Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例32

錠剤の外観変更を事前把握しておらず、患者へ説明なしに投薬

ヒヤリした!ハットした!

薬剤師は、リバロ錠2mg<ピタバスタチンカルシウム水和物>の錠剤の外観変更を事前に把握しておらず、一包化調剤中に気付いた。この変更に関しては薬局内で誰も気付いていなかったため、以前から処方されていた患者に対して説明なしで投薬していた。

<処方1>77歳の女性。病院の心臓血管外科。オーダー/印字出力。

リバロ錠 2mg 1錠 1日1回夕食後 28日分

他8剤、省略

以上一包化

ニトロダームTTS25mg 28枚 1日1回 1枚貼付
ワーファリン錠1mg 4錠 1日1回 朝食後 28日分

*2008 年 9 月に起こった事例である。
当時の錠剤の外観変更の詳細に関しては、「リバロ錠2mgの包装変更のご案内」(興和創薬株式会社)を参照。

<効能効果>

リバロ錠 1mg・2mg・4mg、リバロ OD錠1mg・2mg・4mg(ピタバスタチンカルシウム水和物)
高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症

どうした?どうなった?

 <処方>のリバロ錠 2 mg を一包化調剤するため、PTP シートから錠剤を取り出す作業をしていたところ、白色の錠剤が途中からピンク色に変わったことに気付いた。添付文書を確認したところ、外観が変更(色調:白色 → ごくうすい黄赤色、直径:7.2 mm → 7.1 mm、割線:無 → 有)になっていたことが分かった。

そこで、リバロ錠は全て変更後の製品で調剤し、投薬時に患者へ剤形変更の説明を行なった。

また、直近で調剤した処方せんを確認したところ、1名の患者に従来品と変更品を同時に渡した可能性があった。該当患者には速やかに連絡を取り、変更について説明を行なった。

なぜ?

製薬メーカーから外観変更に関する事前案内を受けておらず、どのスタッフも情報を把握できていなかった。

変更に関する説明用紙の添付がなく、変更品の個装箱の側面には「錠剤変更品、割線入り」と表記されていたが、見逃していた。

薄い黄色の遮光シート(製剤の色の区別がつかない)のため、PTP シートから取り出すまで錠剤の色調変更に気付かなかった。

ホットした!

製薬メーカーからの製剤・包装などの変更の案内があった場合は、薬局内のスタッフ全員が把握できる体制を取る。変更品が入荷したら、変更品である旨をわかりやすく表示し、新旧品を混合して調剤することがないよう注意を促す。変更品開封時には必ず日付を記載し、調剤時には変更に関する説明用紙を添付する。

製薬メーカーは、製剤・包装などの変更の案内を医療現場に確実に提供する。製薬メーカーからの製剤・包装などの変更の案内が遅れる場合もあるので、医薬品卸などからの製品情報に目を通し、事前に把握しておく。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2016年11月1日

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