装が発売された。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2017年2月13日

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