Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例241

ショートステイ利用者、狭心症のテープが重複貼付された

ヒヤリした!ハットした!

ショートステイ利用中に、ケアスタッフによってニトロダームTTS25mg<ニトログリセリン>を剥がさずに、同じ効果である硝酸イソソルビドテープ40mg「EMEC」(以下、硝酸イソソルビドテープ)が同時に貼付されてしまった。ショートステイにおける持参薬の管理に薬剤師が関与しておらず、看護師もチェックできていなかった。

<メモ>80歳代の女性。入所受け入れ時の看護師による記載。

(持参薬です。よろしくお願いいたします。)

ノルバスクOD錠2.5mg 7錠(朝食後)
ニトロダームTTS 2枚

<効能効果>

●ニトロダームTTS25mg<ニトログリセリン>
狭心症

●硝酸イソソルビドテープ40mg「EMEC」<硝酸イソソルビド>
狭心症、心筋梗塞(急性期を除く)、その他の虚血性心疾患

どうした?どうなった?

患者は、ショートステイのリピーターである。これまで、ショートステイ利用時には継続して、橙色のニトロダームTTSを貼付していた。ある時、1週間のショートステイ利用に際して、ニトロダームTTS2枚を持って入所した。1週間で2枚では足りないので、家族に足りない分を持って来てもらうように看護師が入所時に依頼していた(家族が持参したのは3日後だった。)。
入所後のテープ貼り換え(1枚目のニトロダームTTS)を担当したケアスタッフは、患者がこれまでの橙色のテープではなく、白色の印字のある透明なテープを貼っているのに気づいた。テープには、【硝酸イソソルビドテープ40mg「EMEC」】という名前が書いてあり、自分が貼り替えようと手に持っているニトロダームTTSの名前と異なったため、両薬剤は違う薬であると思い、自己判断で硝酸イソソルビドテープを剥がさず、ニトロダームTTSを貼付した。
翌日の夜のテープ貼り換え(2枚目のニトロダームTTS)を担当した別のケアスタッフも、ニトダームTTSのみ貼り換え、硝酸イソソルビドテープは剥がさなかった(なぜそう判断したかの詳細は不明)。
3日目に、貼り換え(この時点では、家族が後で持ってきた硝酸イソソルビドテープ)を担当したケアスタッフが、「テープ剤が1枚しかなく、足りない」とケアスタッフリーダーに訴えた。リーダーは疑問に思い患者の所に行くと、利用者の胸にはテープが2枚貼付されていた。驚いてすぐに2枚とも剥がし、新しい硝酸イソソルビドテープを貼付した。幸い、患者に有害事象は見られていない。

なぜ?

貼付に関わったケアスタッフは、狭心症のテープ剤の薬効を知らないため、名前が異なっても同じ効果の薬があることを知らなかった。それゆえ、2枚貼られていることの危険性を認識できなかったために、看護師やリーダーに報告・相談をしなかった。薬に関して「わからない場合には、看護師に確認する」ことが徹底されておらず、薬剤師の関与もなかった。
看護師の伝達が不足していた。すなわち、家族が追加分のテープを持参した時に、看護師はニトロダームTTSではなく、硝酸イソソルビドテープが持ち込まれたことを認識しており、「いつものと違う種類のテープが来ているが、同じもの」とのメモを残し、近くにいたケアスタッフに同じことを伝え、ケア全体に伝えるように指示していた。しかし、テープを貼り替えたケアスタッフは看護師メモを読む暇がなく、伝言を頼まれたスタッフも全員に伝達することを忘れていた。
患者は今回の利用前に入院しており、入院前のニトロダームTTSが硝酸イソソルビドテープに変更になっていた。また、患者は入所時に硝酸イソソルビドテープを貼っていたが、持参した2枚はニトロダームTTSだった(残薬として残っていたために持ち込まれたと思われる)。
本施設のシステム上、新規入所者以外は看護師がボディーチェックをしないこともあり、持参したテープと異なるテープを患者が貼って入所したことは看護師には想定外で、看護師からスタッフに注意喚起できていなかった。

ホットした!

ケアスタッフリーダーから相談された薬剤師は、ユニット会議(薬剤師、施設内のケアスタッフ、ケアスタッフリーダーなど)で資料(写真入りの狭心症のテープ剤一覧などを含む)を配布し、「薬に関して、少しでもいつもと違う状況であったり、変だなと思うことがあり、分からない場合には、看護師や薬剤師に確認する。自己判断で行動しない」ことを徹底するように申し合わせた。
ショートステイでは「基本的には家族が持ち込んだ薬をそのまま服用させる」だけのため、薬剤師の関与は不要とされていたが、今回の事例から薬剤師の関与の必要性も感じられたため、今後ケアスタッフへの薬の使用に関する教育を行っていく必要がある。

もう一言

狭心症のテープ剤一覧を以下に示す。

<硝酸イソソルビドテープ>
(先発品)
フランドルテープ40mg
(後発品)
硝酸イソソルビドテープ40mg「EMEC」
硝酸イソソルビドテープ40mg「サワイ」
硝酸イソソルビドテープ40mg「テイコク」
硝酸イソソルビドテープ40mg「東光」

<ニトログリセリンテープ>
(先発品)
ニトロダームTTS25mg
バソレーターテープ27mg
ミニトロテープ27mg
(後発品)
ニトログリセリンテープ27mg「トーワ」

[国試対策問題]

問題:狭心症治療薬の外用剤の服薬指導において薬剤師から患者に説明することとして、不適切なものはどれか。2つ選べ。

1 心臓に作用する薬なので、心臓の上に貼付するように指導する。
2 貼付部位が発汗しているときは、清潔なタオルなどでよくふき取ってから貼付するように指導する。
3 貼付により皮膚症状を起こすことがあるが、大切な薬なので貼り続けるように指導する。
4 自動体外式除細動器(AED)の妨げにならないように貼付部位を考慮するように指導する。
5 血管拡張作用による頭痛やめまいなどの副作用が起こった場合には、自動車の運転などの危険を伴う機械の操作に従事しないように指導する。

【正答】1、3
1 経皮吸収型の全身作用目的の製剤であり、硝酸イソソルビドテープは胸部、上腹部、背部のいずれか、ニトログリセリンテープは胸部、腰部、上腕部のいずれかに貼付する。
3 貼付部位を変更するように指導する。また、非ステロイド系抗炎症剤軟膏またはステロイド軟膏等を使用するか、使用を中止するなど適切な処置を行う必要があるため、医師や薬剤師に報告するように指導する。

*本稿では、全国各地において収集したヒヤリ・ハット・ホット事例について、要因を明確化し、詳細に解析した結果を紹介します。事例の素材を提供していただいた全国の薬剤師の皆様に感謝申し上げます。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2025年8月28日

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