Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例254

不要と思われる消化器官用薬の処方が6ヵ月以上も継続

ヒヤリした!ハットした!

介護施設における看護記録の内容からは処方意図が不明であるテプレノン細粒<ファモチジン>、レバミピド錠の3種類の消化器官用薬の併用が継続されていた。
当該患者は、入所後、病院では痛み止めなどと共に消化器用薬を服用していたと推察されたが、退院後における内科クリニックから上記が処方されていた。その退院時処方の継続の適否が医療関係者の誰にも評価されずに6ヵ月以上継続されていた。

<処方1>100歳代の女性。内科クリニック。

テプレノン細粒10% 1.5g1日3回毎食後14日分
ファモチジン錠10mg 2錠1日2回朝夕食後14日分
レバミピド錠100mg 2錠1日2回朝夕食後14日分

*身長:137cm、体重:37.9kg、血清クレアチニン値:1.09mg/mL

<効能効果>

●ガスターD錠10mg・20mg、同錠10mg・20mg、同散10%・2%<ファモチジン>
○胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、上部消化管出血(消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍、出血性胃炎による)、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群
○下記疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善:急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期

どうした?どうなった?

介護施設に入所している患者である。患者の処方内容とこれまでの看護・介護記録を読んだ薬剤師は、胃腸障害に関する記載がなく、胃粘膜保護を必要とする他の併用薬(アスピリンや鎮痛消炎薬など)もなく、上記処方の薬剤の処方意図と継続の理由が不明であったため、以下の点について担当医に疑義照会した。

① 当該患者のクレアチニンクリアランス(Ccr)は16.4/mL/minである(血清クレアチニン値と体表面積から算出)。ファモチジン錠は腎排泄型の薬剤で、30≧Ccrの場合、1日1回10mgに減量する必要があるので、減量を検討していただきたい。

② テプレノン細粒とレバミピド錠の作用メカニズムは異なるが、胃粘膜保護作用を持つ胃炎・胃潰瘍治療薬としては同効薬であるため、特段の理由がなければ、どちらか一種に減らしていただきたい。

その結果、レバミピド錠は中止となり、ファモチジン錠は半量に減量し、その1ヵ月後には中止となり、テプレノン細粒のみ継続となった(テプレノンも中止予定)。

医師:「忙しくて詳細に処方内容を見直しできていない。今後も積極的に処方提案してほしい。」

なぜ?

看護記録によると、患者は骨折した経験があり、入院中に痛み止めなどと共に消化器用薬を服用していたが、退院時には上記処方となっていた。退院時に、上記処方の継続の適否が医療関係者の誰にも評価されずに6ヵ月以上継続されていたと推察された。

ホットした!

当該介護施設では、入所時や退院時処方が評価されずに継続されることが多く、ポリファーマシー、無益な処方の原因にもなっている。高齢者の場合、腎機能が時間と共に悪化することは回避できないことも鑑み、入所時や退院時処方が現時点でも適正なのか(処方されている薬剤の必要性、用法・用量、剤形の適否など)を薬剤師が能動的にチェックする必要がある。

もう一言

ファモチジンの腎機能低下患者への投与法
ファモチジンは主として腎臓から未変化体で排泄されるため、腎機能低下患者では腎機能の低下とともに血中未変化体濃度が上昇し、尿中排泄が減少するので、次のような投与法を目安とする。

1回20mg、1日2回投与を基準とする場合の投与法

クレアチニンクリアランス(mL/min) 投与法
Ccr≧60 1回20mg1日2回
60>Ccr>30 1回20mg1日1回
1回10mg1日2回
30≧Ccr 1回20mg2~3日に1回
1回10mg1日1回
透析患者 1回20mg透析後1回
1回10mg1日1回

ガスターD錠10mg・20mgの添付文書より

[国試対策問題]

問題:100歳代女性。身長137cm、体重37.9kg、血清クレアチニン値1.09mg/dLである。クレアチニンクリアランス(Ccr)は16.4mL/minと算出された。
ファモチジン錠の投与法として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 1回20mgを1日2回
2 1回20mgを1日1回
3 1回10mgを1日2回
4 1回10mgを1日1回
5 用量調整は不要である

【正答】4
1 通常の成人量である。重度腎機能低下では過量。
2 減量として不十分。
3 減量として不十分。
4 添付文書の目安投与法に合致。
5 腎排泄型薬剤であるため明らかに誤り。

*本稿では、全国各地において収集したヒヤリ・ハット・ホット事例について、要因を明確化し、詳細に解析した結果を紹介します。事例の素材を提供していただいた全国の薬剤師の皆様に感謝申し上げます。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2026年2月19日

バックナンバー

希望に合った求人を紹介します

リクナビ薬剤師の転職お役立ち情報

プライバシーマーク

リクナビ薬剤師を運営する株式会社リクルートメディカルキャリアは、プライバシーマークを取得しており、お客さまの個人情報を適切に管理し、目的に沿って正しく利用します。