Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例252

イーケプラ錠、服薬遵守しているのに発作!その原因は?

ヒヤリした!ハットした!

久しぶりにてんかん発作を起こし、イーケプラ錠<レベチラセタム>が増量のために追加処方されたが、患者の服薬アドヒアランスは良好で、発作の引き金となった可能性のある薬学的な要因が分からず、適切な服薬指導が行えなかった。その後の考察において、食事量が増えて急激に体重が増えたことで血中濃度が低下した可能性も考えられたが、原因は不明である。

<処方1>30歳代の男性。大学病院の神経内科。

イーケプラ錠250mg 2錠1日2回朝夕食後14日分

*追加分の処方であり、同病院から処方されているイーケプラ錠1000mg/日を服用中である。

<効能効果>

●イーケプラ錠250mg・500mg/ドライシロップ50%
・てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)
・他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法

どうした?どうなった?

患者は小児期にてんかんと診断され、度々てんかん発作を起こしていた。2年程前(30歳ごろ)にイーケプラ錠を服用するようになってからは、てんかん発作は起こしていなかった。母親と二人暮らしで、食事も服薬も母親が厳重に管理していた。
当薬局では約10年前(22歳ごろ)から患者の処方箋を応需していたが、いつも母親だけが来局するため、薬剤師は患者本人に一度も会ったことがなかった。母親からの情報ではあったが、患者本人もてんかん発作を起こさないように医師の指導を守り「常に気を抜かないように生活している」という話や、服薬を母親が監視していること、近年はてんかん発作がないことなどから、服薬アドヒアランス良好と判断し、薬局から本人への電話モニタリングなどは行っていなかった。
定期的な受診が続く中、今回の受診理由はてんかん発作を起こしたためということで、母親から薬剤師に質問があった。

母親:「薬はきちんと服用しているのに、なぜ発作が起きたのでしょうか?」

発作直前の時期も薬の飲み忘れや飲み間違えは絶対になかったという。薬剤師は、服薬アドヒアランス良好な患者がてんかん発作を起こした理由が分からず、ほかに確認すべきこともわからなかったため、母親に今回の発作に関して思い当たることがないかを聞いた。

母親:「最近、ちょっと『気を抜いて』しまったと本人が言っていました」

「気を抜いた」とは、食事量が増えて、急激に体重が増えたということであった。薬剤師は患者が「気を抜いた」こととてんかん発作の因果関係が分からず、さらなる指導は行えなかった。
その後、イーケプラ錠の医薬品インタビューフォーム(IF)を調べたところ、体重の変化によって適正用量が変わるおそれのある薬であると考えられた([もう一言]を参照)。薬剤師は患者に電話で、今後は自宅で身長、体重を定期的に測定し、太る、痩せるなどの急な体型の変化があった場合は、主治医に報告するように指導した。なお、患者の体重がどのくらい増加したのかまでは聴取していない。幸いにも、イーケプラ錠の増量後、てんかん発作は起こしていないようである。

なぜ?

薬剤師は患者本人に会ったことがなく、患者の急激な体型変化に気づけなかった。小児であれば、成長に伴う投与量の変化などに注意を払っていたであろうが、患者は成人で、体型がそれほど大きく変化すると思わず、体重に関しての確認を怠っていた。
イーケプラ錠に関する知識が不足しており、体重の変化が薬理効果に及ぼす影響について考えたことがなく、事前に患者に説明もできなかった。
一般的にてんかん発作の原因はさまざまであり、必ずしも本事例の患者の発作が体重増加に起因しているとは断定できない。薬以外の原因、例えば医師から指示されていた日常生活上の注意点に関して、患者の言う「気を抜いた」ことがあったのかもしれないが、具体的なことは聞き取りができていない。

ホットした!

小児ばかりでなく、成人の患者においても、体型の変化により、薬理効果が変動する可能性を認識しておく。イーケプラ錠の薬物動態を理解し、今後の服薬指導に活かしていく。

もう一言

*イーケプラ錠の薬物動態と体重の関係
薬剤師が体重の変化によって適正用量が変わるおそれがあると考えるに至ったIFの記載を以下に示す。

日本人及び外国人の健康成人及びてんかん患者(クレアチニンクリアランス:49.2~256.8mL/min)から得られた血漿中レベチラセタム濃度データを用いて、母集団薬物動態解析を行った結果、見かけの全身クリアランス(CL/F)に対して、体重、性別、クレアチニンクリアランス及び併用抗てんかん薬、見かけの分布容積(V/F)に対して体重、併用抗てんかん薬及び被験者の健康状態(健康成人又はてんかん患者)が統計学的に有意な因子として推定された[文献1]。

この記載についてメーカーに確認したところ、体重70kg、クレアチニンクリアランス110mL/minのヒトを1としてシミュレーションを行った結果、体重40kgと140kgでCmaxに影響したという解析結果であったため、添付文書とIFに記載したとのことであった。
体重が増加すると、見かけの全身クリアランス、見かけの分布容積が増大し、血中濃度が低下すると考えられるが、シミュレーションは体重70kgに対して140kgという2倍の値で検証されていた。本事例の患者を含め、成人において急激に体重が2倍になるのは一般的ではないと思われ、このシミュレーション結果が臨床にそのまま当てはまることは少ないかもしれない。
ところで、てんかん診療ガイドライン2018において、レベチラセタムの参考域の血中濃度として12~46µg/mLと示されているが、血中濃度測定の有用性については限定的または未確定とされている[文献2]。本事例において、イーケプラ錠の維持投与量(1000mg/日)が治療域の血中濃度の下限値近くで処方設計されていたと仮定し、服薬アドヒアランス良好であっても、急激な体重増加によって血中濃度が低下し、発作抑制に効果を得られる治療域を逸脱した可能性があるかを検証するためには、患者の体重の聞き取りが重要であった。成人の患者であっても、服用開始時はもちろん、定期的な体重の確認を行うことが必要である。

【文献】
1)イーケプラ錠250mg・500mg/同ドライシロップ50%、医薬品インタビューフォーム、ユーシービージャパン株式会社、2024年4月改定(第22版)
2)てんかん診療ガイドライン2018.日本神経学会.第1版.医学書院.2018.p.123-125.

[国試対策問題]

問題:レベチラセタムに関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。

1 レベチラセタムは半減期が長いため、成人では原則として1日1回投与とする。
2 レベチラセタムは食事の影響を強く受けるため、必ず食後に服用しなければならない。
3 レベチラセタムは主に肝代謝を受けるため、肝機能障害患者では用量調節が必須である。
4 レベチラセタムは通常、成人では1日2回投与で開始され、腎機能に応じて用量調節を行う。
5 レベチラセタムは急な中止による影響がないため、症状が安定していれば自己判断で中止してよい。

【正答】4
1 レベチラセタムの血中半減期は約7~9時間であり、通常は1日2回投与とされている。
2 食事による吸収量への影響はほとんどなく、食前・食後を問わず服用可能である。
3 レベチラセタムは主に腎排泄型の薬剤であり、肝代謝の影響は小さい。用量調節が必要なのは腎機能障害患者である。
5 抗てんかん薬は急な中止により発作が誘発されるおそれがあるため、自己判断での中止は避ける。

*本稿では、全国各地において収集したヒヤリ・ハット・ホット事例について、要因を明確化し、詳細に解析した結果を紹介します。事例の素材を提供していただいた全国の薬剤師の皆様に感謝申し上げます。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2026年1月30日

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