ムコスタが他の薬の効き目を弱めていると思い込んだ患者
患者は、ムコスタ錠<レバミピド>が他の薬(向精神薬)の効き目を弱めていると思い込み、心配になった。
<処方>30歳代の男性。病院の精神科。オーダリング/印字処方。
デパケンR錠 200mg | 2錠 1日1回 寝る前 14日分 |
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リボトリール錠 1mg | 3錠 1日3回 毎食後 14日分 |
ムコスタ錠 100mg | 3錠 1日3回 毎食後 14日分 |
他2剤 |
<効能効果>
●ムコスタ錠100mg・顆粒20%<レバミピド>
・胃潰瘍
・下記疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善
急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期
薬剤師は、精神科に通院し<処方>を服用していた患者から、「最近、胃がむかむかしたため、ムコスタが追加されたが、その後から、以前より気分が安定せず、イライラして、自分の感情を抑えられなくなってきた」と相談を受けた。
薬剤師は、ムコスタの医療用添付文書の副作用欄を調べて、「そのような報告はないので薬はあまり影響していないのかもしれない」と答えた。
ところが、患者は『副作用ではなく、胃粘膜を保護するというムコスタの効果により、これまで服用している向精神薬が吸収されにくくなり、効かなくなったのではないか?』と考えていた。
そこで、薬剤師は「ムコスタは胃の粘膜の血流を改善して胃粘膜を修復する薬である」と再度説明しなおし、患者はやっと納得したようであった。
ムコスタ錠が初めて処方された際の服薬指導時に、ムコスタの効能効果として「胃粘膜を保護する」と強調して説明したことから、患者は、胃にムコスタの膜がはられる(アルロイドG<アルギン酸ナトリウム>のように胃、食道に持続的に付着し攻撃因子による消化を抑制する)と勘違いしたようであった。
患者の話、考え、思いなどを良く聞いて、薬の効能効果、副作用、使用法などに対する誤解や不安のないように、的確に説明する必要がある。
★ムコスタの作用と効果
胃粘膜プロスタグランジンE2増加作用や胃粘膜保護作用により胃粘膜傷害を抑制し、胃粘液量や胃粘膜血流量の増加で血行動態の障害を改善し、炎症を抑え、胃粘膜を修復する。通常、胃潰瘍の治療、急性胃炎や慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善に用いられる。
くすりのしおりより
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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