Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例242

3種類の抗菌点眼液の使用方法を誤って理解していた患者

ヒヤリした!ハットした!

細菌性角膜炎治療のための3種類の抗菌点眼液を処方された患者が、使用方法について誤った理解をしていた。
[誤]:点眼液がなくなるまで、1時間毎に1種類ずつ点眼する。
[正]:3種類の点眼液を各々1時間の間隔をあけて点眼する。

<処方>30歳代の女性。眼科クリニック。

(1)ガチフロ点眼液0.3% 5mL1時間おき左眼点眼
(2)ベストロン点眼用0.5% 5mL1時間おき左眼点眼
(3)トブラシン点眼液0.3% 5mL1時間おき左眼点眼

*番号は便宜的に振ったものである。

<効能効果>

●ガチフロ点眼液0.3%<ガチフロキサシン>
眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫、結膜炎、瞼板腺炎、角膜炎(角膜潰瘍を含む)、眼科周術期の無菌化療法

●ベストロン点眼用0.5%<セフメノキシム>
眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫、結膜炎、瞼板腺炎、角膜炎(角膜潰瘍を含む)、眼科周術期の無菌化療法

●トブラシン点眼液0.3%<トブラマイシン>
眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫、結膜炎、角膜炎(角膜潰瘍を含む)

それぞれの適応菌種については医療用添付文書を参照。

どうした?どうなった?

患者は初めて当薬局に来局した。患者アンケートおよび聞き取りから、網膜剥離による細菌性角膜炎のため、初めて点眼液が処方されたことが分かった。
3種類の抗菌点眼液が処方されていたため、薬剤師は点眼方法について医師から説明を受けているかどうか確認した。

薬剤師:「どのように点眼するか、医師から説明がありましたか?」

患者:「点眼液がなくなるまで、1時間毎に1種類ずつ点眼するように説明がありました。」

患者は3種類の点眼液を順番に1種類ずつ、1時間の間隔をあけて点眼すると理解している様子であった。患者の理解としては、(1)を点眼→1時間後に(2)を点眼→1時間後に(3)を点眼→1時間後に(1)を点眼…、これを点眼液がなくなるまで繰り返すというものであった。
薬剤師は、処方箋の記載内容から、3種類の点眼液を各々1時間の間隔をあけて点眼するように受け取った。薬剤師の理解としては、(1)を点眼→5分後に(2)を点眼→5分後に(3)を点眼→1時間後に(1)を点眼→5分後に(2)を点眼→5分後に(3)を点眼…、これを繰り返すというものであった。
患者が医師から説明されたという点眼方法の可能性もあると考え、処方医に疑義照会を行った。

医師:「3種類の点眼液を各々1時間の間隔をあけて点眼してください。各々の点眼液は5分以上の間隔をあけて点眼するよう指導してください。」

ここで、薬剤師の理解と医師の指示は一致していることが分かった。

なぜ?

処方箋の用法の記載内容と、患者が処方医から口頭で指示された使用方法の理解に違いが生じていた。患者は今回、点眼液を交付されたのが初めてであり、普段は点眼液を処方される機会がなかった可能性がある。医師からの口頭による使用方法の説明を誤って理解していた。
薬剤師は、医師から使用方法についての説明があったかどうか確認を行い、説明された使用方法について具体的に聴取したため、患者が理解している使用方法が誤っていることに気づくことができた。もし、説明があったかどうかの確認を行わず、一方的に服薬指導していたら、薬剤師からの説明を聞き流し、点眼方法を誤ったまま理解していた可能性がある。

ホットした!

点眼剤が新規に処方された際には、処方医から使用方法の説明を受けているか確認し、説明を受けている際には、具体的に患者の言葉で話してもらうことが重要である。
点眼方法が複雑な場合や、理解力が低いと思われる患者に対しては、口頭だけでなく、図を記載して説明したり、具体的な点眼時刻を指定するなどの工夫も必要と考えられる。
細菌性角膜炎の治療法についての知識を深め、抗菌スペクトルの広さや強さについての知識も持っておく必要がある。

もう一言

細菌性角膜炎の治療
日本眼科学会の『感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)』1)より、細菌性角膜炎の治療の概要を以下にまとめた。
細菌性角膜炎の治療は、起炎菌に有効な抗菌薬を選択して使用することが必須であるが、実際には菌を同定できないことも少なくなく、菌を同定する前からさまざまな情報(患者背景、発症誘因や角膜所見など)を総合して起炎菌を推測し、治療を開始する。
初期治療薬としては、軽症では1剤、重症ではフルオロキノロン系、セフェム系、アミノグリコシド系から2剤を組み合わせる。例えば緑膿菌などのグラム陰性桿菌を疑う場合はフルオロキノロン系+アミノグリコシド系、黄色ブドウ球菌や肺炎球菌を疑う場合はフルオロキノロン系+セフェム系などである。
点眼法としては、1回1~2滴を、重症度と薬剤のpost‒antibiotic effect(PAE)を考慮した回数で点眼する。重症例あるいは刺激による流涙が顕著な場合には、30分~1時間毎の点眼を行う。PAEとは、抗菌薬が有効濃度で一定時間以上細菌に接触した後で、薬剤が有効濃度以下になっても細菌増殖がある一定時間抑制される現象をいう。PAEが長い抗菌薬点眼においては、点眼回数が少なくても効果が持続するため、アドヒアランス向上に寄与する。実際の点眼薬の短い接触時間で得られる菌増殖抑制効果は、アミノグリコシド系が最も良好であり、次いでフルオロキノロン系であり、セフメノキシム塩酸塩、エリスロマイシン、クロラムフェニコールの短い接触時間で得られる菌増殖抑制効果は低く、頻回点眼の必要性が示唆される。

【文献】
1)日本眼科学会、感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)、日眼会誌、127(10):859-895(2023).
https://www.nichigan.or.jp/member/journal/guideline/detail.html?itemid=672&dispmid=909

[国試対策問題]

問題:点眼薬が処方された患者に対して、薬剤師が行うべき指導として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 点眼前には、石鹸などで十分に手を洗う。
2 点眼時には、容器の先を下瞼に固定して点眼する。
3 点眼後には、まばたきをして薬液を全体によくなじませる。
4 点眼後には、目を閉じて目頭を圧迫する。
5 複数の点眼液を点眼する際には、できるだけ間隔を空けずに点眼する。

【正答】1、4
2 点眼液が汚染する可能性があるため、点眼容器の先が眼瞼やまつ毛に触れないように注意する。
3 まばたきをすると、薬液が飛び散ったり、薬液が涙の流れにのってすぐに流れ出てしまうため、4のように、点眼後には、目を閉じて目頭を圧迫する。
5 続けて点眼すると、先に点眼した薬液を、次に点眼した薬液が押し流してしまうため、5分間ほどの間隔を空けて点眼することが望ましい。

*本稿では、全国各地において収集したヒヤリ・ハット・ホット事例について、要因を明確化し、詳細に解析した結果を紹介します。事例の素材を提供していただいた全国の薬剤師の皆様に感謝申し上げます。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2025年8月28日

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