
ノルバスクの規格単位が変更されていたが、一包化薬で誤服薬
一包化された残薬の薬剤鑑査時に、ノルバスクOD錠<アムロジピンベシル酸塩>の2.5mg錠が分包されているものと5mg錠が分包されているものが、保管場所である茶筒の中で混在していることに気づいた。以前に交付され自宅残薬となっていた5mg錠が入った一包化薬を誤混入させてしまったと考えられた。
<処方1>90歳代の女性。病院の内科。
| ラシックス錠40mg | 1錠1日1回朝食後 |
|---|---|
| ロサルタンカリウム錠50mg | 1錠1日1回朝食後 |
| ユリノーム錠50mg | 1錠1日1回朝食後 |
| テネリア錠20mg | 1錠1日1回朝食後 |
| シグマート錠5mg | 2錠1日2回朝夕食後 |
| プラビックス錠25mg | 2錠1日2回朝夕食後 |
| ノルバスクOD錠2.5mg | 2錠1日2回朝夕食後 |
| ファモチジンOD錠20mg | 1錠1日1回夕食後 |
| メバロチン錠10mg | 1錠1日1回夕食後 |
| ニトロールRカプセル20mg | 1錠1日1回夕食後 |
| バイアスピリン錠100mg | 1錠1日1回夕食後 |
*その他、ブロチゾラムOD錠2.5mg、ビソルボン錠4mgを併用中である。
<効能効果>
●ノルバスク錠2.5mg・5mg・10mg/OD錠2.5mg・5mg・10mg<アムロジピンベシル酸塩>
高血圧症、狭心症
薬局の近所に居住する患者である。在宅を開始することになり、在宅医から依頼があった。
在宅医:「患者の薬の管理が悪く血糖値も高いため、次回からインスリンを導入したいので、患者宅にあった一包化薬から糖尿病薬を抜いてほしい」
患者宅に訪問し、薬を回収した。一包化薬はすべて切り離されており、お茶の缶(茶筒)の中に、それぞれ朝・夕・寝る前と別に保管されていた。再一包化する前に薬剤鑑査を行っていると、ノルバスクOD錠の2.5mg錠が分包されているものと5mg錠が分包されているものが、混在していることに気づいた。
正しくノルバスクOD錠の2.5mg錠に統一し、テネリア錠を抜いて一包化し、服薬管理ケースを購入してもらい、そこにセットし直した。
図.患者が保管していた茶筒と中から出てきた一包化薬(ノルバスクの2.5mg錠と5mg錠が混合している)。一見では両剤の違いは判断できない。
患者は、処方変更後に交付された一包化薬を、それまでの残薬(処方変更前のノルバスクOD錠5mg)と混在させて保管していた。処方変更前の薬を使い切るかもしくは廃棄せずに、新しくもらった一包化を使い始め、どこかのタイミングで混ざってしまったと思われる。
在宅が始まるまでは、患者はこれらの薬を他の薬局からもらっており、ノルバスクの変更時に薬剤師からどのような説明を受けていたかは不明である。当薬局では、こういう変更がある患者の場合、「これまでの一包化から今回渡す一包化に切り替えてください。これまでの一包化の薬は次回薬局に持ってきてください、利用させて頂きます」と指導しており、患者の希望を確認し、混在しないよう線など引いて区別するとか、日付印字しているが、それが前の薬局では行われなかったものと思われる。
患者の夫が薬の管理を行っている(夫が食事のあとに缶から薬を取り出して、患者である妻に渡す)。夫は、元公務員でまじめな方であり、服薬コンプライアンスが悪いわけではないが、高齢者なりのセット間違え(今回の場合は処方変更されていたのを忘れた)があったのではないかと予測される。
患者本人はやや認知症が進んでおり、「あれ?さっき飲んだっけ?」と不安になると、今度は自分で缶から薬を取り出し、もう一回飲んでしまう癖があった(夫の目が届かないとき)。患者本人が茶筒に触れる環境にあったのも混乱する要因の一つと考えられる。
一包化されている場合、高齢者はどんな規格単位の薬が入っているかは見えないし、気にしない患者も存在すると考えられる。処方薬の変更時には、変更が良く分かる服薬指導を心がける。
一包化薬の処方変更があった場合は、以下の様な服薬指導が必要であろう。
「一包化薬が変更されましたので、特に注意点をお知らせします。自宅に残っているこれまでの薬は飲まないようにしてください。別の袋などに入れて【服用不可!】等の記載をしてください。今日からの変更分の薬を必ず服用してください。これまでの自宅残薬は次回、薬局に持参してください。可能であれば再分包をします。お薬代の節約にもなります」
一包化薬に関しては、多種多様なトラブルが起こっているが、その一事例を下記に示そう。
◇患者:「中止になったはずの薬がまた一包化に入っている!」◇
事例:70歳代の女性。患者は、A病院とB病院の2つの医療機関を受診している。いずれも一包化調剤。A病院の処方薬を本薬局で調剤対応しており、B病院は院内処方となっている。
B病院にてパリエット錠を服用中であったが、A病院から処方のタケキャブ錠へ切替えとなった。同日、B病院の処方薬を持参していただき、一包化薬よりパリエット錠を抜いて再作成し、交付した。
1ヵ月後、A病院の処方薬を投薬時に、患者より「B病院より薬をもらったが、また黄色い薬が出ていたので、ヘルパーに頼んで抜いてもらい服用している」との申し出があった。前回に再一包化を行った時点でB病院へ当薬局より問い合わせを行い、B病院処方のパリエット錠中止の件を処方医に確認済みであるため、患者が他の黄色い薬を中止になったパリエット錠と誤認識している可能性がある。
B病院へ問い合わせ、パリエット錠の処方がないないことを確認した。B病院の処方薬のうち、黄色い錠剤はコニール錠4mgのみであるため、コニール錠4mgを患者に見てもらうと、自己判断で中止していた薬がコニール錠4mgであることが確認できた。
A病院、B病院の薬で重複している薬はないことを患者へ伝え、自己判断で中止せずすべて服用することを指導した。疑問があるときは薬局へ連絡するように指導した。また、B病院の医師に本件について報告した。
[国試対策問題]
問題:外来患者に対する一包化調剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 一包化調剤は、患者の服薬アドヒアランス向上を目的として行われるが、医師の指示があれば患者の同意は不要である。
2 一包化調剤を行う場合、原則として処方されたすべての内服薬を同一包にまとめなければならない。
3 一包化調剤では、薬剤の吸湿性や安定性、配合変化の可能性を考慮し、一包化を避けるべき薬剤が存在する。
4 一包化調剤を行った場合でも、調剤報酬上は通常の内服調剤と同一であり、一包化に関する加算は認められていない。
5 保険診療における一包化調剤は入院患者に限られており、外来患者に実施する場合は自費診療となる。
【正答】3
1 一包化調剤は患者の服薬アドヒアランス向上に有用であるが、患者の理解と同意を得て実施することが原則である。
2 頓服薬や安定性に問題のある薬剤など、一包化に適さない内服薬は除外される。
4 一定の要件(医師の指示、患者の状態等)を満たす場合には、一包化加算を算定できる。
5 一包化調剤は外来患者にも保険診療として実施可能であり、高齢者や多剤併用患者で広く行われている。
*本稿では、全国各地において収集したヒヤリ・ハット・ホット事例について、要因を明確化し、詳細に解析した結果を紹介します。事例の素材を提供していただいた全国の薬剤師の皆様に感謝申し上げます。

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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