スタレボ配合錠L100を半錠で調剤できる?
今回、スタレボ配合錠L100<1錠中にレボドパ100mg、カルビドパ10mg、エンタカポン100mgを含有>が1回1錠から1.5錠に増量された。新人薬剤師は、スタレボ配合錠L100・L50の各成分の配合量を知らず、何も考えずに増加分のスタレボ配合錠L100を半割して調剤しようとした。
<処方1>70歳台の男性。病院の神経内科。
スタレボ配合錠L100 | 3錠 1日3回毎食後49日分 |
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他 |
<処方2>
スタレボ配合錠L100 | 4.5錠(増量) 1日3回毎食後49日分 |
---|---|
他 |
<効能効果>
●スタレボ配合錠L100<1錠中にレボドパ100mg、カルビドパ10mg、エンタカポン100mgを含有>
パーキンソン病[レボドパ・カルビドパ投与において症状の日内変動(wearing-off現象)が認められる場合]
患者はパーキンソン病であり、動作緩慢の悪化から、スタレボ配合錠が<処方1>から<処方2>に増量となった。
初期鑑査と調剤を新人薬剤師が担当した。<処方2>の処方箋を初期鑑査(処方内容の確認と、医療事務の入力間違いの有無をチェック)し、増量分をスタレボ配合錠L100の半割で対応しようと自己判断し、6錠を半割した段階で、ふと「割線がないし、配合錠なのに割っていいのか?」という疑念が湧き、この時点で先輩薬剤師に相談した。
先輩薬剤師は、「基本的には、配合錠は半割にできないことが多いため、一度、粉砕ハンドブックか、メーカーに確認してから割ったほうが良い。」と答えた。
そこで、新人薬剤師は添付文書を確認したところ、「スタレボ配合錠L50<1錠中にレボドパ50mg、カルビドパ5mg、エンタカポン100mgを含有>」もあることに気づいたが、その時点で薬局にはスタレボ配合錠L50の 在庫がなく、既に半割したスタレボ配合錠L100もあったことから、メーカーに電話をして、「スタレボ配合錠L100を半分に割ることは問題ないか?」、「スタレボ配合錠L100の半錠とスタレボ配合錠L50は同等であるか?」と照会した。
メーカーからは、以下の回答を得た。
(1)スタレボ配合錠L100を半割することは、割線もなし、試験をしていないので推奨はできないが、製剤自体は均等に3成分が配合されているので、あとは医療機関の判断による。
(2)スタレボ配合錠L100とL50は、どちらもエンタカポンが100mg配合されているため、スタレボ配合錠L100の半錠は、スタレボ配合錠L50と同等ではない。
そこで、疑義照会を行い、(1)スタレボ配合錠L100とL50は、どちらもエンタカポンが100mg配合されているため、処方された1回量のスタレボ配合錠L100の 1.5錠は、スタレボ配合錠L1001錠+L501錠と同等ではないこと、(2)分割の安定性のデータがないためメーカーは推奨していないが、3成分が均等に配合されているため半割も可能であることを医師に説明した。結果、このままスタレボ配合錠L100を半割し、1回1.5錠で交付してよいことを確認した(医師の判断の根拠までは、詳細に聞き取りできていない)。
今回、初期鑑査と調剤を担当した薬剤師は1年目の新人であり、一般的に配合錠の半割に特別な注意が必要であることを失念していた。また、配合錠に限らず、初めて半錠にする薬剤の場合には、必ず安定性や保存条件などを確認する必要があるが、今回は確認を怠った。さらに、新人 薬剤師に対し、調剤に特別な配慮(分割・粉砕など)が必要な場合には、必ず事前に先輩薬剤師に相談するように教育ができていなかった。
新人もアドバイスした先輩薬剤師も、本配合錠の成分および配合量に関して、正しい知識を持っていなかった。スタレボ配合錠L100/L50どちらにも、エンタカポンは100mgが含まれており、スタレボ配合錠L100の半錠がスタレボ配合錠L50と同等でないことは、メーカーに確認するまでもなく判断できることであった。
一般的に、配合錠に規格違いがある場合には、〇〇配合錠HD/LD、〇〇配合錠AP/BPなどのような名称であるが、スタレボ配合錠に関しては、スタレボ配合錠L50/L100とレボドパの含有量が数字で記載されているために、スタレボ配合錠L50は、L100の半錠と同等であると勘違いしがちである。
スタレボ配合錠は、wearing-off現象を有するパーキンソン病患者の治療において、1剤でレボドパ・カルビドパ配合剤とエンタカポン単剤(通常1回100mg)を併用した場合と同等の臨床効果を得ることを目的とした配合剤である。
医師が半錠や粉砕を指示するとき、製剤の特性や安定性を十分に考慮していない場合が少なくない。薬剤師としては、初めて半錠にする薬剤の場合には、必ず製剤の特性、安定性や保存条件などの確認を行ってから、問題がなければ調剤する必要がある。
配合剤の場合には特に、薬剤師は配合されている各成分の含有量を確実に認識しておくべきであり、不明な場合には思い込みで調剤するのではなく、必ず添付文書等を確認し、不明確であればメーカーに問い合わせる。
スタレボ配合錠の用法用量は以下である。
「成人には、レボドパ・カルビドパ・エンタカポンとして1回50mg/5mg/100mg∼200mg/20mg/200mgの間で1回1又は2錠を経口投与する。なお、症状により用量および投与回数を調節するが、1日総レボドパ量として1,500mg、総カルビドパ量として150mg、総エンタカポン量として1,600mgを超えないこと。また、投与回数は1日8回を超えないこと。
本剤の用法および用量は、エンタカポン単剤の用法および用量を参考に設定した。エンタカポン単剤の承認用法・用量では、『症状によりエンタカポンとして1回200mgを投与することができる。』とされていることから、1回あたりの投与可能な用量として本剤2錠(エンタカポンとして200mg)とした。本剤に配合されるレボドパ、カルビドパ、エンタカポンの1日総投与量は、国内のエンタカポン単剤(1日最大1,600mg)、レボドパ・カルビドパ配合剤(1日最大1,500/150mg)の1日最大用量に基づいて設定した。」
(スタレボ配合錠の医薬品インタビューフォーム)
[国試対策問題]
66歳男性。在宅患者訪問薬剤管理指導で患者宅を訪問した際、患者の家族より、最近飲み込む力が弱まり、ランソプラゾールカプセルの服用に苦労しているので、よい方法はないかと質問された。
薬剤師の対応として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1ランソプラゾールカプセルを脱カプセルして調剤することを医師に提案する。
2ランソプラゾール口腔内崩壊錠への変更を医師に提案する。
3オメプラゾール錠へ変更し、半錠に分割して調剤することを医師に提案する。
4オメプラゾール錠へ変更し、粉砕して調剤することを医師に提案する。
3ラベプラゾールNa錠へ変更し、粉砕して調剤することを医師に提案する。
【正答】1、2
オメプラゾール錠やラベプラゾールNa錠は腸溶性製剤であり、分割や粉砕は推奨されない。
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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