ゼローダ錠の服薬スケジュールに関して疑義照会
患者のゼローダ錠<カペシタビン>の服薬スケジュールが2週服薬・1週休薬から3週服薬・1週服薬へ変更となった。その後、スケジュール上では休薬になっている期間に、服薬の指示がある処方箋を受け付けた。薬剤師は、薬歴をチェックしているときに誤処方を発見し、疑義照会の後、処方変更となった。
<処方1>60歳台の女性。病院の乳腺科。9月27日。
ゼローダ錠300 | 4錠 1日2回 朝夕食後 14日分 [本日より開始] |
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<処方2>
ゼローダ錠300 | 4錠 1日2回 朝夕食後 14日分 [10月4日夕食後より開始] |
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<効能効果>ゼローダ錠300<カペシタビン>
○手術不能又は再発乳がん
○結腸・直腸がん
○胃がん
患者は、乳がん治療のためゼローダ錠を服用中であった。当薬局では、本剤が処方されている患者の薬歴には、実際の服用期間および休薬期間を記載するようにしている。
薬剤師が当該患者の薬歴を確認すると、8月23日(処方日)にゼローダ錠について記載されていた。記載内容は、8月23日夕食後~8月30日朝までの7日分の処方と、8月30日夕食後~9月6日朝まで7日分の休薬をした後、9月6日夕食後~9月20日朝まで服薬するための14日分の処方(2週間分)であった。薬局は、この時点では、患者は2週服薬・1週休薬のスケジュールで服薬中であることを確認していた。
次に患者が来局した9月20日の処方を確認すると、ゼローダ錠が9月20日夕食後~9月27日朝までの7日分処方されていた。服薬指導した薬剤師は、2週服薬・1週休薬のスケジュールならば、休薬期間にあたるため処方内容がおかしいと感じた。患者に医師から何か指示されたかと確認すると、3週間連続して服薬することになったとの回答を得た。もともと用量が少なく、副作用を疑うような症状もなかったため、3週間連続して服薬しても問題ないと薬剤師は判断し、患者に薬を交付した。
薬剤師は、9月20日(処方日)の薬歴に、「3週服薬・1週休薬に変更、今回の7日分処方は、3週間目の分」と記載した。つまり、患者はゼローダ錠を、9月6日夕食後~9月27日朝まで連続して3週間分服薬することになった。
今回(9月27日)の来局時、処方と薬歴を確認すると、すでにゼローダ錠を3週間分服薬している状態で<処方1>が処方されており、9月27日から服薬すると3週間を超えて服薬することになってしまう。そのため、薬剤師は、病院薬剤部に疑義照会したところ、ランマーク皮下注(4週間に1回投与)との関係で、8月23日処方の9月6日以降の服用方法から、3週服薬・1週休薬に変わったことを確認した。したがって、9月27日処方のゼローダ錠は、9月27日夕食後~10月4日朝まで休薬した後、10月4日夕食後~開始する分であることを確認した<処方2>。
前回、9月20日からゼローダ錠の用法が2週服薬・1週休薬から3週服薬・1週休薬に変わったが、処方箋発行元でレジメンが2週服薬・1週休薬のままになっており、3週服薬・1週休薬に変更されていなかったと思われる。
以下に実際の変更後の処方の流れと、2投・1休のままで処方された場合の流れを示す(図1)。
*2投・1休から3投・1休へ変更になった場合
<2投・1休> | |
8/16夕~8/30朝 | 2投 |
8/30夕~9/6朝 | 1休 |
<3投・1休> | |
9/6夕~9/20朝 | 2投 |
9/20夕~9/27朝 | 1投(計3投) |
9/27夕~10/4朝 | 1休 |
<3投・1休> | |
10/4夕~10/18朝 | 2投 |
*2投・1休のまま変更にならなかった場合
<2投・1休> | |
8/16夕~8/30朝 | 2投 |
8/30夕~9/6朝 | 1休 |
<2投・1休> | |
9/6夕~9/20朝 | 2投 |
9/20夕~9/27朝 | 1休 |
<2投・1休> | |
9/27夕~10/11朝 | 2投 |
10/11夕~10/18朝 | 1休 |
図1.ゼローダ錠の処方スケジュール。
2投・1休のまま続いているのであれば、処方1の通り9/27夕から服薬開始となってしまう。
抗がん薬などには○○週服薬・○○週休薬と指定されているものが少なくない。服薬期間と休薬期間が変更となった場合に、医師が混乱して、休薬期間中の服薬や服薬期間中の休薬を誤って指示してしまう処方ミスが発生する可能性が高いことを認識する。
薬歴に実際の服用期間および休薬期間を記載し、間違いを発見する。さらに、月日~月日の記載だけでなく、月カレンダーを用いて実際の月日に[服]・[休]などのマークをつけると間違いを発見しやすい。
抗がん薬の処方日数の間違いの事例を以下に示す。
ティーエスワンの投薬期間が倍になっていた
本来2週間服用・2週間休薬のところ、4週間処方となっており、疑義照会にて2週間処方に変更された。服用サイクルの誤りを回避することができた。
<処方1>60歳台の男性。病院の外科。
ティーエスワン配合カプセルT25 | 4Cap 1日2回 朝夕食後28日分 |
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ガスターD錠20mg | 2錠 1日2回 朝夕食後28日分 |
薬剤師は、病院からの「化学療法サマリー」に基づき、患者がティーエスワンを2週間服用・2週間休薬のサイクル(適応外の用法用量である)で服用していることを把握していた。
今回、処方箋と薬局で把握していた化学療法サマリーの服用サイクルが異なるため、投与日数について疑義照会を行った。その結果、ティーエスワンの投与日数に誤りがあることが判明し、14日分に訂正となった。
医師が間違った原因は、ガスターD錠20mgが4週間処方(ティーエスワンの休薬期間を含む)であることに引きずられたためであると考えられる。
ティーエスワンは通常、4週間服用・2週間休薬であるので、病院からの「化学療法サマリー」の情報がなければ、そのまま交付されていた可能性がある。
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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