Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例246

フェブリク錠が初回から20mg/日で処方されていた

ヒヤリした!ハットした!

最近来局するようになった患者に、病院の循環器内科から初めてフェブリク錠<フェブキソスタット>が処方され、用量が20mg/日であった。患者によると、2ヵ月前に別の内科クリニックでトピロリック錠<トピロキソスタット>が処方されていたが、自己判断で服用していなかった。開始用量が20mg/日となるため疑義照会し、10mg/日に変更となった。

<処方1>70歳代の女性。病院の循環器内科。

エリキュース錠2.5mg 2錠 1日2回朝夕食後14日分
ベプリコール錠50mg 2錠 1日2回朝夕食後14日分
ネキシウムカプセル20mg 1Cp 1日1回朝食後14日分
フェブリク錠20mg 1錠 1日1回朝食後14日分

<効能効果>

●フェブリク錠10mg・20mg・40mg
痛風、高尿酸血症
がん化学療法に伴う高尿酸血症

どうした?どうなった?

患者は約1ヵ月前に初めて来局した。病院の循環器内科からエリキュース錠、ネキシウムカプセルが処方されていた。今回も病院の循環器内科からの処方箋を持参し、フェブリク錠などが処方追加されていたため、患者に確認した。

患者:「実は、尿酸値が高いと言われ、内科クリニックで処方されたことがある。尿酸値は不明です。気にならないので飲んでいません」

詳細を確認すると、約2ヵ月前に内科クリニックから尿酸降下薬(トピロリック錠)が14日分処方されたが、服薬していなかったことが判明した。
フェブリク錠の添付文書に基づき(患者には指導箋を見せながら)、フェブリク錠は10mgから開始する薬であり、用量について疑義照会させてほしい旨を患者に話し、病院の循環器内科に問い合わせた。

薬剤師:「フェブリク初回投与とのことですが20mgでよろしいでしょうか?紹介元の内科クリニックからトピロリック錠は2ヵ月前に14日分処方されたのですが、服用されていないそうです。再度確認お願いします」

結果、フェブリク錠20mgからフェブリク錠10mgへ変更となった。

なぜ?

詳細は不明だが、処方医はフェブリク錠の処方経験もあるベテランであるが、フェブリク錠の初回投与について理解していなかった可能性がある。もしくは、紹介元で処方されていたトピロリック錠を患者が継続服薬していると思い込み、開始用量は20mgでよいと判断した可能性もある。
初回来局時(約1ヵ月前)に、患者が持参したお薬手帳を確認し、記載薬の使用目的などを聴取するべきであった。
患者は病識や薬識が低く、処方された薬を服用していなかった。

ホットした!

初回用量から維持用量に増量する医薬品は少なくない。その場合、初回から維持用量となっていれば、他医療機関からの同薬の継続処方であるかどうかを確認し、少しでも疑義があれば処方医への問い合わせは必須である。

もう一言

フェブリク錠の痛風・高尿酸血症に対する成人の用法・用量は以下である。

通常、成人にはフェブキソスタットとして1日10mgより開始し、1日1回経口投与する。その後は血中尿酸値を確認しながら必要に応じて徐々に増量する。維持量は通常1日1回40mgで、患者の状態に応じて適宜増減するが、最大投与量は1日1回60mgとする。

[国試対策問題]

問題:40歳代の男性。職場の健康診断で尿酸値の異常を指摘され、A病院を受診したところ、血清尿酸値は9.0mg/dLであった。患者は薬物治療を開始することになり、以下の処方箋を持って、B薬局に来局した。B薬局の薬剤師がA病院の処方医に疑義照会する内容として適切なのはどれか。1つ選べ。

(処方箋)
フェブキソスタット錠20mg 1回1錠(1日1錠)1日1回朝食後

1 フェブキソスタット錠の規格を10mg錠に減量してください。
2 フェブキソスタット錠の規格を40mg錠に増量してください。
3 フェブキソスタット錠をアロプリノール錠に変更してください。
4 フェブキソスタット錠をベンズブロマロン錠に変更してください。
5 特に問題はないため、疑義照会する必要はない。

【正答】1
尿酸降下薬による治療初期には、血中尿酸値の急激な低下により痛風関節炎(痛風発作)が誘発されることがあるので、フェブキソスタットの投与は10mgを1日1回から開始し、投与開始から2週間以降に20mgを1日1回、投与開始から6週間以降に40mgを1日1回投与とするなど、徐々に増量する。

*本稿では、全国各地において収集したヒヤリ・ハット・ホット事例について、要因を明確化し、詳細に解析した結果を紹介します。事例の素材を提供していただいた全国の薬剤師の皆様に感謝申し上げます。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2025年10月30日

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